狭山くん
TRAINING2022-07-31/空閑汐♂夏祭りは最終日!明日からは空閑汐♂デイリーは大学から40代までの空閑汐♂切り抜きダイジェストです!8月のデイリーもよろしくお願いします〜⸜(๑'ᵕ'๑)⸝文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day31 年に数度あるかどうかといった混雑に眉を寄せる汐見に、空閑は困ったように笑いながら「校舎からも見れるけど戻る?」と問いかける。
「良い、折角良い場所取れたんだから此処で見る」
「そ? まぁ、人混みに押し合いへし合いして見れずに帰るってのも本末転倒か」
「だろ?」
彼らが三年間と数ヶ月を過ごした学び舎に隣接する北部国際宇宙港。その屋上に作られた展望デッキのの柵にもたれながら、汐見は辟易とした表情を浮かべそんな彼を見つめる空閑は苦笑を隠さない。
この宇宙港で年に一度行われる夏祭り、一年の頃に一度来てその混雑っぷりにもみくちゃにされてから二年目と三年目は足を向けてはいなかった。
空閑はどちらでも良かったのだが、汐見が人混みを厭ったのだ。汐見が行かないのであれば、空閑も一人で行こうとは思えないと毎年果敢に宇宙港へと足を向けるフェルマー達を寮のロビーで送り出していた。
1115「良い、折角良い場所取れたんだから此処で見る」
「そ? まぁ、人混みに押し合いへし合いして見れずに帰るってのも本末転倒か」
「だろ?」
彼らが三年間と数ヶ月を過ごした学び舎に隣接する北部国際宇宙港。その屋上に作られた展望デッキのの柵にもたれながら、汐見は辟易とした表情を浮かべそんな彼を見つめる空閑は苦笑を隠さない。
この宇宙港で年に一度行われる夏祭り、一年の頃に一度来てその混雑っぷりにもみくちゃにされてから二年目と三年目は足を向けてはいなかった。
空閑はどちらでも良かったのだが、汐見が人混みを厭ったのだ。汐見が行かないのであれば、空閑も一人で行こうとは思えないと毎年果敢に宇宙港へと足を向けるフェルマー達を寮のロビーで送り出していた。
狭山くん
TRAINING2022-07-30/夏の空閑汐♂祭りもあと2日となりました!そろそろ日本校ともお別れの時期ですね。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day30 掲示板に貼り出された知らせをまじまじと見つめていた汐見は、隣に立つ空閑へと視線を向ける。
「どうする」
「どうせならヴィン達と合わせたいよねぇ」
空閑の答えに頷いて、再び掲示板へと視線を向けた汐見は貼り出された用紙に指を滑らせた。そこに書かれていたのは、ドイツ本校の新入生受け入れ日程と直行便のスケジュールで。
「新学期は十月からでも、早めに行って生活に慣れておきたいよな」
「あと言葉ね、俺もアマネも英語は行けるけどドイツ語は微妙だし」
「ちゃんと学内に希望者向けの語学スクールあるし、それに向けて行く感じか」
手厚いな。感心したように笑う汐見に空閑も口元に弧を描き頷いて。そんな二人に明るく声を投げたのはフェルマーだった。
915「どうする」
「どうせならヴィン達と合わせたいよねぇ」
空閑の答えに頷いて、再び掲示板へと視線を向けた汐見は貼り出された用紙に指を滑らせた。そこに書かれていたのは、ドイツ本校の新入生受け入れ日程と直行便のスケジュールで。
「新学期は十月からでも、早めに行って生活に慣れておきたいよな」
「あと言葉ね、俺もアマネも英語は行けるけどドイツ語は微妙だし」
「ちゃんと学内に希望者向けの語学スクールあるし、それに向けて行く感じか」
手厚いな。感心したように笑う汐見に空閑も口元に弧を描き頷いて。そんな二人に明るく声を投げたのはフェルマーだった。
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TRAINING2022-07-29/夏の空閑汐♂祭りもあと3日になりました!わぁん!揃えるというかお揃いというか揃えたという感じ。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day29 汐見の指先でくるりと回された白銀に声を上げたのはフェルマーだった。
「ねぇねぇ、それってさ。ヒロミとお揃い?」
くるくると回る白銀に輝くボールペンを指の中に納め、汐見は笑う。
「流石ヴィン、目敏いな」
旧式の練習機が収められた第三格納庫、その場に居るのはフェルマーと汐見だけで。日によって空閑や篠原、高師も足を踏み入れ今は飛び立つ事すら叶わない練習機の手入れをしている彼らは今日、それぞれに頼まれた仕事によって散り散りになっている。「そろそろ渡航するってのに、人遣い荒いよね」とは空閑の談だ。
フェルマーによる乱雑な文字に補足するように流麗な汐見の文字が書き足されたチェックシートをペン先でこつりと叩きながら「ヒロミの誕生日プレゼントに買ったんだけどな。俺も欲しかったから同じやつもう一本一緒に買ったんだ」
1079「ねぇねぇ、それってさ。ヒロミとお揃い?」
くるくると回る白銀に輝くボールペンを指の中に納め、汐見は笑う。
「流石ヴィン、目敏いな」
旧式の練習機が収められた第三格納庫、その場に居るのはフェルマーと汐見だけで。日によって空閑や篠原、高師も足を踏み入れ今は飛び立つ事すら叶わない練習機の手入れをしている彼らは今日、それぞれに頼まれた仕事によって散り散りになっている。「そろそろ渡航するってのに、人遣い荒いよね」とは空閑の談だ。
フェルマーによる乱雑な文字に補足するように流麗な汐見の文字が書き足されたチェックシートをペン先でこつりと叩きながら「ヒロミの誕生日プレゼントに買ったんだけどな。俺も欲しかったから同じやつもう一本一緒に買ったんだ」
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TRAINING2022-07-28/夏の空閑汐♂祭りもそろそろ終盤!雪どけサイダーは普通に美味いです。何なら炭酸苦手な狭山くんが唯一気に入ってるサイダーでもある。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day28 冷え切ったガラス瓶には水滴が流れ、アルミ製のスクリューを回せば金属が離れるパキリという音と共に炭酸が空気へと溶ける爽やかな音が小さく響いた。
「雪どけサイダー?」
寮から職員宿舎に居を移してからは、広い部屋を充てがわれた空閑と汐見が暮らす部屋に集まることが多くなっていた。リビングとして使っている部屋でダイニングテーブルを囲みながら瓶を手にしたまま不思議そうに首を傾げた汐見に、篠原が頷く。「あぁ。俺この間ちょっと帰省したろ、その土産」と重ねられた篠原の言葉にふぅん、と汐見は頷いて。
「栂池って言ったら長野だよね。浩介って長野出身だったんだ?」
「お、よく知ってんな空閑。北アルプスのお膝元、ここに負けず劣らずの田舎だよ。しかも特別豪雪地帯」
1645「雪どけサイダー?」
寮から職員宿舎に居を移してからは、広い部屋を充てがわれた空閑と汐見が暮らす部屋に集まることが多くなっていた。リビングとして使っている部屋でダイニングテーブルを囲みながら瓶を手にしたまま不思議そうに首を傾げた汐見に、篠原が頷く。「あぁ。俺この間ちょっと帰省したろ、その土産」と重ねられた篠原の言葉にふぅん、と汐見は頷いて。
