Shine of RainWood「すみません、また手伝っていただいて」
「これくらいなんでもないさ」
ウェドはカウンター横に大量のモコ草が入った木箱を置くと、目の前に差し出されたマグカップを受け取り手近な椅子に腰掛けた。
森の譜面屋・翠雨堂。淹れたてのコーヒーの香り、オーケストリオンの奏でる穏やかな旋律が心地よい。
ウェドが度々訪れるこの場所は、丸眼鏡をかけたミコッテ族の女店主・レナードが古びた譜面の復元を請け負っている店だ。珍しい譜面や思い出の譜面を復元することはもちろん、復元済の譜面の販売や軽食の提供もしているとあって、開店日には冒険者に限らず様々な客がやってくる。
…が、開店時刻を過ぎても一向に人の来る気配がない。
「今日は珍しく人が来ないな」
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