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    識眼さんの練習〜

    軍門、鳥瞰提言つまりは旧前か――クッフフ。キミのその冷笑の観念に、ワタシが答えてあげよう。深化し、輪郭を撫でやってあげよう。キミは、冷笑という割には、案外理性的だけれども……アア。そんな観念も悪くない。脳髄もまた、発火しそうさ。

    ……旧前…否、否。彼のニュアンスに。分かりやすく言うなら――嚮導者の――比較的にかしこい視点に合わせ。
    翡翠色でないけれども…ワタシの〝眼〟を調律してあげるとするのであれば、望郷なのかもね?
    とても、暖かい。まるで、楽園の乳と蜜、その河のごとき無際限を以てして、グリッドとディテールが、煌めく。嚮導者もいい主題を選ぶものだね……それは己が最も忌み嫌う理想の信奉だからかな。
    やがてその望郷は生ぬるくなり、停滞と敗北という頽廃――デカダン極まる本質……云わば、核を晒し出すのさ。風化した理想、砕けた鏡。それらを越えることすら自傷行為になるように塗り潰しながら、彼の翼を意地悪く描く…

    さて……閑話休題、オヤスミをいただこうか。
    自傷とは、それだけで苛烈らしいね。苛烈で、過誤極まる実態と観念。万華鏡に映るがごとき、複雑そうに見えながらも単純な醜形……如何にも、己は冷静だ、と思い込むヒトの、人間らしさ。
    故に眼を引く。センセーショナルというのかな。……弾いて、惹いて――暗澹たる安堵の回答を、大半においては示すモノさ。無論のこと、彼は……今、ここで、気付いていない。
    ――何に、か。……悩むコトなんざ、ひとつたりとも無いだろう? クッフフ――

    翼は棄却しきれていない、ということさ。けれどもそれは飛翔できぬように骨格を手折られ、描かれたモノでしかない。さあ、ここで今一度、彼に目線を合わせてあげよう。
    剥製になってしまった――否、額縁に囲われた翼を知っている?
    ねえ、キミ。こんな時、恋慕までもが喜劇だね?

    ……アア、まるで哀れな子供のよう。その薬指を切り落としてあげれば、もう――ほんとうに。何も無いからかな。
    口角が上がるね――ゾクゾクして、恍惚が脳髄に沁みて、蕩けて……蕩尽のあまり、膚までが粟立ってしまいそうだね。
    やはり彼のその瞳は烏のそれでしかないというのに、必死な逃避と不条理に焼き尽くされた脳溝は、あまねく救いを求めて飢餓を訴えている。鳥瞰? フフ、違う。全く、全く違うとも。表層は同じでも、その内側のクオリアは全然違うのさ……さあ、ここから直線を一本欠けさせ――烏瞰、というべきだろう。

    冗談だよ、愛らしい仔猫が、爪を立てるような冗句さ。
    無論、そんなことはしない。ワタシは、これでも…害意に興味などないからね?
    ただ、その――〝取り上げた〟線が、さしもの彼とて。その薬指であることには、気付かないのだろうね。やはり烏の眼もまた、鳥の眼だ。

    さて――もう一度、嚮導者へと視線を戻そう。優雅な幻想、その軍門の側へ立ってあげよう。そうして降るのは天才なのかな? ……ほんとうに?
    その、烏の瞳は遠方を眺め遣れど。己の身近の破滅にはもう気付けない。己が、もう二度と愛されないことには気付いている故に。そうして愛らしく足掻く様を……嚮導者はただ眺め遣るだけさ。仔細に触れずともわかる、甘やかで宛然とした輪郭だけで理解出来るとも。このような閉塞に陥った諸々が――何を求めているかなど、大半においては同じなのだからね。
    ……故に、望郷を見せてあげるものだよ。

    鏡の先にはあなたの求める温かさがあります。

    そう言ってあげるんだ。

    ですから、自傷も何も、厭わなくていいんですよ。僕がその場所に連れて行ってあげます。

    ……あーあ。飛翔という観念が、辞書から消えたところだね。
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