「栂池って言ったら長野だよね。浩介って長野出身だったんだ?」
「お、よく知ってんな空閑。北アルプスのお膝元、ここに負けず劣らずの田舎だよ。しかも特別豪雪地帯」
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TRAINING2022-07-27/空閑汐♂夏祭りももう27日目ですって!水鉄砲でわいわいするハイティーンとか青春真っ盛りって感じですよね。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day27 赤い色水が真っ白なシャツを染める。赤色の飛沫模様を付けられた男が眉を寄せ銃口を相手へと向け――飛び出した青色の色水は飛び退いた男にかかる事なく、コンクリートを染めていった。
「くっそ!」
悔しげに声を漏らした篠原に、狙われた汐見はカラカラと楽しそうに笑う。互いの手に握られていたのは色水を入れた水鉄砲で、高校時代に使っていたジャージと体操着に身を包んだ五人の男たちは寮の中庭で水遊びを繰り広げていた。
審判は高師、空閑と篠原のペアと汐見とフェルマーのペアに別れたチーム戦。この組み分けはひとえに空閑と汐見が組めば篠原達が瞬殺されるだけ、といった予感によって決められた。
「アマネ最高!」
チームメイトとなったフェルマーの賞賛に得意げな笑みを浮かべて再び敵側へと水鉄砲の銃口を向けた汐見は、二発目の色水を篠原へと放つ。それにたたらを踏みながらもやっとの事で避けた篠原は、フェルマーへと青色のペイントを施した。
1547「くっそ!」
悔しげに声を漏らした篠原に、狙われた汐見はカラカラと楽しそうに笑う。互いの手に握られていたのは色水を入れた水鉄砲で、高校時代に使っていたジャージと体操着に身を包んだ五人の男たちは寮の中庭で水遊びを繰り広げていた。
審判は高師、空閑と篠原のペアと汐見とフェルマーのペアに別れたチーム戦。この組み分けはひとえに空閑と汐見が組めば篠原達が瞬殺されるだけ、といった予感によって決められた。
「アマネ最高!」
チームメイトとなったフェルマーの賞賛に得意げな笑みを浮かべて再び敵側へと水鉄砲の銃口を向けた汐見は、二発目の色水を篠原へと放つ。それにたたらを踏みながらもやっとの事で避けた篠原は、フェルマーへと青色のペイントを施した。
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TRAINING2022-07-26/空閑汐♂の夏26日目!T-38格好いいよね……っていう私情しか入ってない話。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day26 眼前に現れたのは、白く艶やかな塗装が施された古いジェット機だった。外見だけは美しいその機体は、空を飛ぶ事ができない。尾翼には、アメリカ航空宇宙局のロゴがしっかりと描かれていた。
「綺麗……」
ほう、と感嘆のため息と共に呟くのはフェルマーで。その言葉に吉嗣は楽しげに「だろ?」と笑う。
「この学校が開校されたのと同時に寄贈されてな。宇宙飛行士も使ってたやつだぞ」
「ヴィンを連れて来たって事は、飛ばせるようにしたいって話すか」
「話が早くて助かる」
汐見の問いに大きく頷いた吉嗣に、フェルマーは小さく笑う。
「ボク、ロケットエンジンが専門なんですけど?」
「お前なら航空機のエンジンも頭に入ってるだろ」
艶やかな機体を撫でながら呆れたように笑うフェルマーへ、吉嗣はカラカラと笑いながら言葉を返して。
1087「綺麗……」
ほう、と感嘆のため息と共に呟くのはフェルマーで。その言葉に吉嗣は楽しげに「だろ?」と笑う。
「この学校が開校されたのと同時に寄贈されてな。宇宙飛行士も使ってたやつだぞ」
「ヴィンを連れて来たって事は、飛ばせるようにしたいって話すか」
「話が早くて助かる」
汐見の問いに大きく頷いた吉嗣に、フェルマーは小さく笑う。
「ボク、ロケットエンジンが専門なんですけど?」
「お前なら航空機のエンジンも頭に入ってるだろ」
艶やかな機体を撫でながら呆れたように笑うフェルマーへ、吉嗣はカラカラと笑いながら言葉を返して。
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TRAINING2022-07-25/空閑汐♂の夏も25日目!狭山くんは小学生の頃に行った天文台で聞いた光が人によって見え方が違うって話を20年以上引きずって生きてます。エモエモのエモじゃん……って思うですよね。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day25 夜の滑走路は誘導灯が灯され、そこを目指してスペースプレーンが優雅に降り立っていく。全ての光が消えれば闇の中に沈むその場所は、煌々としたライトによって幻想的な光景が作り出されていた。
太陽の熱が落ち着いて、少し冷たい風が肌を撫でるような時刻。それでも昼間の暑さに辟易としていた汐見にとっては心地よい時間で。彼の隣に立つ空閑は薄手の長袖シャツを羽織っていたが、汐見は半袖のティーシャツのままだった。
「寒くないの?」
「これで丁度いいくらいだぞ。お前が寒がりなんだろ」
この場所で迎える夏も三回目になると言うのに、空閑は相変わらずだと汐見は笑う。よく冬を越せてたな、という感想と共に。
「アマネは暑がりだよね、昼間部屋にいる時パンイチなのはやめてほしい」
1099太陽の熱が落ち着いて、少し冷たい風が肌を撫でるような時刻。それでも昼間の暑さに辟易としていた汐見にとっては心地よい時間で。彼の隣に立つ空閑は薄手の長袖シャツを羽織っていたが、汐見は半袖のティーシャツのままだった。
「寒くないの?」
「これで丁度いいくらいだぞ。お前が寒がりなんだろ」
この場所で迎える夏も三回目になると言うのに、空閑は相変わらずだと汐見は笑う。よく冬を越せてたな、という感想と共に。
「アマネは暑がりだよね、昼間部屋にいる時パンイチなのはやめてほしい」
狭山くん
TRAINING2022-07-24/空閑汐♂夏祭りホラー回(???)汐見♂が叫ぶのって多分よっぽどの事が起きた時か怒ってるかベッドの中だけですよ……それはそれとして私はファースト・マンが割と好きです。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day24 照明を落とした部屋に設置されたスクリーンには映像が流れる。そして、部屋中に轟くような男の悲鳴が響いた。
「無駄な腹筋を使うな!」
「だって……!」
大声を放った男――空閑の頭を叩いた汐見は苛立たしげな声を上げる。そんな汐見の言葉に言い訳するように情けない声を出す空閑は汐見の腕にしがみ付いていて。
「ていうか、ヒロミってホラーダメだったんだ?」
「みたいだな」
「映画って言うからアクション系とかかと思ったのに……」
カラカラと笑うフェルマーの言葉に汐見が頷き空閑は項垂れる。汐見の腕にがっしりと巻き付けられた空閑の腕はギチリと力を増し、汐見は眉を寄せたがそのままにさせていた。
