夜のひととき白く細く長い指が持つワイングラスが傾けられた。中に入っていたピンク色の液体が彼女の口へと含まれるのを見届ける。それは数秒だが、緊張のあまりスローモーションに見えてしまう。
もし口に合わなかったらどうするべきか不安で仕方なく、手に持つワイン瓶が出した小さな波の音すら大きく聞こえる。
だが一口飲んだ彼女の顔が輝いたことでそれは杞憂で終わった。
「わぁ!こんなにも甘くて飲みやすく、口の中で弾け飛ぶロゼワインなんて初めてです!!どうやって造られているのですか?」
「ありがとうございます。兄も大変喜びます」
気に入ってくれたことにホッとし、それを笑みで誤魔化しながら製法の説明をした。プライド様は興味津々な様子で「へぇ」「そうなんですねー」とニコニコと陽だまりのような温かな笑顔で私の顔とワインを交互に見る。
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