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    ブラウン

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    ブラウン

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    幼馴染み+カラ隊長(プラ様総受け)
    話題の児童書を持って来たティアラ様と幼馴染み達の会話を見つめるカラム隊長目線です。

    妖精に願いを──もし本当に妖精がいるのであれば

    午後の穏やかな休憩時間。
    「お姉様、兄様、この御本をご存知ですか?」
    紅茶を一口飲んだ後、ティアラ様が1冊の本を出した。本のタイトルを見ればそれが今民の間で話題になっている児童書だと理解した。流石本好きなティアラ様だと口元が綻びそうになる。話題の本であれば何でも手に取られるのだろう。
    「児童書かしら?」
    「ええ、今とっても民の間で流行っているんですっ!」
    上機嫌な末っ子にプライド様もステイル様も優しい笑みで返す。
    「妖精によって子供たちが望んだ特殊能力を1日だけ与えられるのです。その特殊能力を使って大冒険をするというお話なんです!」
    「1日限定でも好きな特殊能力が使えるのは楽しそうね!」
    「ええ、とても夢のあるお話ですね」
    「はい!私もぜひ使ってみたいです!!」
    3人で顔を見合わせニコニコしている。その様子を見れば我々も幸せになれる。

    横を見ればソワソワと物言いたげな蒼い目をしている銀色の髪の騎士がいる。任務中でなければ彼もこの3人の雑談に混ぜてあげたいと思う。特に婚約者候補全員を知ってしまった今は。
    混ざりたいのであれば婚約者になってしまえばいい。そうすれば短時間の雑談に混ざる事ぐらいは目を瞑るというのに。
    彼が婚約者になれば誰もが納得するだろう、何せ彼は『聖騎士』なのだから。

    「妖精が授けるのね」
    「はい!どんな特殊能力でも叶えてくれるのです!」
    プライド様はパラパラと児童書を捲り目を通して行く。ちらっと見えた中身は絵が多く会話と擬音が多様され、思った以上に子供向けな印象だ。児童書というより絵本に近い印象だ。絵は白黒だがとても愛らしく、子供達が生き生きしているのが見て分かる。絵だけでも見る者を魅了すると思った。
    「本当に読みだしたら止まらなくなりそうね。文章に引き込まれる感覚がするわ」
    プライド様の率直な感想に驚いた。
    今までもティアラ様が好きな本を2人に勧めることはあったが、様々な本をお読みになっているプライド様がここまで夢中になるのはとても珍しい。
    今まで児童書だと軽く見ていたが次の休みに本屋に行こうと決めた。ネイトにプレゼントするのもいいだろう。ジャンヌも読んでいると伝えれば、ネイトも頑張って読むだろう。そうすればまた手紙を書くキッカケにもなる。

    「お二人はこの本を知っていますか?」
    唐突にティアラ様から話を振られた。隣の騎士がチラリと私を見る。折角ティアラ様が話を振ってくださったのだ、遠慮せずに話に混ざればいいものを。彼の性格上、先に私が口を開くしかない。

    「ええ、話は聞いたことがあります。子へのプレゼントに選ばれる親御さんが多いと。特に騎士団でも子供のいる騎士を中心に話題になっています」
    「エリックさんも甥っこにあげる為に読んで面白かったと言ってました!」
    それを言いたかったのか、と私の言葉に被せる様に勢いよく言うアーサーに顔が笑ってしまった。確かにエリックなら読みそうだ。そしてティアラ様との感想の交換も楽しむだろう。
    「エリック副隊長が!では今度会った時にでもお話したいですっ!」
    ティアラ様は喜びの顔をアーサーに向け、アーサーも笑顔を返す。そのやり取りはやはり他の者よりも近い。

