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    ブラウン

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    ブラウン

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    我儘王女は粛正される3 (新兵15王女5)

    ラストは第三者目線の代表マリーです。
    ⚠今公開できるのはここまでです。この後は大人組の話になります。

    我儘王女は粛正される3 (新兵15王女5)1日目
    マリーSide


    今私は何を見せられたのだろうか?
    横を見なくても皆同じ顔で同じ事を感じているのを空気で感じていた。

    あのワガママ王女がたった2時間で懐柔された。
    しかもたった1ヶ月前に騎士団に入隊したばかりの今日15歳を迎えたばかりの若者によって。


    彼が派遣されることを知ったのは昨日の事だ。明日15歳の新兵がプライド様のお守りに来るとジルベール宰相から告げられた。突然の事はいつもの事、そして今回もいつもの事だと特に期待も何もしていなかった。
    騎士と言っても新兵になって1ヶ月の青年に何が出来るのか。簡単なプロフィールも見たが上級貴族の優秀な方なのは分かったものの、将来のエリート騎士がこの小さな怪獣をどうこう出来るとは誰も思っていなかった。
    「大変優秀な人物ですよ」とにこやかに笑む宰相も全く期待していないのを感じつつ私は了承をするしかない。

    朝、扉の前で待っていると時間通りにその少年は背筋を真っ直ぐに伸ばし新兵とは思えない程堂々と廊下を歩いて来た。
    王宮の侍女であっても騎士様を見掛ける機会はそうそうないが、初対面でも彼が他の騎士様とは違うことを納得させられた。
    白が輝きを放つ真新しい新兵の団服はシワ1つなく美しい。礼も作法通りであり、皆のお手本となる程見事なものだと思わず唸ってしまいたくなった。赤毛が混じった赤茶色の髪も手入れが行き届いていて艶があり、髪と同じ色の瞳は澄んでいて意思の力強さを感じさせる。顔は子供特有の可愛さと綺麗の中間のような美しさがある整った顔立ち。それは子供の面影を残しつつ青年へなろうとする過渡期特有の魅力だ。
    この顔であれば大人になった時に色気が凄いだろう。特に14歳で首席入団だけでも話題になるのに伯爵のエリート騎士様など誰もがほっとく訳が無い。
    下級貴族出身である私には引く手数多になるだろうその未来が容易に想像が付いた。
    だが、彼に愛嬌や愛想というものは一切感じなかった。
    元々なのかそれとも今日の任務が不服なのかは分からないが勿体ないと思った。

    扉の前で隣に並んだとき仄かに香る香水も付け過ぎておらず、香り自体も主張し過ぎていないのも好印象だ。
    私から見て彼は〝貴族〟として完璧だった。
    私の感情が死んでいなかったら、もしかしたら少しは彼に色めき立ったかも知れないとすら思ってしまう程に。


    それでも、それだけだった。


    中に入りプライド様と対面した時、彼は表情は変えなかったが暴言に不服なのは見ていて分かった。
    隠そうとしても隠しきれない、そこら辺はまだ子供なのだなと冷めた目で見ていた。
    私から彼へは何も言う事はない。何をして欲しいかも、何を期待しているかも、何もない。

    彼も王女に自己紹介した後は何も言わなかった。私達と同じくただ壁に立ち、ひたすらジッと部屋の中を観察しているだけだ。
    チラッと見ると彼の表情から呆れの色が読み取れた。当たり前の感想だ。たった〝5歳児〟にこんなにもいる〝大人〟が手を焼いているのだから。

