似たものへし 石見国の演錬場に、とても有名なへし切長谷部が二振りいた。
午後二時、午前の部のほとんどの演錬が終わり、人影も疎らになる頃、その二振りは現れる。
その刀は他に審神者も仲間も連れず、いつも二振りだけで来る。
演錬場は見学だけでも可能なため、刀剣男士だけで来る事は珍しい事ではない。ただ彼らは、毎週、毎曜日、同じ時間に現れて、組み合わせも時間も違う試合を見ては、ひそひそ、こそこそと笑い合う。
ひそひそ、こそこそ、くすくすくす――。
何かに気付いた一振りが、うっそりと笑ってもう一振りに耳打ちする。するともう一振りも同じように笑って耳打ちする。それが、彼らがこの場にいる間、何十回と繰り返される。
彼らは双子のように同じ顔、同じ表情、仕草で振る舞う。
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