    「あら、瞬間移動の話もあるわ!」
    「ほぅ〜、それはとても興味深いですね」
    パラパラ読んでいたプライド様の言葉をステイル様が拾うと「そうなんです!」とティアラ様がすかさず拳を胸の前に話し出した。2人にも読んでもらいたいと必死なのだろう。
    「珍しい特殊能力も多数出て来るんです!その中でもこの瞬間移動は大活躍するんですよ!でも最初は上手く使えなくて、出る場所間違って湖に落ちたり──」
    ブフッとステイル様が優雅に飲んでいた紅茶を噴き出した。
    「ステイル大丈夫!?」
    「兄様!?」
    慌てて侍女たちが布巾やハンカチでステイル様とその周りを拭く。
    「……こほん、失礼しました」
    ある程度拭き終えたところで片手を上げ礼を言うステイル様にアーサーは呆れた目を向けている。
    今でこそ特殊能力を繊細に使いこなしているステイル様だが、ティアラ様の言った特殊能力の失敗に心当たりがあるのだろう。
    私も特殊能力が発現したばかりの時は相当苦労したものだ。

    「いろんな特殊能力は出てくるんですが、予知能力は出て来ないんですよ。残念です」
    「それは仕方ないわよ」
    残念と目を伏せるティアラ様の頭をプライド様が優しく撫でる。
    王族の象徴である予知能力は民が持ってはいけないものだ。出て来たらそれだけで発行出来なくなるだろうし、最悪投獄される。
    「植物の特殊能力や怪力の特殊能力も登場するんですよ」
    植物も怪力も決して珍しい特殊能力ではないが、それでも物語に登場すると聞けば興味が沸く。それはアーサーも同じようだ。
    「どんなことすンだ?」
    「植物の特殊能力は、畑の植物の成長が芳しくないことに困っていた農夫の為に植物を元気にしたり、豆の木を天の雲に届くほど大きく育てるのです!」
    「すげぇな!俺も植物を操れたらいいンだけど」
    アーサーは悔しそうに自分の手を見る。
    植物を元気にするのも凄い特殊能力だ、そう言ってやりたいが『怪力』の特殊能力持ちの私が言っても嫌味にしか聞こえないだろう。

    「植物を元気にする力も有意義に使っているんだな」
    「ええ、農夫もそれはそれはとても大喜びで、お昼を豪華に振る舞ってくれるんです!」
    「だってアーサーの特殊能力は凄いですもの」
    ステイル様、ティアラ様、そしてプライド様の言葉と笑顔がアーサーに向けられる。
    アーサーは「そんなことねぇッス!」と顔を赤くして首を振る。「そんな事はない」「凄いですアーサーっ!」とステイル様とティアラ様から追撃の褒めに照れから顔を赤くしたまま頭を掻いた。
    仲の良い4人が愛おしく感じてしまう。いつまでも見ていたい光景だ。

    「カラム隊長の怪力もまた大活躍するんですよっ!」
    そんな4人を見つめていたら突然ティアラ様から声をかけられ目を向ければ人懐っこい笑みで私を見上げていた。
    「その雲の上で意地悪な龍と戦うんです!そこがこの物語の最終決戦で一番面白いところなのです。これまで練習して来た特殊能力を屈しして皆で龍に立ち向かうのです!怪力もその戦いで岩を投げつけて皆の援護をするんです!」
    「おおっ!!」
    「流石カラム隊長ですね!」
    「まぁそれくらいして同然ですね」
    何故か登場人物が私になっている。アーサーもキラキラした目で私を見ないでくれ。
    「それは物語の『怪力』の子の活躍で私ではありませんので」
    「ンでも、アラン隊長からカラム隊長が後援から大きな岩を敵に投げつけた話聞きました!!」
    アランめ……自分の功績を話せばいいのに、こういう時は人の事ばかり……後でキツく締めておかねば。
    「あ!防衛戦でも城の入り口に大きな石像を投げてましたね!」
    プライド様の言葉にビクッと肩が跳ねる。
    確かにプライド様の前でも適当な石像を投げた事を思い出せば、本と似たような事をした事がある事を隠す必要もないだろう。
    「……確かに敵に岩を投げつけたことはあります」
    何だか恥ずかしい過去を告白するようで変な気分になる。「おおっ!」と歓声を上げる3人の声を遠くに聞きながら、これもこれも全部アランのせいにしよう、そう決めて前髪を押さ顔の赤みを逃がした。

    「ふふっ、でもこのお話の面白いところは皆が特殊能力に振り回されたり、躓いたりと失敗するんです。例えば怪力は確かに活躍はするんですがドジっ子なんです。龍に投げた岩も味方にぶつかりそうになったり」
    「それは危ないわ!」
    「ええ、でもそこは瞬間移動の特殊能力で味方は全員助けられて、龍にも岩が当たるんですよ!」
    「ほぅ」
    果たしてそれはドジっ子と評していいのだろうか?
    だがそれよりも今はステイル様がご自身の特殊能力の活躍に興味を持った事のほうが大事だろう。

