あつめられた島一度身についた習慣はなかなか抜けない、という話である。
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Aさんには無人島に移住した友人がいた。かねてから都会を離れ、悠々自適な生活をしたいと仲間にこぼしていたそうだ。
ちょうど不動産業界ではそこそこ有名なTという社長に伝手があったAさんは、その話を友人にした。すると友人は喜んで、頼まれるままにアポを取ってやるとあれよあれよという間に移住が決定したそうだ。
「Tさんスゴくイイ人でさ、オイラ手持ちがあんまり無いって言ったんだけどまず暮らして見るだけでいいって!必要なものとか設備はあっちで用意してくれるみたいなんだ。とりあえず行ってくるぜ」
そう言い残して旅立ったきり、すっかり居着いてしまったようだ。電波の悪い島暮らしのためAさんと友人は文通をはじめた。島での暮らしの様子がいきいきと綴られた友人からの手紙は、いつしかAさんの楽しみになっていた。しかし、いつからかその内容に違和感をおぼえるようになった。文がそっくりそのまま過去の手紙と重複しているのだ。長く文通を続けていると書いた内容を忘れてしまう事もあるだろうとその時は無理やり自分を納得させた。
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