ドラゴン×ハイエース そのドラゴンはハイエースの広い荷台(せなか)で育った。
飼育放棄されたのか、人間に討伐されてしまったのか、物心ついた時には親ドラゴンの姿はそばにはなかった。代わりに、山奥に放棄された野良ハイエースがいた。
ハイエースは室内スペースが広いことが特徴の車で、既に超大型犬のような大きさの幼ドラゴンでも丸まって眠ることができ、雨も風もそこで凌いだ。クラクションを鳴らせばプウプウと鳴き、ドラゴンの鳴き声とは少し違うものの天涯孤独なドラゴンの寂しさを癒した。車内で身体を揺すれば、ハイエースもボヨンボヨンとサスペンションでドラゴンをあやした。
ハイエースはその幼ドラゴンにとって巣(いえ)であり、親代わりであり、友達だった。
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