    「子供達は最終決戦の龍との戦いまで特殊能力を使っては失敗と成功を繰り返すんです。それがコミカルな文章と絵で描かれていて子供が読むのを飽きさせない様にされていて。だから敢えてある程度の分厚さにしたと後書きに書かれてました」
    「確かに児童書にしては厚いと思ったわ!これなら読んだ後に凄く達成感を味わえそうね!」
    「はい!達成感が目に見えた方が自信にも繋がりますし、今度は別の本を手に取れるハードルが下がります。だからこそ我が子に読ませたいとこの本が流行っているそうです」
    「よく考えられて作られて作られた作品だな」
    ステイル様はプライド様から本を渡され、パラパラとページを捲る。
    「うん、これならアーサーでも読めそうだな」
    「どういう意味だゴラァ!」
    「それほど面白いって事だ」
    とうとう言葉が荒れるアーサーだが、慣れきってしまった今は目を瞑る。


    この本が売れた理由、ティアラ様が言った事も真実だろう。まず話が面白くなければ売れない。だがそれだけでなく、この本には文章を読み慣れていない子供でも飽きさせない工夫が随所にされているのだろう。それが教養の高い成人した王族3人の目からも一目で面白いと太鼓判を押させる魅力だ。
    そして一番大切なのは販売時期だ。
    どんなに内容が面白くても時代が合っていなければ売れないも。この本が発売されたのは学校の開校の少し前、まさに時代に合った本だ。

    私は小さく息を吐き心を落ち着かせる。
    「プライド様」
    私が名前を呼べば「何でしょうか?」と身体ごと振り向いて下さった。高貴な紫色の宝石のような目と合い、互いに微笑んだ。
    本当であれば私が話に入ってはならないのだが、今だけは、近衛騎士ではなくもう一つの肩書きで話させていただきたい、と心の中で言い訳をする。

    「この本が売れた理由ですが、プライド様が造られた学校のおかげで子供達の識字率も上がっている事も一因でしょう。少し前までは平民がこんなにも児童書を求める事はほぼありませんでした。子供にいい職に就いてもらいたいという親心の表れです。街を歩いているだけでも民からプライド様への感謝の声をよく聞きます。特に学校が開校になってからは子を持つ親からが多いです。子供が字を読み書き出来るようになり、勉強が出来るようになった事が嬉しいと」
    「いえッ!?学校は発案しただけで、私が一人で創ったわけではありませんっ……!」
    「いえ、プライド。カラム隊長の言う通りです」
    ステイル様が眼鏡を上げながらプライド様に言う。
    「今まで娯楽である本は貴族が中心でした。平民が本を買うとなればある程度の裕福さと教養が無ければなりません。大人でも読み書きが出来ない者も多い我が国でここまで児童書が売れたことはプラデストの功績が大きいところです。ならばその発案者であり、学校の顔であるプライドに感謝するのは当然です」
    「そ、そう……かしら……?」
    「そうですわ、お姉様!」
    「俺もっ!そう思いますッ!!」
    まだ自信のないプライド様にティアラとアーサーも力強く言葉を返す。
    チラッとプライド様が私を見上げ、目が合った。捨てられた子犬のような、自信なさげに揺れる瞳に私も笑顔で頷けば、ホッと息を吐かれやっと笑ってくださった。

