キャスとパルが子どもを助ける話 この街には月に一度、朝市が開催される。露店は活気にあふれ、巨大魚の解体ショーやプラムのたたき売りなんて催しまである。地元の住民だけでなく朝市見たさにわざわざ観光へやってくる者もいる始末だから、それはそれは賑やかで愉快。そんな街中をきょろきょろしながら、薬師キャスティは「お祭りみたいで楽しいわね」と独り言を言う。屋台からかおる香ばしさに鼻腔がくすぐられ「うまそー!」という声も聞こえてきそうなくらいである。市に並ぶ薬草や旅の道具みたさに早くから起きて出てきたわけだが、思ったよりも人々でごった返しており心底驚いた。
キャスティは旅人である。そろそろこの街の出立を考えているので荷物をある程度まとめておかねばならない。仲間も入れて八人の大所帯で旅をしているから消耗品も多く、いくら買っても足りなくなるなどしょっちゅうだ。度々、狩人のオーシュットに手伝ってもらってその場で調達するも、街でしか手に入らない道具も多い。キャスティは買い物用のメモを片手に人の海へと繰り出した。
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