寮のシアタールームが借りれたから映画を見ようと言い出したのはフェルマーの誘いに乗ったのはいつもの顔ぶれで、シアタールームで機械を操作しながら「やっぱり夏にはジャパニーズホラーだよね!」と鼻歌混じりに口に出していたのに空閑が肩を震わせていたのは篠原も知っていた。しかしこれ程とは。
1180「無駄な腹筋を使うな!」
「だって……!」
大声を放った男――空閑の頭を叩いた汐見は苛立たしげな声を上げる。そんな汐見の言葉に言い訳するように情けない声を出す空閑は汐見の腕にしがみ付いていて。
「ていうか、ヒロミってホラーダメだったんだ?」
「みたいだな」
「映画って言うからアクション系とかかと思ったのに……」
カラカラと笑うフェルマーの言葉に汐見が頷き空閑は項垂れる。汐見の腕にがっしりと巻き付けられた空閑の腕はギチリと力を増し、汐見は眉を寄せたがそのままにさせていた。
寮のシアタールームが借りれたから映画を見ようと言い出したのはフェルマーの誘いに乗ったのはいつもの顔ぶれで、シアタールームで機械を操作しながら「やっぱり夏にはジャパニーズホラーだよね!」と鼻歌混じりに口に出していたのに空閑が肩を震わせていたのは篠原も知っていた。しかしこれ程とは。
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TRAINING2022-07-23/空閑汐♂夏祭り23日目!空港に隣接するひまわり畑は実在するんですけど、私が行きたい。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day23「お、来た!」
「圧巻だな、三時間半かけた甲斐がある」
定刻通りに離陸する旅客機のランディングが迫る。三脚で固定したカメラのシャッターを幾度も切り続ける空閑を見ながら、汐見もコンパクトカメラでパシャリと一度シャッターを切った。頭上をボーイングが飛び去っていく。
ひまわり畑の向こうに離着陸するボーイングという、他ではあまり見られない光景を見に行こうと空閑に誘われるまま朝早くからバイクを走らせて三時間半。飛行機は勿論好きだが、汐見が暮らす場所では早い時間で朝六時から――夜だって十二時近くまでジェット機だけと言わずに訓練用のレシプロ機だって、何ならスペースプレーンまで飛び交っている。
その環境で飛行機を見に行こうと誘われればすぐそこにある宇宙港に行くと誰だって思うだろう、空閑の口から出てきたのは女満別空港という言葉であった。
1043「圧巻だな、三時間半かけた甲斐がある」
定刻通りに離陸する旅客機のランディングが迫る。三脚で固定したカメラのシャッターを幾度も切り続ける空閑を見ながら、汐見もコンパクトカメラでパシャリと一度シャッターを切った。頭上をボーイングが飛び去っていく。
ひまわり畑の向こうに離着陸するボーイングという、他ではあまり見られない光景を見に行こうと空閑に誘われるまま朝早くからバイクを走らせて三時間半。飛行機は勿論好きだが、汐見が暮らす場所では早い時間で朝六時から――夜だって十二時近くまでジェット機だけと言わずに訓練用のレシプロ機だって、何ならスペースプレーンまで飛び交っている。
その環境で飛行機を見に行こうと誘われればすぐそこにある宇宙港に行くと誰だって思うだろう、空閑の口から出てきたのは女満別空港という言葉であった。
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TRAINING2022-07-22/四六時中一緒にいるからメッセージのやり取りが新鮮なのっていいよね。SETIの話書きたかったけど上手くいかなかった結果。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day22 大学部に併設された図書館にひっそりと存在する閲覧室。自習室とは違い1人掛けのソファと申し訳程度のようなテーブルが並べられたその部屋は、いつ来ても人影も疎で穴場のような場所だった。
汐見以外の誰も居ないその部屋を独り占めしながら、手元にあるタブレットをするりと撫でる。そこに表示されているのは一世紀半前、まだ人類が地球の周りを回る事しかしていなかった時代のエッセイを電子化したもので。オールドシャトル計画に参加した日本人の配偶者が記した軽快な筆致のエッセイは、とうの昔に紙の本としては絶版になっていて――古典ライブラリとして無料公開されている中から汐見が見つけ出したものだった。
自身の携帯端末にダウンロードしても良いのだが、シンプルなものを好む汐見の持つ端末は画面も小さいもので。メールのやり取り程度であれば苦ではない程度の大きさではあるが、長文を読むのであればタブレットの方が読みやすい。
1135汐見以外の誰も居ないその部屋を独り占めしながら、手元にあるタブレットをするりと撫でる。そこに表示されているのは一世紀半前、まだ人類が地球の周りを回る事しかしていなかった時代のエッセイを電子化したもので。オールドシャトル計画に参加した日本人の配偶者が記した軽快な筆致のエッセイは、とうの昔に紙の本としては絶版になっていて――古典ライブラリとして無料公開されている中から汐見が見つけ出したものだった。
自身の携帯端末にダウンロードしても良いのだが、シンプルなものを好む汐見の持つ端末は画面も小さいもので。メールのやり取り程度であれば苦ではない程度の大きさではあるが、長文を読むのであればタブレットの方が読みやすい。
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TRAINING2022-07-21/今日の空閑汐♂夏祭りはキャンプです!夏はやっぱりキャンプして欲しいよね。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day21 夏の夜は短い。未だ太陽の齎した熱が冷え切らない淡い色をした空を見つめながら、汐見は目の前で燃え盛る炎の中へと乾き切った枝を投げ入れる。
「これぞキャンプファイヤーだよね」
「まぁ、キャンプで火を焚いてるからな」
楽しげに声を上げるフェルマーに、何の感慨もなく言葉を返した汐見へ「相変わらずムードってもんを理解してないよな」と呆れた声を溢すのは篠原だ。
「ムードつったって、学校からちょっと離れたキャンプ場で野営してるって話だからなぁ、許可取れば校内でも焚き木位出来るだろ」
ナイロンとステンレスの枠組で作られた椅子に凭れながら、その横に積まれた木の枝を表情ひとつ変えずに火の中に放り込む汐見の横顔へとじとりとした視線を向けたフェルマーはため息と共に言葉を漏らす。
1573「これぞキャンプファイヤーだよね」
「まぁ、キャンプで火を焚いてるからな」
楽しげに声を上げるフェルマーに、何の感慨もなく言葉を返した汐見へ「相変わらずムードってもんを理解してないよな」と呆れた声を溢すのは篠原だ。
「ムードつったって、学校からちょっと離れたキャンプ場で野営してるって話だからなぁ、許可取れば校内でも焚き木位出来るだろ」
ナイロンとステンレスの枠組で作られた椅子に凭れながら、その横に積まれた木の枝を表情ひとつ変えずに火の中に放り込む汐見の横顔へとじとりとした視線を向けたフェルマーはため息と共に言葉を漏らす。