    民は王族を、プライド様を敬愛している。
    プライド様はもっと自信を持っていただいて宜しいと心から思う。



    「そうですわ!」
    ぱちんとティアラ様が手を叩かれたのはそろそろ休憩時間も半ばを過ぎた時間だった。
    「皆さんは妖精からどんな特殊能力が欲しいですか?特殊能力持っている方はそれ以外で。勿論現実には存在していない特殊能力でも構いません!」
    妖精から貰える1日だけ使える特殊能力。
    ティアラ様は部屋の中を目線でぐるっと一周させる。つまりは姉兄と近衛騎士だけでなくこの部屋にいるプライド様の専用使用人3人にも聞いているのだ。3人もまさか自分たちにまで聞かれるとはと驚いている。
    「では、まずは私からですが……」
    ゴホンとわざとらしく咳払いをする仕草をしてからティアラ様がプライド様に笑顔を向けた。
    「世界中の色んなお花を出せる特殊能力が欲しいです!それで出したお花畑をお姉様と兄様と散歩したいです!」
    にっこりと笑いながらプライド様の腕に抱きつくティアラ様に、プライド様も満面の笑みで抱きついた。
    「私もそんな素敵な花畑をティアラとステイルと歩きたいわ!」
    「はい!3人でお姉様を真ん中に手を繋いで歩きましょう!」
    「ええ勿論よ!」
    「〜〜〜」
    抱き合う姉妹の向かいでステイル様は耳も首も真っ赤になり、眼鏡がどんどん曇っていく。たぶん手を繋ぐの部分を想像されたのだろう。気持ちは分かります。

    「次、お姉様はいかがですか?」
    「私は何がいいかしら?」
    うーん、と楽しそうに考えるプライド様をティアラ様も楽しそうに見つめている。
    「あ!そうだわ、空を飛ぶ特殊能力がいいわ!鳥のように空を自由に移動出来るのは楽しそう。まだ行ったことのない場所は勿論、よく知っている場所も空からだとまた違って見えそうで楽しそう!」
    「いいですね!私も連れて行ってください!」
    「勿論よ!」
    また2人で抱き合うのを見てほっこりとした。
    しかし、プライド様がもし空を飛んだら……地を駆ける彼女ですら止められないのに、護衛としては死活問題である。

    「兄さ……、アーサーはどうですか?」
    ステイル様の様子に今気付かれたティアラ様はくるりと身体ごとアーサーに向けた。
    「俺っすか?何だろうな…………?」
    アーサーもうーんと唸りながら考えるも「あ!」と思ったよりも早くに思い付いたようだ。
    「昔噂で聞いた事があるンすけど、手が拳銃になる特殊能力は憧れるっつーか、便利そうだなって」
    「手が拳銃に?銃弾は何で出来るんでしょうか?」
    骨?肉??と首を傾げるティアラ様は結構現実的な考えをされる。
    「いや、噂だし、俺もそこまでは考えてなかった……でも本当に拳銃の弾丸が撃てるならいいなって話聞いた時に思ったンだ」
    騎士として役に立つ特殊能力を欲する気持ちは痛いほど分かる。
    「確かに拳銃と弾丸を持ち歩く事も、落とす事も無いのは便利そうですね!私もナイフを体内から作り出せたらと思います!!」
    話の内容の物騒さは兎も角、ティアラ様はどこまでも現実的だなと和んでしまう。
    「私も剣なら欲しいと思います」
    「あ!お、俺も!俺もやっぱり剣がいいっす!!」
    アーサーには悪いが便乗させて貰った。
    「ふふっ、カラム隊長もそういうのに憧れがあるんですか?」
    「ええ、幼い日にそういう空想をした事があります」
    騎士を目指した者は一度は自分の手や身体の一部が変化する事を空想したのではないかと思う。
    「カラム隊長がと思うと、ちょっと意外ですねっ!」
    「そうですか?流石に成人後にそんな空想はしませんが、アーサーの憧れた気持ちはとても分かります」
    ティアラ様は「そうですか」とクスクスと愛らしく笑われた。プライド様もその隣で楽しそうに笑われている。

    次にティアラ様は使用人にも答えを求めた。
    マリーさんは「裁縫が早く、上手く、なる特殊能力」、ロッテさんは「作った食べ物が美味しくなる特殊能力」、ジャックさんはとても困った顔でそれでも「虹を出す特殊能力」と意外とロマンチックな解答だった。
    なぜ?と問い掛けようとするティアラ様からバッと真っ赤な顔を背け回避したが為に理由は分からないが、何故かロッテさんまでも真っ赤な顔をして俯かれていたのは気の所為にした方がいいだろう。

    「あとは兄様だけですよ」
    「そうだな……」
    復活したステイル様は再び眼鏡をくっと上げた。


    「予知能力」


    その解答に部屋の時計が止まった。
    それを分かっていてステイル様は続ける。
    「プライドの意識して発動できる予知とティアラの相手に見せる予知の両方を体験してみたい」
    「ステイル……」
    「兄様……」

