夜なべのお供に「プライド」
囁くような声量でも届いたから、集中の途切れた頃合いだったのかもしれない。顔を上げると、ステイルが出てきたドアを後ろ手に閉めるところだった。
「ステイル……!ごめんなさい、起こしちゃったかしら」
「いえ。偶然目が覚めただけですので、お気になさらず」
普段よりごく控えめな音でドアが閉じられる。数時間前は夕食が並べられていたリビングのテーブルの上に、今はノートと参考書が広がっていた。自室から持ってきた小さなデスクライトだけが手元を照らしている。
「勉強ですか?」
「ええ。明日小テストがあるのだけど、なんだか集中できなくて。……うるさかった?」
「いいえ全く」
ノートに解答を書き写す手を止める。スマホを開けばいつの間にか日付の変わる時刻だった。睡眠の邪魔になっていたなら自室に戻ろうかとも思ったけど、音で起こしちゃったわけじゃなくて良かった。
2013