狭山くん
TRAINING2022-07-20/空閑汐♂夏祭りも2/3というとこですね!ちゃんと続いてるの偉いね!という事でやっぱり汐見♂には空を飛んでて欲しいのよ。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day20 美しく染め抜いた青に白い山が聳えていた。まるで、この間のかき氷みたいだ。汐見は取り留めもなくそんな事を考える。
「おぉい、汐見。何ぼんやりしてんだ、行くぞ」
普段はジャージで通している汐見も、今日は青色のフライトスーツを纏っている。それはかつて宇宙に行ける人間が限られていた頃、宇宙飛行士のシンボルのようにされていたそれで。人々が気負いなく宇宙に行けるようになった今、そのシンボルは国際航空宇宙学院のパイロットコースに所属する生徒のユニフォームとなっていた。濃紺のフライトスーツを纏う吉嗣の声に空へと向けていた視線を戻し頷く。
「わかってますよ、センセ。ちょっと感傷に浸っても良いじゃないすか」
「感傷に浸るにはまだ若い。もうちょっとシャキッとしろよな」
1138「おぉい、汐見。何ぼんやりしてんだ、行くぞ」
普段はジャージで通している汐見も、今日は青色のフライトスーツを纏っている。それはかつて宇宙に行ける人間が限られていた頃、宇宙飛行士のシンボルのようにされていたそれで。人々が気負いなく宇宙に行けるようになった今、そのシンボルは国際航空宇宙学院のパイロットコースに所属する生徒のユニフォームとなっていた。濃紺のフライトスーツを纏う吉嗣の声に空へと向けていた視線を戻し頷く。
「わかってますよ、センセ。ちょっと感傷に浸っても良いじゃないすか」
「感傷に浸るにはまだ若い。もうちょっとシャキッとしろよな」
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TRAINING2022-07-19/空閑汐♂の夏19日目!かき氷で愛の大きさを表現するな。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day19 ガラスの器に降る雪のような氷の欠片にフェルマーは歓声を上げる。小さな子供のようなはしゃぐフェルマーの様子を見ながら、汐見はかき氷機のハンドルを回していた。手回し式のかき氷機をどこからか引っ張り出してきたフェルマーは、その作業を汐見に押し付けて。汐見もそれを嫌がる事なく引き受けていた。
「アマネ、代わるよ?」
「俺がこの程度でへたると思ってんのか」
四杯分の氷を削った所で、汐見の後ろに立っていた空閑は彼に声を掛ける。空閑の言葉に心外だと眉を寄せた汐見に「まさか」と空閑は笑い声を上げて。
「じゃなくて、アマネのは俺に削らせてよ」
「あぁ、そう言う事。んじゃ遠慮なく」
空閑の言葉に一度頷いた汐見は、自身が立っていた場所を空閑へと明け渡す。そうすれば空閑は鼻歌混じりでハンドルに手を掛けるのだ。
1060「アマネ、代わるよ?」
「俺がこの程度でへたると思ってんのか」
四杯分の氷を削った所で、汐見の後ろに立っていた空閑は彼に声を掛ける。空閑の言葉に心外だと眉を寄せた汐見に「まさか」と空閑は笑い声を上げて。
「じゃなくて、アマネのは俺に削らせてよ」
「あぁ、そう言う事。んじゃ遠慮なく」
空閑の言葉に一度頷いた汐見は、自身が立っていた場所を空閑へと明け渡す。そうすれば空閑は鼻歌混じりでハンドルに手を掛けるのだ。
狭山くん
TRAINING2022-07-18/夏祭り18日目の空閑汐♂は汐見♂の独白になりました〜!まーーーた不穏なんだよなんなんだよ君らはよォ!(答:共依存)文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day18 ぼんやりと夜明け前の空を見つめていた。
背中には空閑の体温があって、窓の外は真夜中の黒く塗りつぶしたような闇よりもほんの少しだけ色付き始めている時間。汐見はこの時間が割合気に入っていて。すやすやと眠りながらもしっかりと自身に巻き付けられている腕や、背中で感じる空閑の体温や、微睡のピントが合わない視界の中で開け放たれたままのカーテンの向こうに見える空の色だとか。
そういったものをぼんやりと感じたり見つめながら、また眠りに落ちる。そんなぐずぐずとしたベッドの中での眠りを、汐見は空閑と出会うまで知らなかったのだ。
眠りに落ちる前には暑苦しいと言っていたとしても、夜明けの頃にこうしてぴったりとくっついている体温は夜の空気に冷まされた身体に心地よい。夜明けが始まる前の空は、まるで空閑の瞳の色のようで心に良く馴染む。寝ぼけている空閑が汐見の首筋に鼻先を埋めれば、その感触に背筋に甘いものが疼いた。
901背中には空閑の体温があって、窓の外は真夜中の黒く塗りつぶしたような闇よりもほんの少しだけ色付き始めている時間。汐見はこの時間が割合気に入っていて。すやすやと眠りながらもしっかりと自身に巻き付けられている腕や、背中で感じる空閑の体温や、微睡のピントが合わない視界の中で開け放たれたままのカーテンの向こうに見える空の色だとか。
そういったものをぼんやりと感じたり見つめながら、また眠りに落ちる。そんなぐずぐずとしたベッドの中での眠りを、汐見は空閑と出会うまで知らなかったのだ。
眠りに落ちる前には暑苦しいと言っていたとしても、夜明けの頃にこうしてぴったりとくっついている体温は夜の空気に冷まされた身体に心地よい。夜明けが始まる前の空は、まるで空閑の瞳の色のようで心に良く馴染む。寝ぼけている空閑が汐見の首筋に鼻先を埋めれば、その感触に背筋に甘いものが疼いた。
狭山くん
TRAINING2022-07-17/空閑汐♂夏祭り17日目〜!!今日も可愛い空閑汐♂です!ヤッターーー!!!文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day17 ずっしりと重いボールペンで、白い紙に黒い軌跡を残す。あまり上手くはない字が並ぶ紙を見て、空閑は満足気な笑みを浮かべていた。
「何やってんだ」
「改めて漢字で名前書いてみたんだけどさ、俺らの名前って海と空が入ってるんだなぁって思って」
汐見天音、空閑宙海と縦に並べて書かれた名前に書き足すように傘を付けた空閑に汐見は「何やってんだか」と呆れたように笑う。しかしその笑みは呆れの色が混じりながらも満更でもなさそうで。
「良いじゃん、相合傘。一度やってみたいな」
「デカい男二人でやったらお互いにはみ出るだろ、合羽でも着てやるつもりか?」
「それいいね!」
皮肉るような汐見の言葉に大きく頷いた空閑に「もう何でもいい」と汐見は投げやりな言葉を放つ。この反応は悪くない、と空閑は口元に弧を描いた。
992「何やってんだ」
「改めて漢字で名前書いてみたんだけどさ、俺らの名前って海と空が入ってるんだなぁって思って」
汐見天音、空閑宙海と縦に並べて書かれた名前に書き足すように傘を付けた空閑に汐見は「何やってんだか」と呆れたように笑う。しかしその笑みは呆れの色が混じりながらも満更でもなさそうで。
「良いじゃん、相合傘。一度やってみたいな」
