晩秋の海水浴場は自分と少し後ろを歩く次兄であるはりまの他には数組の親子連れが砂遊びに興じている様子が見える。小さな子供のはしゃぐ声と側を走る車道から聞こえるエンジン音にどこからか軽快な音楽がかすかに耳に届く。そして同じ海でも馴染んだ港とは違う、絶えず波が押し寄せる音にそわそわとして落ち着かない。
遊歩道から砂浜へと降りる際に脱いだ靴を片手に歩く。一歩進むたびにしゃりしゃりと音を立てている。湿り気を帯びた砂は細かな貝の欠片などが混ざりあい、足を踏み入れる度に素足に纏ってくすぐったい。あいにく空は薄曇りだが、この時期まだ昼過ぎであれば薄手の羽織一枚でも事足りる程度で素足でも冷える心配はしなくて良さそうだ。
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