8/8 八月八日、日曜日。今日も良い天気だ。カーテンの隙間からは早朝とは思えない陽射しが入り込んでいる。
隣のマトリフはまだ熟睡している。あと十分ほどで目を覚ますだろう。急ぐ理由もないから目覚めるのを待った。今日も暑い一日になる。室温計は二十七度。管理された空調は快適な室温を保っていた。
「……もう起きてんのか」
ややあってかけられた声に、私は横を見る。まだ寝ぼけ眼のマトリフが私を見ていた。その身体を抱き寄せる。寝癖のついた銀髪に口付ければ、マトリフは大きな欠伸をした。
「飯なんかあったか?」
「フレンチトーストにしようかと」
「お、それちょうど食いたかった」
私が朝食を作っている間にマトリフはベランダの植物たちに水をやっていた。マトリフは植木鉢に話しかけている。天気の話をしたかと思えば、昨日観た映画の話へと移った。マトリフは昨夜観た映画のラストが気に入っていない。そういえばなんの映画を観ていたのだったか。
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