「デカい男二人でやったらお互いにはみ出るだろ、合羽でも着てやるつもりか?」
「それいいね!」
皮肉るような汐見の言葉に大きく頷いた空閑に「もう何でもいい」と汐見は投げやりな言葉を放つ。この反応は悪くない、と空閑は口元に弧を描いた。
狭山くん
TRAINING2022-07-16/夏の空閑汐も折り返し!怪談話に弱い空閑とムードもクソもない汐見♂である。汐見♂がムードもクソもないのは通常運転ですね……文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day16 錆びついた金属で作られた扉を開けば、ひどく耳障りな音が響いた。
「蝶番まで錆び切ってるじゃん、やっぱりやめとかない?」
「センセが言うには、三十年位開けてないらしいぞ。センセも中見たことないつってたし。仕事なんだから仕方ないだろ」
ひどくぎこちない動きで開かれた扉に呆れたように声を上げ眉を寄せる空閑に、汐見は苦笑混じりで言葉を返す。学校の敷地の端に作られた旧格納庫、今まで取り壊す話が何度か出ていたらしいその場所は遂に取り壊される事が決まったらしい。取り壊し前の備品確認に召集されたのが空閑と汐見であった。
中に入り照明のスイッチを押しても反応ひとつ返ってこない薄暗がりに遂にため息を吐き出した空閑は、吉嗣に渡されていた懐中電灯で中を照らす。その場所はがらんどうで、寒々とした空間になっていた。
1289「蝶番まで錆び切ってるじゃん、やっぱりやめとかない?」
「センセが言うには、三十年位開けてないらしいぞ。センセも中見たことないつってたし。仕事なんだから仕方ないだろ」
ひどくぎこちない動きで開かれた扉に呆れたように声を上げ眉を寄せる空閑に、汐見は苦笑混じりで言葉を返す。学校の敷地の端に作られた旧格納庫、今まで取り壊す話が何度か出ていたらしいその場所は遂に取り壊される事が決まったらしい。取り壊し前の備品確認に召集されたのが空閑と汐見であった。
中に入り照明のスイッチを押しても反応ひとつ返ってこない薄暗がりに遂にため息を吐き出した空閑は、吉嗣に渡されていた懐中電灯で中を照らす。その場所はがらんどうで、寒々とした空間になっていた。
狭山くん
TRAINING2022-07-15/夏祭り15日目は汐見♂と吉嗣センセの話。吉嗣センセにも色々ありそうだしなんで私はこう不穏を入れたくなるんだ。(性癖)文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day15「――っとと、」
吉嗣の声と共にグラスの縁から溢れ出そうになる泡を見ながら、汐見は呆れたようにため息をひとつ。そんな汐見の反応を横目で見ながら「業務時間外なんだから良いだろ」と吉嗣は肩を竦めた。
「いやまぁ勝手にすれば良いと思いますけどね。テストの採点を俺に押しつけて置きながら自分は酒すか」
呆れ声で返された汐見の言葉に、吉嗣は上機嫌でカラカラと笑う。
「だってお前出来ちゃうだろ。答案は用意したし、お前そのテストで満点取ってたんだし」
「ヒロミだって満点だった筈なんすけどね」
「空閑は寮長会議に引っ張られてんじゃん。空閑が居ないとお前暇だろ」
赤い水性ペンをキュ、と鳴らしながらテストの採点を進めていく汐見は眉を寄せながら再びのため息を零していた。
1318吉嗣の声と共にグラスの縁から溢れ出そうになる泡を見ながら、汐見は呆れたようにため息をひとつ。そんな汐見の反応を横目で見ながら「業務時間外なんだから良いだろ」と吉嗣は肩を竦めた。
「いやまぁ勝手にすれば良いと思いますけどね。テストの採点を俺に押しつけて置きながら自分は酒すか」
呆れ声で返された汐見の言葉に、吉嗣は上機嫌でカラカラと笑う。
「だってお前出来ちゃうだろ。答案は用意したし、お前そのテストで満点取ってたんだし」
「ヒロミだって満点だった筈なんすけどね」
「空閑は寮長会議に引っ張られてんじゃん。空閑が居ないとお前暇だろ」
赤い水性ペンをキュ、と鳴らしながらテストの採点を進めていく汐見は眉を寄せながら再びのため息を零していた。
狭山くん
TRAINING2022-07-14/空閑汐♂夏祭りも実に14日目となりました!面倒臭い方の空閑を書くのは割と楽しかったりもする。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day14 月もなく、星々だけが煌めく中。構内の照明すらも落とされた真夜中のプロムナードを空閑と汐見はそぞろ歩く。常ならば煌々と輝いている筈の学校に隣接する宇宙港も、殆ど照明が落とされ心なしかひっそりとして。
「久々だな、この時間に外歩くの」
「そういえばそうかも」
真夜中の冷え切った空気が肌に心地いい。少し先を行く汐見の姿も闇に紛れてしまいそうで、空閑は彼に追いつくように足を早める。真夜中の散歩は高校生の身分であった頃から、時折汐見に誘われるままに行われていて。こうして歩き回るのは久々の事だった。
「まぁ、理由は分かりきってんだけどな」
少しだけ刺すような調子でそう重ねた汐見に、空閑は苦笑を漏らす。昨年までは夏の熱から逃げるように、この時期は幾度もこうやって外を歩いていた。その恒例行事のような夜の散歩が今年は今日まで行われていなかったのは、ひとえにこの時間に外を出歩ける状態になかったという事で。
1484「久々だな、この時間に外歩くの」
「そういえばそうかも」
真夜中の冷え切った空気が肌に心地いい。少し先を行く汐見の姿も闇に紛れてしまいそうで、空閑は彼に追いつくように足を早める。真夜中の散歩は高校生の身分であった頃から、時折汐見に誘われるままに行われていて。こうして歩き回るのは久々の事だった。
「まぁ、理由は分かりきってんだけどな」
少しだけ刺すような調子でそう重ねた汐見に、空閑は苦笑を漏らす。昨年までは夏の熱から逃げるように、この時期は幾度もこうやって外を歩いていた。その恒例行事のような夜の散歩が今年は今日まで行われていなかったのは、ひとえにこの時間に外を出歩ける状態になかったという事で。
狭山くん
TRAINING2022-07-13/夏の空閑汐♂13日目!切手を舐める仕草ってえっちだよねって話。第二宇宙速度って単語がただただエモ。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day13 リビングルームとして使われている部屋に置かれたダイニングテーブルで紙片に向かう汐見へと、空閑は珍しげに視線を向ける。汐見の手に握られているのは、今年の誕生日プレゼントとして彼が空閑へと贈ったものと揃いのボールペンで。
どんなに難解な課題でもそんな表情は浮かべていなかったと思える程の渋面を晒し、白い紙にボールペンを走らせる汐見の様子を観察していた空閑は結局観察だけでは飽きたらず汐見の向かい側へと腰を下ろす。空閑に見られたく無いものであれば、汐見は図書館か格納庫にある飛行教官室に行く事を知っていたのだ。
「アマネ、何やってるの?」
顔を顰める汐見へと声を投げれば、汐見の切れ長な瞳は白い紙から空閑へと向けられる。深い茶色の瞳には、わかりやすく困惑が浮かんでいた。