    今日は朝から王女の機嫌は悪い。

    昨日宰相からお守りが来ると聞いてから機嫌は悪いままだ。朝もいつもよりも怒鳴り散らしていた。ドレスも普段着るものではなく何故か式典用の物を着付け、髪も結い上げた。
    客に対して身なりに気をつける知識はあるのに自分がどう見られているかはどうでもいい、彼女はそういう人間だ。
    大好きな父上にだけ甘え愛嬌を振りまく。
    私達侍女も衛兵も自分の言うことを聞かせる為だけの便利な道具でしかない。そしてそんな王女は彼を見てすぐに興味を失った。
    誰もが予測出来た事だ。
    彼も容姿はとても良いが、この王女は顔で人を好きになることは絶対にないと言い切れる。今まで王女が顔で判断した事はないからだ。どんな美醜であろうと王女は他人の顔を褒めた事も穢した事もない。それは彼女の善悪によるものでは無い。


    ──そもそも他者に興味がないのだ。


    彼女は自分の父上、そして今は会うことが無くなった母上にしか興味がないのだから。
    私がここに来た時にはもう既にこの有り様だった。女王に可愛がられていた王女は2歳になって突然突き放された。それからは母親を求めて泣いていたと先輩侍女は言ったが気付けば今のような傲慢で我儘放題の王女が完成されていた。誰もが彼女の傷を知りながらも見て見ぬふりを続けてきた。

    侍女がそれを癒やすことは出来ない。
    彼女に触れることも出来ない。
    抱きしめてあげることも出来ない。
    女王の御心など分かるわけもなく、気休めな言葉すらも掛けることは許されない。

    そんな侍女がどうやって王女の心の傷を癒やすことが出来るのだろうか?

    そして今日もまた私達は王女に罵声を浴びせられながらも下を向き、気配を消して、黙々と作業をこなして行くだけ──だと思っていた。


    『物を蹴っ飛ばしてはいけません』


    男性のとても通る落ち着いた声が部屋に響いた。いつもよりも怒りを爆発させていた王女がベッド脇のサイドテーブルを蹴った時だ。思わず顔を上げて見れば、私達と同じように壁に沿って1時間程ただ黙って立っていた彼が王女の肩に手を置いて諭していた。
    まさか王女に意見する者がこの部屋にいるなど考えてもいなかった。この若き新兵もただ時が過ぎるのを黙って待っているだけだと疑わなかった。


    ──誰も期待などしていなかったのだから。


    皆がハラハラしながら2人を見守った。
    怒りが爆発して王女は手あり次第の物を彼に投げつけるも5歳児だ、新兵はいとも簡単に防いでいた。
    王女が紅茶を飲んでいたティーカップに手をかけた時は吃驚する程の脚力で王女の手を掴んで投げるのを阻止した。だが中身の紅茶までは防げなかったようでドレスが汚れた。
    すぐに着替えを!と動こうとした侍女を私は思わず止め、ティーカップの回収だけさせて見守った。


    ──彼は侍女に怪我させる事も、使用人に仕事を増やすことも叱った。


    彼の言葉には皆が吃驚した。
    彼は伯爵家の次男であり自分も使う側の人間だった筈だ。私も城に来るまでは使う側であり、使われる側を慮ることが出来たのは、恥ずかしいことに自分が使われてからだった。
    それなのに彼は私達使用人にまで心を傾けてくれたのだ。まだ親元を離れて1ヶ月も経っていない筈なのにである。

    いつもは誰もが俯き、王女が一人で騒いで怒りが静まるのを待つだけなのに彼が事々く彼女の悪いところを指摘していく。伝家の宝刀とばかりに繰り返されてきた『父上に言いつける』『死刑よ』にもしっかりと揺るぐことなく言い返した。

    彼の言葉は真実だ。
    どこを見ても彼に非はない。
    私達も王配殿下が私達のクビを切ることも死刑にすることもないのは知っている。
    それでも王女の言葉が恐ろしかった。だからご機嫌を取り、万が一が怖くて、ずっと言いなりになってきた。それを15歳の少年が『クビに出来るものならしてみろ』と言い返している。王女に対して。