    ああ、そうだ、今この部屋でその回答を出来るのは姉妹の兄弟であるステイル様だけだ。
    王族としての立場も、姉弟妹としての立場も共有出来、そして特殊能力さえも共有したいと率直に言える立場はステイル様だけだ。

    プライド様、ティアラ様がステイル様を真ん中にソファに座りその手を取られた。ステイル様もその手をしっかりと握られる。
    心を交わす3人は同じ表情で微笑んでいた。




    騎士館への帰り道、王宮を出たところで銀色の髪が揺れた。
    「カラム隊長お疲れ様でした。今日も鍛錬しますか?」
    「ああ、夕食食べたらな。一緒にするか?」
    「はい!!」
    そう言えば愛くるしい笑顔で返事をくれるから私も吊られて笑ってしまう。
    「しっかし今日は参りましたね。カラム隊長もお疲れっすよね?」
    「いや、今日はそこまででもないさ」
    「ステイルの奴、全部持っていきやがって」
    そう言うアーサーの顔は言葉とは裏腹に微笑んでいた。
    「そうだな」
    そして私も同じく微笑んでいるのだろう。
    ステイル様がプライド様の横に並ぶ未来も簡単に想像つく。
    もう既に王族となられているステイル様が王配になられるのが一番しっくりくるのも真実だ。

    だが未だにプライド様の心は特定の者には向いていない。
    ステイル様にもアーサーにも、そして私や他の者にも。だが、明らかにステイル様とアーサーには他の人とは違う。

    ──アーサーも踏み込めばいい。

    そう言ってしまいたい口を固く閉じる。
    アーサーなら欠点も含めて誰もが認め愛される王族になるだろう。
    同じ立場としてそんな事を考えてはいけない。これは押し付けだ。圧力をアーサーに掛けたいわけではない。自然と自らの意思で婚約者、そして王族になると覚悟をしなければならないのだから。

    「カラム隊長がそんな空想していたのは俺も意外だと思いました」
    「そうか?子供なら誰もがそういうこと考えるだろう。いろんな動物に変身出来たらとか」
    そう私が言うとアーサーは何故かキラキラした目を向けてきた。もしアランなら「ぶぁわ!!今のお前には似合わねぇな」と肩を叩いて来ただろう。


    アーサーの隣を歩きながら今日のことを振り返る。

    もし本当に妖精に頼めるのであれば、
    実際にはない特殊能力でもいいと言うのであれば、
    そして私のような者が欲を出していいと言うならば、
    私の本当の願いは──


    『プライド様を笑顔に出来る特殊能力』


    どんな能力でもいい、あの御方を笑顔に出来るのであれば、1日だけでも使いたいと心から思う。
    とはいえ、あの場では口が裂けても言えなかった。
    私はステイル様のように姉弟妹として心を通わせているわけでも、アーサーのように幼馴染みとして溶け込んでいるわけでもない。
    アランであれば言えてしまうだろうが、私はあんな性格にはなれない。


    『流石カラム隊長ですね!』


    いつも笑顔で褒めてくださったり


    『あ!防衛戦でも城の入り口に大きな石像投げてましたね!』


    そんな些細な事まで覚えていてくださったりと彼女からしたら対したことではないのだろう事でも、私はこれだけ喜ばされている。

    今日もティアラ様と大変楽しまれていた。
    その笑顔がずっと続くように守るのが私の役目である。そして私は今後もあの4人を見守って行くのだ。






    ■後書き
    いつも一歩引いて見ているカラ隊長を書きたくて。この世界に妖精という概念はあるのだろうか?と疑問に思いつつも妖精以外に思い付かなかったもので……。
    カラ隊長、最初は当て馬か?と思ったけど、ここまで何も無いと逆に本当に婚約者なのでは?と思ってしまう。
    今対であるアラちょが暴走してますし(Ⅲ部のデート)
    マジでブチ切れたカラちょに大岩で潰されてしまえと思うほどアラちょが羨ましいッス。
    アラちょ本当に好きです!!
    だからカラちょも階段駆け上がってくれ!!






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