1510どんなに難解な課題でもそんな表情は浮かべていなかったと思える程の渋面を晒し、白い紙にボールペンを走らせる汐見の様子を観察していた空閑は結局観察だけでは飽きたらず汐見の向かい側へと腰を下ろす。空閑に見られたく無いものであれば、汐見は図書館か格納庫にある飛行教官室に行く事を知っていたのだ。
「アマネ、何やってるの?」
顔を顰める汐見へと声を投げれば、汐見の切れ長な瞳は白い紙から空閑へと向けられる。深い茶色の瞳には、わかりやすく困惑が浮かんでいた。
狭山くん
TRAINING2022-07-12/空閑汐♂の夏12日目!スイカといえば割らねば!という使命に燃えた結果。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day12 稽古終わりの道場にそれを持ち込んだのは、部活の終了時間を見計らいフェルマーを伴ってふらりと現れた高師だった。
「……お前がこういう事するの、珍しいな」
「姉から送られてきたんだ。俺一人だと持て余すからな、普通に部員で分けようと思って持ってきただけで……決してこんな事をしようと思って持ってきた訳では無いんだがな!?」
ひと汗かいたと首に手ぬぐいを掛け剣道着を纏ったままの姿で眉を寄せポツリと呟いた汐見に、高師はその理由を説明しながらも予想外の展開に転んだ空間に向けて叫んでしまう。
高師が持ち込んだそれの周りでは稽古終わりの部員達がワイワイと群がり手ぬぐいや木刀、どこから持ってきたのかビニールシートまで用意されていた。
833「……お前がこういう事するの、珍しいな」
「姉から送られてきたんだ。俺一人だと持て余すからな、普通に部員で分けようと思って持ってきただけで……決してこんな事をしようと思って持ってきた訳では無いんだがな!?」
ひと汗かいたと首に手ぬぐいを掛け剣道着を纏ったままの姿で眉を寄せポツリと呟いた汐見に、高師はその理由を説明しながらも予想外の展開に転んだ空間に向けて叫んでしまう。
高師が持ち込んだそれの周りでは稽古終わりの部員達がワイワイと群がり手ぬぐいや木刀、どこから持ってきたのかビニールシートまで用意されていた。
狭山くん
TRAINING2022-07-11/空閑汐♂夏祭り11日目!ヤッター!空閑はなんでもかんでも汐見♂を優先するけど、汐見♂はそれを知ってて上手く誘導するよって話。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day11「あ、いたいた!」
燦々と降り注ぐ陽光に麦わら帽子のような髪を輝かせながら、無邪気に声を上げたのはフェルマーで。その声に大木を背に文庫本へと視線を落としていた空閑はゆっくりと晴れた空と同じ色をしたフェルマーの瞳へと視線を向ける。
「あれ? ヴィンどうしたの?」
不思議そうに首を傾げる空閑に、フェルマーの隣に立っている高師は呆れたようなため息を一つ。
「吉嗣先生がお前達を探してたぞ。学生向けのデモでフライトするのに空閑も汐見もどこ行ったって」
高師の説明にあっと声を上げながら左手に巻いた大ぶりな腕時計へと視線を落とす。
「やば、アマネ。起きて起きて」
胡座をかいた空閑の腿を枕にしてすやすやと眠る汐見を揺らしても、鬱陶しげに唸った汐見は空閑の手をパシリと払う。
1246燦々と降り注ぐ陽光に麦わら帽子のような髪を輝かせながら、無邪気に声を上げたのはフェルマーで。その声に大木を背に文庫本へと視線を落としていた空閑はゆっくりと晴れた空と同じ色をしたフェルマーの瞳へと視線を向ける。
「あれ? ヴィンどうしたの?」
不思議そうに首を傾げる空閑に、フェルマーの隣に立っている高師は呆れたようなため息を一つ。
「吉嗣先生がお前達を探してたぞ。学生向けのデモでフライトするのに空閑も汐見もどこ行ったって」
高師の説明にあっと声を上げながら左手に巻いた大ぶりな腕時計へと視線を落とす。
「やば、アマネ。起きて起きて」
胡座をかいた空閑の腿を枕にしてすやすやと眠る汐見を揺らしても、鬱陶しげに唸った汐見は空閑の手をパシリと払う。
狭山くん
TRAINING2022-07-10/夏の空閑汐♂10日目〜〜!!クラゲって脳が無いらしいですね……文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day10「お前、クラゲっぽいよな」
ベッドサイドに置かれたスタンドに取り付けられたタブレットを指先で弄びながら、気怠げにベッドに寝転ぶ汐見は呟く。昼下がりの寝室で下履きだけを纏っただけで、シャワーを浴びさっぱりとした肌には朱い情交の痕が残されていた。
「え、俺そんなに脳味噌ない……?」
窓際に腰掛け燦々と差し込む太陽の光と初夏の爽やかな風を受けながら、空閑は汐見の言葉に首を傾げる。ベッドから動こうともしない汐見は、そんな空閑へと「何でそこ拾うんだよ」と呆れたように笑うのだ。
「そうじゃなくて。不思議な生き物というか、謎だよな」
「え、そうかな?」
「あとフワフワはしてるよな」
「やっぱり脳味噌無いって話じゃん!!」
1596ベッドサイドに置かれたスタンドに取り付けられたタブレットを指先で弄びながら、気怠げにベッドに寝転ぶ汐見は呟く。昼下がりの寝室で下履きだけを纏っただけで、シャワーを浴びさっぱりとした肌には朱い情交の痕が残されていた。
「え、俺そんなに脳味噌ない……?」
窓際に腰掛け燦々と差し込む太陽の光と初夏の爽やかな風を受けながら、空閑は汐見の言葉に首を傾げる。ベッドから動こうともしない汐見は、そんな空閑へと「何でそこ拾うんだよ」と呆れたように笑うのだ。
「そうじゃなくて。不思議な生き物というか、謎だよな」
「え、そうかな?」
「あとフワフワはしてるよな」
「やっぱり脳味噌無いって話じゃん!!」
狭山くん
TRAINING2022-07-09/空閑汐♂夏祭り9日目!思いっきり事後である。すけべが書きたくなってる狭山くん、ギリギリラインを攻めている。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day09 ぺたりと肌に張り付く髪や背中に感じる濡れたシーツの感触を不快に思っていれば、ふわりとした風が汐見の身体を撫でていく。熱を持った身体を撫でる風は、心地がいい。
「アマネ、動けそう?」
「無理」
ベッドに仰向けになったまま、指一本すら動かせる気がしない。空閑の問いに答えた声は、ひどく掠れていた。
じゃれつくように肌を滑らされた指に翻弄された結果がこれだ。最終的に空閑の熱を強請ったのは汐見だったが、たっぷり三年の時間をかけて空閑によって拓きつくされた身体は我慢が利かなくなってきた。汐見は冷静さが戻り始めた思考の中で、そんな事を考える。
体力が無いわけでは決して無いはずなのに、汐見が持久力勝負で空閑に挑めば空閑に軍配が上がってしまう。それは嫌と言う程解っている筈で――強請れば結局ベッドに沈む未来が待っているというのに、それでもこの男を求めてしまうのだ。
1022「アマネ、動けそう?」
「無理」
ベッドに仰向けになったまま、指一本すら動かせる気がしない。空閑の問いに答えた声は、ひどく掠れていた。
じゃれつくように肌を滑らされた指に翻弄された結果がこれだ。最終的に空閑の熱を強請ったのは汐見だったが、たっぷり三年の時間をかけて空閑によって拓きつくされた身体は我慢が利かなくなってきた。汐見は冷静さが戻り始めた思考の中で、そんな事を考える。
