季節の栞人形のお返しは何がいいかな?
少しだけ気分転換に外を見ながら考えているとあるものが目に飛び込んで来た。
「あ!」
思わず大声を出してしまい慌てて口に手を当てる。アーサーとエリック副隊長に緊張感を走らせてしまったことを謝った。
「人形のお返しですか?」
きょとんとするカラムに私は笑顔で頷く。
「はい、これです!」
私が取り出したのは本に挟む栞だ。
綺麗に赤く紅葉したモミジの押し花を貼ったものだ。紅葉が綺麗で思い付いたお返しだった。
「出来るだけカラムと私の髪の色に近いのを選んだの」
画用紙は2つに折り、上になる部分を1箇所だけ□にくり抜き窓を作る。2つの色違いなモミジがこの窓から見えるように寄り添うように貼り付けた。
工程そのものは難しくないから私一人でも簡単に作れるものだ。
だから子供っぽいだろうか?
人形のお返しにしては釣り合っていないそれに、カラムがどんな反応をするのか不安だったが、カラムは「そうか、ありがとう」と嬉しそうに受け取ってくれてホッとした。
「あの、使ってくれる?」
「うーん、使いたいが紙だから気を付けていても、汚れたり折れたりしそうで怖いな」
「そしたらまた作るから、使ってくれる??」
「そんなに使って欲しいのか?」
「ええ、勿論よ!使って使って、使い古して欲しいの!!何個でも作りたいの!」
私の勢いに若干引き気味のカラムは苦笑しながらも今夜読む為に用意していた本に挟んでくれた。
「そうか、なら遠慮なく今日から使おう」
「ありがとうカラム!」
私はカラムに抱きついた。
どうしたのだろうか?と頭を捻る。
プレゼントされた栞を使い始めてからプライドは明らかにそわそわしながら栞を見ている。毎日使っているか気になるようだが理由を聞いてもはぐらかされる。この栞を何度も作りたいというのも気になる。その季節季節の花や植物を使いたいのだろうか?
「作りたいなら作りたいだけ作ってくれて構わないぞ」
「え?」
「栞、気にしているようだから。何なら毎日日替わりに使うのでも私は構わないぞ?」
「いえ!?そういうわけじゃ……」
慌てて髪に手を当てて顔を真っ赤にして目を逸らされた。どうやらそういう意味ではないようだ。
ならばどんな意味があるのだろうか?
本を閉じ栞を手にしてみる。この1週間でだいぶお疲れの様子になってしまった。二重になっていた窓部分もだいぶ剥がれかけ……
「あっ……」
すぐ隣から声がした。見ればプライドは目を見開いて手を口に当てている。思わず発したらしい言葉に私はもう一度栞を見た。剥がれかけた二重窓、まさかと思いながら破けないようにそっと割いた。
「…………プライド」
「あ、あの!違うの!!モミジってね花言葉で、『大切な思い出』『美しい変化』というのがあって……そ、それで……その花言葉を思ったら自然とその言葉が……」
最初こそ勢いよく喋り出したというのに、どんどんと声が萎んでいくと共に顔も下を向いて両手で顔を隠してしまった。
「とても愛らしい悪戯ですね」
「いたずら……」
もう顔どころか耳や首まで真っ赤だ。何故悪戯をしたプライドがそんな顔になるのだろうかと笑ってしまう。
「次は私も栞を作りましょう」
「え?」
「私も貴方に栞と言葉を贈りたいですから」
「〜〜っ」
「欲しくありませんか?私の貴方だけに贈る言葉は?」
「──欲しぃですッ!!」
真っ赤な顔、嬉しいような恥ずかしいような顔で私を見上げるプライドにそっと口付けを贈る。
開かれた窓に書かれていた隠されていた言葉は私の方こそだ。
〝あなたをこれからも好きになる〟
ならば私もきちんと返さなければならない。
さて次の花言葉は何がいいだろうか。