布越しの君水平線がゆっくりと上下に動く。
こんなに高い目線で世界を見たのは初めてだ。
「アクタルは随分鍛えてるな」
菩提樹で懸垂をして君もやってみるといいと誘ったら私はあっという間に肩車をされていた。
アクタルはそのまま屈伸を始める。
物の見事に私を軽々と持ち上げては「兄貴は羽のように軽いなぁ」と口にするアクタルに、私は喜ぶべきか否か複雑な心境になった。
「バイクの修理工は意外と力仕事だぞ!エンストしたやつを店まで押すのを手伝ったり!タイヤを持ち上げたり!」
アクタルは私を地面へ降ろすと誇らしげに胸を張った。
「んん……アクタル。君が力持ちで親切なのはいい事なんだが、同僚からいいように扱き使われていないか?」
要らぬ心配なのは分かっているがついつい聞いてしまう。
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