体力が無いわけでは決して無いはずなのに、汐見が持久力勝負で空閑に挑めば空閑に軍配が上がってしまう。それは嫌と言う程解っている筈で――強請れば結局ベッドに沈む未来が待っているというのに、それでもこの男を求めてしまうのだ。
狭山くん
TRAINING2022-07-08/空閑汐♂夏祭りも8日目。今日はいかがわしめの話ですが、表に出せるいかがわしい話のギリギリラインを攻めはじめているとこある。明日もいかがわしめです(予言)文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day08 鼻先を擽る汐見の頭髪から、ふわりとシャンプーの香りが立ち上る。結局ベッドが広くなってもこうやって汐見を抱きすくめて寝ようとする空閑に、汐見は諦めたように――しかし、一応は言っておきたいとでもいうような様子で「暑苦しい」と零す。同じ日本に育ったとはいえ、湿度も気温も高い空閑の生まれ育った地域より湿度も気温も低いこの土地で生まれ育った汐見からしてみれば夏の暑さの盛りなのだろう。
そういえば、気候区分も違うんだったもんな。空閑はそんな事を思い出しながら、触れ合う肌がじっとりと汗ばみ始めている事を感じていた。
「ヒロミ、夏くらいはちょっと離れても良いと思うぞ俺は……」
「嫌だって言ったら?」
「……好きにしろ」
953そういえば、気候区分も違うんだったもんな。空閑はそんな事を思い出しながら、触れ合う肌がじっとりと汗ばみ始めている事を感じていた。
「ヒロミ、夏くらいはちょっと離れても良いと思うぞ俺は……」
「嫌だって言ったら?」
「……好きにしろ」
狭山くん
TRAINING2022-07-07/星空を見る空閑汐♂夏祭り7日目!私は見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込むよりも、見えない星と星に繋がる線を結ぶ為に星座早見盤と夜空を見つめるのが性癖です。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day07 北の大地の海沿いに位置するこの町は、古くから続く漁業と林業の他は宇宙港と国際航空宇宙学院日本校で成り立っている。宇宙港にしても、そこから更に各地の空港へと飛行機が飛んでいる事もあり、この町に来ることを目当てにこの場所に降り立つ人間は基本的に学校に用事がある人物だ。
つまり、一般的には田舎と呼ばれるような場所と言われても仕方がない。買い物や娯楽と言えば学内のコンビニエンスストアか宇宙港に作られたショッピングモールになり、アウトドア志向の学生は校内で定期的に行われる地元の自動車学校の出張講習で免許を取り寮で貸し出しているバイクや自動車でドライブを楽しむ。しかしそんな田舎でも、利点というのはある。人工的な光が少ないこの場所では、満点の星空を見ることが出来るのだ。
1654つまり、一般的には田舎と呼ばれるような場所と言われても仕方がない。買い物や娯楽と言えば学内のコンビニエンスストアか宇宙港に作られたショッピングモールになり、アウトドア志向の学生は校内で定期的に行われる地元の自動車学校の出張講習で免許を取り寮で貸し出しているバイクや自動車でドライブを楽しむ。しかしそんな田舎でも、利点というのはある。人工的な光が少ないこの場所では、満点の星空を見ることが出来るのだ。
狭山くん
TRAINING2022-07-06/空閑汐♂夏祭り6日目にして空閑の誕生日が唐突に決まりました。ハッピーバースデー空閑!今日この日がお前の誕生日だ!文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day06 その箱の中に収められてたのは、美しい銀色のボールペンだった。部屋の照明を反射して艶やかに輝く白銀色のクロームメッキに刻まれた己の名前を見つめていた空閑は、その箱を放って渡した汐見へと視線を向ける。
「ねぇ、これってさ」
「フィッシャーのアストロノート、俺も欲しかったしな」
恐る恐る問いかけた空閑の言葉に、汐見はなんて事なくその商品名を口にする。学生の身分では思い切った買い物の部類に入るだろうその高級ボールペンは、百年以上昔に月に初めて立った人類達も使っていたそれで。
地球の重力を利用してインクを出すボールペンを無重力空間でも使えるようにと開発されたスペースペンとも呼ばれるそのペンは、その名の通り宇宙空間は勿論、暑さ寒さにも強く――本来ボールペンとしてはそんな使い方はしないだろうという上向きでも水の中であっても文字を書く事ができるという。
1427「ねぇ、これってさ」
「フィッシャーのアストロノート、俺も欲しかったしな」
恐る恐る問いかけた空閑の言葉に、汐見はなんて事なくその商品名を口にする。学生の身分では思い切った買い物の部類に入るだろうその高級ボールペンは、百年以上昔に月に初めて立った人類達も使っていたそれで。
地球の重力を利用してインクを出すボールペンを無重力空間でも使えるようにと開発されたスペースペンとも呼ばれるそのペンは、その名の通り宇宙空間は勿論、暑さ寒さにも強く――本来ボールペンとしてはそんな使い方はしないだろうという上向きでも水の中であっても文字を書く事ができるという。
狭山くん
TRAINING2022-07-05/空閑汐♂夏祭り5日目〜!私もまさか線香花火ってお題から線香花火作り出すなんて思わなかったし、ハイブリッドロケットをぶち込めるとは思わなかった。何年か前に行った講演で聞いてからずっとどこかで使いたかったネタ。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day05 摘んだ指先に垂れる細い紙縒の先に火を灯せば、ジリジリと小さな音を立ててぽってりとした火の玉が橙色に輝く。しかし、その火球は美しい松葉型をした火花を散らす事なく地面へと落ちていった。
「くっそ、撚り方が甘かったか」
「あ、俺の上手くいってる!」
悔しそうな汐見の声を追うように、楽しげな空閑の声が飛ぶ。
「ボクのもいい感じじゃない? せんこ花火ってこのパチパチがメインなんでしょ?」
パチパチと火花を散らす光を嬉しそうに見つめながらフェルマーも声を上げ、高師は火花を散らす前に落ちた火球を見遣り鼻を鳴らした。それぞれの一喜一憂を見守りつつも、自身の手にあった火花を少しだけ散らし落ちた線香花火の紙縒を水を入れたバケツに落として篠原は笑う。
1755「くっそ、撚り方が甘かったか」
「あ、俺の上手くいってる!」
悔しそうな汐見の声を追うように、楽しげな空閑の声が飛ぶ。
「ボクのもいい感じじゃない? せんこ花火ってこのパチパチがメインなんでしょ?」
パチパチと火花を散らす光を嬉しそうに見つめながらフェルマーも声を上げ、高師は火花を散らす前に落ちた火球を見遣り鼻を鳴らした。それぞれの一喜一憂を見守りつつも、自身の手にあった火花を少しだけ散らし落ちた線香花火の紙縒を水を入れたバケツに落として篠原は笑う。
狭山くん
