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    はるち

    好きなものを好きなように

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    はるち

    DONEドクターの死後、旧人類調技術でで蘇った「ドクター」を連れて逃げ出すリー先生のお話

    ある者は星を盗み、ある者は星しか知らず、またある者は大地のどこかに星があるのだと信じていた。
    あいは方舟の中 星々が美しいのは、ここからは見えない花が、どこかで一輪咲いているからだね
     ――引用:星の王子さま/サン・テグジュペリ
     
    「あんまり遠くへ行かないでくださいよ」
     返事の代わりに片手を大きく振り返して、あの人は雪原の中へと駆けていった。雪を見るのは初めてではないが、新しい土地にはしゃいでいるのだろう。好奇心旺盛なのは相変わらずだ、とリーは息を吐いた。この身体になってからというもの、寒さには滅法弱くなった。北風に身を震わせることはないけれど、停滞した血液は体の動きを鈍らせる。とてもではないが、あの人と同じようにはしゃぐ気にはなれない。
    「随分と楽しそうね」
     背後から声をかけられる。その主には気づいていた。鉄道がイェラグに入ってから、絶えず感じていた眼差しの主だ。この土地で、彼女の視線から逃れることなど出来ず、だからこそここへやってきた。彼女であれば、今の自分達を無碍にはしないだろう。しかし、自分とは違って、この人には休息が必要だった。温かな食事と柔らかな寝床が。彼女ならばきっと、自分たちにそれを許してくれるだろう。目を瞑ってくれるだろう。運命から逃げ回る旅人が、しばし足を止めることを。
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    はるち

    DONEリー先生お誕生日おめでとう
     目覚ましとして使っている音楽は、それがどんなに美しいものであれやがては嫌いになる。起こされる不快感に塗り潰されるからだ。
     しかしドクターは、アラームとして使っているその旋律を未だに嫌いになれなかった。リーが好きだと言っていたものだから。先ほどから惰眠に沈んでいる自分を起こそうと、落ち着いて、けれども根気強く流れているそのメロディの出所を探していたドクターは虚空に向かって手を動かし、数度手を振ったところで、そもそもそれは自分の手首から聞こえてくることに気が付いた。
     目を開ける。白熱灯の眩しさが意識を覚醒させる。自分を起こしたのはタイマー機能のある腕時計だった。竜頭を押し込んでその音を止めたドクターは、ゆっくりと立ち上がった。どうやら自室に戻ってから、ベッドへもぐりこむ前に床で眠ってしまったらしい。大きく伸びをすると、全身の筋肉と関節が不平不満を訴えた。床で寝ていただけではない。ここ数日の激務が原因だろう。龍門からウルサスへと向かう道中にはそれなりの波乱万丈があり、のみならずヴィクトリアで起こっているきな臭い一連の騒動の処理と情報収集には、かなりのリソースを割く必要があった。人的にも、時間的にも。昼夜の区別なく働いていたが、ウルサスへと無事に到着したことにより、徹夜新記録を樹立する前にけりが付いたことは僥倖と呼ぶべきだろう。
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    はるち

    DOODLEリー先生から佩玉を受け取ったと聞いてわやわやする炎国勢のお話です。
    フォロワーさまとの会話の産物となります。
    大安吉日は晴れているか ドクターがリーから佩玉を受け取った――という情報は瞬く間にロドスに在籍する炎国出身オペレーターたちの間を駆け巡った。
     例えば髪飾りや首飾りといった他の装飾品ならいざ知らず、佩玉は彼らにとって特別な意味を持つ。
     すなわち、求愛だ。
     それをドクターが受け入れたということは――つまり。
    「どどどどどどうしましょう?!」
     炎国オペレーターたちの溜まり場となっている休憩室――タイミングが良いとジェイが魚団子を振る舞ってくれる――に飛び込んだスノーズントは、イベリアにあるサルヴィエントの洞窟もかくやという勢いで立ち込める湿気と暗闇に短い悲鳴を上げた。
     湿度と瘴気の出所は、炎国式円卓を囲んでいるチェン、スワイヤー、ホシグマ、リンだった。テーブルに肘をついて両手の指を絡め、顎を手に預けるチェンの眼光は鋭く、今まさにあの巨大ロボに乗って敵を撃墜せよと命じかねない雰囲気があった。反射的に回れ右をしてその場から立ち去りたくなったが、スノーズントは逃げちゃダメだと震える膝に言い聞かせた。
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