DS 年末 年末は毎年、実家に帰っている。大抵は善が「帰って来いよ」と誘ってくれるからだ。
去年は頼尚と千歌仁が付き合い始めたばかりだからと遠慮されたが、結局は祖父が珍しく帰って来るとあって実家で過ごした。
せっかく気を遣ったのにと善は唇を尖らせたけれど、帰って来るのはただの習慣になってしまっている。それに敷地内全体は門下生も含めて掃除ができても、母屋に関しては祖父母の部屋や頼尚たちの部屋と不可侵な場所が多く夏目だけに大掃除を任せるのは気が引けた。
障子の張り替えや畳を干すといった大仕事は道場のついでに門下生たちが済ませてくれていて、頼尚は実家に帰るなり着替えになりそうなものを洗濯して自室の布団を干す。それからあちこちで遭遇する門下生たちに挨拶をされながら家中の窓を開けて回って、埃を掃いた。
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