TRAINING2022-07-06/夏の空閑汐♂祭も4日目になりました!夏の剣道部は死ぬ程暑いんですよね……大体防具のせい。剣部時代男子勢が稽古終わりに上脱ぎ捨てて非常扉の外で汗で濡れた道着を絞ってたのを思い出しました。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day04「あっづい!」
稽古が終わるや否や吠えるように叫んだ汐見は、開け放たれたままの非常扉から外へと駆け出していく。日の長いこの時期は、放課後の稽古が終わっても太陽の名残が空を淡く染めていた。防具をその場に置いたままで外に駆け出した汐見を追い、非常扉の前で顔を引き攣らせていたのは引退した筈の皆川で。
「汐見先輩何やってるんですか! ソレ、夏休みの昼間にやるやつですよ!?」
非常扉の前に置かれた共用サンダルを突っ掛け、水場へと一直線に走っていった汐見はそこに取り付けられたホースで頭から水を被っていた。小さく括れる程に伸びた髪も、彼が纏う剣道着すら水に浸されている様子に、思わず叫んでいた皆川の隣で空閑は笑う。
1940稽古が終わるや否や吠えるように叫んだ汐見は、開け放たれたままの非常扉から外へと駆け出していく。日の長いこの時期は、放課後の稽古が終わっても太陽の名残が空を淡く染めていた。防具をその場に置いたままで外に駆け出した汐見を追い、非常扉の前で顔を引き攣らせていたのは引退した筈の皆川で。
「汐見先輩何やってるんですか! ソレ、夏休みの昼間にやるやつですよ!?」
非常扉の前に置かれた共用サンダルを突っ掛け、水場へと一直線に走っていった汐見はそこに取り付けられたホースで頭から水を被っていた。小さく括れる程に伸びた髪も、彼が纏う剣道着すら水に浸されている様子に、思わず叫んでいた皆川の隣で空閑は笑う。
狭山くん
TRAINING2022-07-03/夏の空閑汐♂3日目!ダブルベッドでもぴったりくっついて寝る空閑汐♂は可愛いなぁ。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day03 じっとりと熱が残る肌を触れ合わせながら、汐見はその肩口に鼻先を埋める空閑の腕に抱えられていた。結局、ベッドが広くなった所でこうやって肌を触れ合わせながら眠りに就く夜は変わることはなく――辛うじて下履きだけは身に付けた状態で、汐見は空閑の抱き枕となる事に甘んじていた。
身体に燻る快感の残滓が、火照りの引かない肌の奥で渦巻くのすら心地がいい。空閑の吐息が首筋を掠める感触に、ぴくりと身体が震える。
「アマネ」
心地のいい微睡の中、空閑は汐見の名を唇から零す。小さく鼻にかかった息を漏らす事で返事と変えた汐見の反応に、彼は言葉を繋いでいく。
「なんで、俺のことここまで許してくれるの?」
ぐりぐりと鼻先を肩口に埋め、首筋に吸い付く空閑の問いに汐見はどうしたものかと思案する。この男は、時折こうやって何かを確かめるように汐見へと問うのだ。その声色は不安の色が少しだけ混じっていて、何がそんなに不安なのだろうと空閑に背を向けたままで汐見は眉を寄せる。
1213身体に燻る快感の残滓が、火照りの引かない肌の奥で渦巻くのすら心地がいい。空閑の吐息が首筋を掠める感触に、ぴくりと身体が震える。
「アマネ」
心地のいい微睡の中、空閑は汐見の名を唇から零す。小さく鼻にかかった息を漏らす事で返事と変えた汐見の反応に、彼は言葉を繋いでいく。
「なんで、俺のことここまで許してくれるの?」
ぐりぐりと鼻先を肩口に埋め、首筋に吸い付く空閑の問いに汐見はどうしたものかと思案する。この男は、時折こうやって何かを確かめるように汐見へと問うのだ。その声色は不安の色が少しだけ混じっていて、何がそんなに不安なのだろうと空閑に背を向けたままで汐見は眉を寄せる。
狭山くん
TRAINING2022-07-02/夏の空閑汐♂祭2日目!汐見♂と吉嗣先生の組み合わせ、あまりにも気安い関係過ぎて超楽しい。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day02 金魚鉢を模した透明なアクリルの中、赤く透き通った尾鰭を揺らめかせているのは金魚だった。誰も使っていないデスクの上に置かれたアクリルの下に置かれた機械はモバイル端末と繋がれ、草臥れたティーシャツを纏う青年は唸りながらもキーボードを叩く。カチャカチャとプラスチックが擦れあう音を響かせる自身の教え子でもあった青年――汐見の姿を横目で見つつ、吉嗣は訝しげな表情を浮かべながら紙巻きタバコを咥えていた。
「汐見お前、休みだってのにこんな所で何やってんだよ」
「センセにも同じ言葉が返ってくるってわかってます?」
春先に比べれば少し伸びた髪を後ろで括り端末の画面を睨んでいた汐見は、吉嗣が指先で弄んでいたオイルライターから涼しげな金属音が響いたのにジロリと視線を向けたかと思えばすぐに端末へと向き直る。
1669「汐見お前、休みだってのにこんな所で何やってんだよ」
「センセにも同じ言葉が返ってくるってわかってます?」
春先に比べれば少し伸びた髪を後ろで括り端末の画面を睨んでいた汐見は、吉嗣が指先で弄んでいたオイルライターから涼しげな金属音が響いたのにジロリと視線を向けたかと思えばすぐに端末へと向き直る。
狭山くん
TRAINING2022-07-01/文披31題夏の空閑汐♂祭始まるよ!!!!!そう言えば学祭の話って書いてなかったな〜って思ったので初夏は学祭の季節だろ!?と空閑汐♂には踊って頂きました。学祭で踊るタイプの男性アイドルユニット、うっかり某SとAを思い浮かべてしまった。地元じゃ負け知らずだぜ、アミーゴ。文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day01 太陽は山の奥へと隠れ、空は紺青と朱による美しいグラデーションを見せていた。校舎の屋上から遠くに揺れる海原を見つめていた汐見は、屋上に巡らされた柵に凭れて大きなため息を一つ吐き出す。
「おつかれ」
「お前もな」
からからと笑いながら疲れを滲ませた息を吐き出す汐見へと労いの言葉を掛けた空閑に、汐見は小さく笑い言葉を返す。卒業証書を受け取ってから数ヶ月、季節は夏へと差し掛かる頃で。互いに高校指定のジャージを纏う彼らは、次の進学先への渡航までの間をこの場所で過ごす事を決めていた。
実家に帰るよりも、渡航までの約半年をこの場所で知識を深めた方が有意義だという結論に達したのは何も彼らだけではない。彼らよりも前に卒業していった先達であったり、同学年で本校への進学を決めている者の一部も同じような選択をしており――学校もまた、それを受け入れる体制が整えられていた。
1208「おつかれ」
「お前もな」
からからと笑いながら疲れを滲ませた息を吐き出す汐見へと労いの言葉を掛けた空閑に、汐見は小さく笑い言葉を返す。卒業証書を受け取ってから数ヶ月、季節は夏へと差し掛かる頃で。互いに高校指定のジャージを纏う彼らは、次の進学先への渡航までの間をこの場所で過ごす事を決めていた。
実家に帰るよりも、渡航までの約半年をこの場所で知識を深めた方が有意義だという結論に達したのは何も彼らだけではない。彼らよりも前に卒業していった先達であったり、同学年で本校への進学を決めている者の一部も同じような選択をしており――学校もまた、それを受け入れる体制が整えられていた。