あの夏が飽和する 村塾替え歌あの夏が飽和する(高杉目線)(村塾)
銀)「昨日 松陽が捕まったんだ」
高)君はそう言っていた
焼け落ち野原になった塾の前で泣いていた
夏が始まったばかりというのに
君はひどく震えていた
そんな話で始まる あの夏の日の記憶だ
銀)「捕らえたのはきっと幕府の
笠を被った妙な集団
火を放たれて 縄で縛られて
何もできやしなかったんだ
もうここには居られないと思うし
俺は松陽を探しにいくよ」
高)そんな君に俺は言った
「それじゃ俺も連れてって」
高)教本を持って 刀を持って
ポートピアもカバンに詰めて
いらないものは全部壊していこう
あの写真も あの日記も
今となっちゃもう 燃え屑さ
人殺しとダメ人間のろくでなしの旅だ
高)そして俺らは 駆け出した
この狭い狭いこの世界へと
家族も村塾の奴らも
何もかも全部捨てて先生救いに
多い多い敵だらけの場所でもきっと行けるよ
もうこの世界に価値などないよ
人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか
君は何も悪くないよ 君は何も悪くないよ
高)結局俺ら誰にも
愛されたことなど無かったんだ
そんな嫌な共通点で
俺らは簡単に信じあってきた
君の手を握った時
微かな震えも既に無くなっていて
誰にも縛られないで 俺ら
死体の道を歩いた
刀を振るって 爆薬仕掛けて
どこにも行ける気がしたんだ
今更怖いものは俺らにはなかったんだ
額の汗も 浴びた返り血も
銀)「今となっちゃどうでもいいさ
あぶれ者の小さな逃避行の旅だ」
桂)いつか夢見た優しくて
誰にも好かれる主人公なら
汚くなった俺たちも見捨てずに
ちゃんと救ってくれるのかな
銀)「そんな夢なら捨てたよ」
「だって現実を見ろよ」
「シアワセの四文字なんてなかった
今までの人生で思い知ったじゃないか 」
「自分は何も悪くねえと誰もがきっと思ってる」
高)凝りもせず襲う天人の群れに
水も無くなり揺れ出す視界に
迫り狂う 烏たちの怒号に
バカみたいに 駆け続けて
ふと君は 刀を取った
松陽)「君が今まで傍にいたから
ここまでこれたんだ」
「だからもういいよ」「もういいよ」
「死ぬのは私一人でいいよ」
高) そして君は首を切った
まるで何かの映画のワンシーンだ
白昼夢を見ている気がした
気づけば俺は捕まって
君がどこにも見つからなくって
君だけがどこにもいなくって
高)そして時は過ぎていった
ただ暑い暑い日が過ぎてった
家族(鬼兵隊)もクラスの奴ら(攘夷組)もいるのに
なぜか君だけはどこにもいない
あの夏の日を思い出す
俺は今も今でも歌ってる
君をずっと探しているんだ
君に言いたいことがあるんだ
十月の終わりにくしゃみして
八月の匂いを繰り返す
君の笑顔は
君の無邪気さは
頭の中を飽和している
誰も何も悪くないよ
君は何も悪くはないから
もういいよ
投げ出してしまおう
そう言って欲しかったのだろう なあ