    そんなことは絶対にしてはいけないことだ。
    それこそ不敬に当たる。
    それでも彼の瞳は一切揺れることなく王女の目を真っ直ぐと射抜く。矢のように鋭く、力強く。

    これは彼の性格か?それとも15歳という無鉄砲さがなすことなのだろうか?
    これで家がどうなるのか心配はしなくていいのか?
    などこっちが心配になってくる。しかしそれは不毛なことだと彼の言葉で分かる。


    『こ身体の傷も心の傷も私はプライド様におっては欲しくないのです』


    彼は本当にただただ純粋にプライド様のことを思っての行動と断言した。侍女達が息を呑んだのが分かる。私達は皆自分の保身しか考えていなかった。保身に走り嵐が去ることをただただ祈って口を噤んできた。
    まさか15歳の少年に間接的に指摘されるとは、と自分を恥じいてしまう。

    『それは私が王女だから?』

    プライド様の言葉には侍女全員が先とは違う意味で息を呑んだ。ここで彼が何と答えるかでまた王女が暴れだすかどうかが分かれるからだ。
    王女は特別だと教えられて来たプライド様がどのような言葉を欲しているのか皆分かる。

    ──『プライド様は特別だ』と。

    彼は少し考えてから答えた。

    『いえ、誰であってもです。あなたも、ここにいる皆もです。私は誰にも傷付いて欲しくない、誰もが傷付く前に救いたくて騎士になったのですから』

    それはまさしく彼の本音だった。
    先程と同じく彼は本気で誰にも傷付いて欲しくないと言っている。
    だが、それは王女に対しての回答では不正解だ。
    王女は特別であり、我々とは違う。
    その回答では王女は屈辱と侮辱を感じて大暴れするだろう。
    また彼が止めるだろうが出来るだけ暴れさせないで貰いたい。万が一怪我を負わせたりしたら大事なのだから。

    と危惧していたが一向にその気配はない。王女を恐る恐る見てみると何故か目を見開き放心していた。

    理由は分からない。
    ただ彼がドレスの着替えを指示すると素直に従った。

    ──あの王女が!!

    あの誰の言葉にも耳を傾けなかった王女が、彼に背中を押され侍女の一人に連れられて大人しく着替えるために歩き出した。
    それを見てから彼と衛兵は一旦外ヘ退出した。


    王女は着替え中ずっと何かを考えているようだ。
    いつもは自分が決めたお召し物しか着ないのに今は何を聞いても上の空で朝用意していたドレスを着させることにした。

    着替えの際、文句は一切言わなかったがソファに座って自分のお召し物を見て、やっと自分が選んだ服でない事に気付いたのか物凄く不機嫌になったのが見て取れた。
    騒ぐかと思ったが頬を膨らませ不機嫌顔になっただけだった。
    もしかしたらまた彼に怒られると思って口を噤んでいるのだろうか?流石にもう彼と喧嘩をする気も無くなったのか?

    何だか先程から王女はすっかり毒が抜けてしまったかのように大人しく、不気味だった。



    彼が戻ってくると一変、彼は微笑みながら突然王女の服装を褒め出した。ここに来て懐柔作戦に出たのかと思ったが、どうやら着替えた姿を見て思ったことを伝えただけなようだ。
    着替えたらお似合いですねと褒めることは貴族の社交辞令ではあるが、何となく彼の場合は本心から仰ってる気がする。
    事実、そういうことに慣れている筈の王女の様子がおかしい。とても動揺し、顔を赤くし照れている。彼が本心で言っているからか、それとはまた別な要因か。もし別な要因であれば一体なんだろうか……?

