蜜柑の憂鬱俺は隣でぐっすり眠るレモンに溜息を吐きたい気分だった。
昔からレモンは寝るのが得意だ。添い寝してやろうかと兄貴ぶる癖に、神経だけは図太いのかあっという間に爆睡だ。
レモンの場合、多分眠る事とトーマスを見る事が悲しい事や苦しい事から逃れる術なんだろう。
「俺じゃ駄目なのかよ……」
その厚ぼったい唇を指でなぞった。
俺がレモンへの感情を自覚したのはゆかり号での出来事が切っ掛けだった。情けねぇ話だが目を覚まさないレモンの姿に俺はやっと気付いたんだ。俺はレモンを愛している、と。
レモンが居なきゃ俺は生きていけねぇ。
こいつが死んだら……、任務とか仕事とかどうだっていい。
俺の命だって何の意味もねぇって。
幼い頃から一緒に育ってきて苦楽を共にしてきたのに今更だよな。実際俺だってレモンの事はずっと家族としてしか見てこなかったし、兄弟以上の特別な存在になるなんて考えてなかったからな。
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