やっと長い梅雨が明けたのに、今度は暑すぎるからって理由で当面の野球禁止令を出された十四松は、ここ数日ずっと不機嫌そうにしている。
それでも律儀に言うことを聞く裏には、禁止を言い渡される数日前に増水した川で危うく流され掛けたからだ。
だけどその我慢もそろそろ限界だろう。
日がな一日バランスボールと戯れ、時々おれの元へとやってくる猫たちに構われて、たまにトド松と野球盤や将棋(と言って良いのか怪しいが)をするのが関の山の十四松は、このところやたらと甘えたで我儘になった。
「にーさん、お腹減った」
「へーへー」
十四松に言われなくとも、おれ自身空腹を覚え始めていた矢先だ。投げやりに返事をしつつ、緩慢に席を立った。
「…素麺?うどん?」
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