    と考えていると突然王女が彼のことを名前で呼んだ。王女は誰一人として名前を呼んだことがない、皆が驚き固まった。

    『今のプライド様とならお友達になりたいと思いましたので、お友達になってもらえませんか?』

    王女とお友達……〝お守り〟という概念から言えば〝お友達〟と言い換えることも可能だろうが……。何だか彼はプライド様を王女ではなく5歳の子供として接している気がする。

    ここまで来るとここにいる者皆、目の前で繰り広げられてきた現状が非日常過ぎて理解が追いつかない。
    ただただ目の前で繰り広げられている〝二人の子供〟の会話を聞いていた。

    何故カラムが顔を赤くしてたか理由も誰一人として分からなかった。
    カラムが毎日来ないと聞いたプライド様は王配や摂政との別れ際のように切ない顔をし、そこだけは見ているこっちも心を痛くさせるほどだ。

    それだけこの短時間でカラム・ボルドーという人物が王女の中で王配に匹敵するほど大きな存在となった証である。
    毎日顔を見合わせている自分達とは違う。ハラハラと見守ることしか出来ない大人の私達はなんて無力か。本当にいてもいなくても同じだと胸が痛くなる。


    彼はしばらく思考し徐ろにプライド様に跪いた。
    その姿はやはりお手本通りでその所作はとても美しい。


    『プライド様、よくお聞きください』


    カラムがプライド様に語ったことは真実だ。
    そしてとても大切なことだった。


    『どんなに長い時間会えなくても、どんなに遠く離れていても、私はずっとプライド様を慕っています』


    プライド様が真っ赤な顔で頷かれると手の甲にキスが落とされる。その様子は騎士の誓いではなく、一人の男性が愛する人に誓いのキスをしているようだった。
    侍女たちは彼が放った男性の色気に当てられ顔を真っ赤にし、思わず息を吸って慌てて手で口を押さえる者も何人かいた。許されていたら黄色い悲鳴を上げていたであろう、それほどその光景は美しくまるで絵本の中の王子様とお姫様のようだった。
    白い団服を着た王子様と、真っ赤なドレスを着たお姫様の幸せなキスシーンはとても美しかった。



    それは紛れもない愛の告白。
    プライド様以外が全員気付いていた。この15歳の少年は5歳の王女に恋していると。
    一体何処にそんなシーンがあったのだろうか??
    今日会ってまだ2時間程しか経っていない。その何処に恋に落ちる瞬間があったのか、誰一人として理解できなかった。
    あったとしたらあの顔を真っ赤に染めた時だろうか?しかしプライド様の台詞の何処に恋に落ちる要素があったというのか?
    思い返してもただのいつもの傲慢な態度と言葉だった。ロマンチックも何もない、あの台詞で落ちるなら彼はマゾなのかと一瞬思ったが探索する気力も今はない。

    今目の前では突然プライド様は怒り出したのを見てカラムは笑い、プライド様は更に怒ってぽかぽかカラムを叩いた。

    それは先程まで見せた王子様とお姫様のやり取りから一番遠い、兄と妹のような平和な喧嘩に見えた。

    私はここにカラム様が来た時を思い出していた。
    たった2時間前のことを忘れてしまう程、こんなにも表情が豊かな少年とは思わなかった。
    目まぐるしく変わっていく〝子供な二人〟の行動に大人は全くついて行けなかった。何故かそれがとても大人として敗北感を感じさせた。


    カラム様であれば傷つき誰も信用出来なくなったプライド様の心を救ってくれるのではないか?
    プライド様に恋をしたとしても彼ならこれ以上踏み込むこともないだろうと、たった2時間でも彼の人となりに自然とそう思えた。
    誠実で実直、品行方正を絵に書いたような少年だ。騎士としての誇りも高い。
    彼なら間違えることもない、と確信していた。


    彼が去ったあと侍女たちと目を合わせると皆が頷いた。皆が同じく〝カラム様なら〟と希望を抱いていた。


    お姫様を救うのはやはり王子様なのだと思い知らされた。


    それでも大人である私達もまた努力はしないといけない。彼が言う通り、ずっと彼が来てくれるわけではないのだから。
    少しずつでもプライド様とのコミュニケーションを計ろうと大きく頷きあった。



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