possessivoネアポリスの石畳の上で明らかにストリートチルドレンらしきみずほらしい格好をした少年がワゴンを引いている。
そのワゴンの中には赤い薔薇が美しく咲き誇っていて、少年は道行く人々に薔薇は要らないかと売り歩いていた。
あの薔薇は恐らく家の軒先に咲いていたやつを盗んだものに違いない。棘の付いたままのものは中々買い手が付かず少年はとぼとぼとした足取りで喧騒の中に消えて行った。
サン・ヴァレンティーノ。悲劇の聖人の命日はいつしか恋人達が愛を確かめ合う日になり、この街の人々も浮き足立ったように待ち合わせをしたり腕を組んでリストランテへと向かったりする。
彼等とは逆方向へ進みながら男はアイツも道を間違えればあんな風に寒空の下で働く羽目になっていたのかも知れないと思いを馳せる。
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