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    2kurokma

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    2kurokma

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    養父に乙女の指輪を渡した後のアレジョセの途中
    古傷が痛む養父の腕をさすりながら隣で一緒に寝る(やましい意味合い0)殿下が見たくて書き始めた
    便宜上アレジョセと呼んでるけど、親子愛のつもりで書いているので殿下の養父に対する距離がもの凄く近い以外はカプ要素ないと思いながら書いてる
    でも書いてる人がアレジョセのオタクだからそう見えるだけかもしれない

    雨の降る夜 乙女の指輪をジョセフへ渡し無事に儀式を終えた日から、アレインは仕事を済ました夜に彼がいる天幕に向かう許可をもらった。別にこれといって何か特別なことをするわけではなく、解放軍とは関係ない日常の話をしたり、話題がなくとも二人で穏やかな時間を共に過ごしたりと些細な内容だ。最初はジョセフがアレインの天幕に行くと言ったが、夜に会いたいと自分が提案したのに来させるなんて申し訳ないだの、俺が行きたいだけだから気にしなくていいだの、恥も外聞もなく駄々をこねにこねてなんとか彼の天幕に入る権利をもぎ取ったのだった。
     とはいえ、解放軍の総督と参謀というどちらも忙しい立場であるため毎日とはいかず、自身の天幕に引き返して眠るまでの僅かな時間だけだ。それでも、ずっと心の奥底にしまいながらも夢に見ていた、父子として穏やかに語り合う時間ができたのが、なにより彼がそれを許してくれたのが嬉しかった。

    ───

     雨がぽつぽつと降る中、自身の天幕でさっさと鎧を脱ぎ簡単な服装になってから雨避けを着て、小走りでジョセフの天幕に向かう。近頃は忙しく中々時間を作れなかったのだがようやくある程度まとまった時間が二人にでき、今日は来ても良いと彼から許可を得たのだ。雨なんて気にすらならない。ただ、情けない姿は見せられないと、喜びで浮き足立つ心を自制し冷静になろうとするものの、どうしても共に過ごせる嬉しさが滲み出てしまう。
    「ジョセフ、俺だ。入るぞ」
     天幕の前で返事を待つ時間すら惜しく、言うや否やジョセフの天幕に足を踏み入れた瞬間、ばさりと本の落ちる音が天幕の奥の方から聞こえた。
     驚かせてしまったか、と浮かれた熱が申し訳なさで途端に常温へと戻り反省する。すまない、と口を開きかけたが、椅子に掛けてるジョセフをよく見れば

     腕を抑えながら苦しそうに、身体を、丸めて
     
    「ジョセフっ!」
     全身に冷や水をかけられたような心地で雨避けを脱ぎ捨て、すぐさまジョセフの側に駆け寄り膝をつく。普段は鎧で隠れている古傷の多い腕に目をやるが、特に目立った外傷はない。
    「っ……殿下、王子である貴方が、一騎士に膝をつかないでください」
    「そんなこと言っている場合か!すぐにビショップを呼んでくる」
     父親のように思っていると言葉にして伝えたのに、こんな時ですら主従としての線引きをしてくる彼に思うところはあるが、今はそれどころではない。癒し手を呼ぶために天幕を出ようと立ち上がろうとしたその時、腕を掴まれ引き止められた。
    「ジョセフ」
     どうして止めるんだと焦りを込めた目線で訴える。
    「お気遣いは有難いですが、大丈夫です」
    「今の痛がり方を見てそうは思えないが」
    「しかし、癒し手が治せる類のものではないので」
    「……そ、れは…」
     傷の治療に特化した彼女らで治せないのであれば、まさか病か。不穏な予感に背筋が凍る。血の気の引いた顔を見てアレインの嫌な考えを察したのか、ジョセフが訂正をした。
    「いえ、深刻なものではないのでご心配いりません」
    「…なら、なんだ」
     先を促せば躊躇うような素振りをしたが理由を言わない限り絶対に退かないぞ、という主君の圧に根負けしたのか、漸く口を開いた。
    「……雨で古傷が痛むだけです。放っておけば治りますから」
    「………………は?」
     雨の日は痛む、と聞いて愕然とした。ジョセフが古傷を痛がる姿なんて見たことがない。それが意味するところは。
     
     十年も、隣にいたのに。
    「隠していたのか、ずっと」
     静かな、しかし怒りと動揺がごちゃ混ぜになった低い声を聞き、ジョセフが気まずそうに目を逸らし手を離した。
    「…殿下の気を煩わせる程のものでもありませんから」
     言ってしまった、という後悔が表情にありありと出ている。アレインの心を傷付けてしまうと分かっていたからこそ、喋るつもりなどなかったのだろう。こんな機会がなければ、一生。その顔を見て、騙されたことへの怒りがこちらを気遣うあまり自分の痛みすら隠す、彼の献身と優しさを寂しく思う気持ちに変わっていく。
    「…煩わしくなんて思うわけがないだろ。貴方の痛みを、傷を、俺が……」
     痛まぬようにそっと優しく、古傷だらけの腕に触れる。手が触れた瞬間、驚いたようにジョセフの肩が跳ねたが、労わるようにさする手を振り払うことはなかった。
    「…こうされるの、嫌か?」
    「いえ。…殿下の前で情けない話ではありますが、そうして頂けると痛みが和らいで助かります」
    「!、そうか…よかった…」
     気休めだとしても彼の痛みを取り除けたことに安堵の笑みを浮かべる。何でもいい、どんなに些細なことでもジョセフの助けになれたという事実が嬉しかった。
     ふと、雨が天幕の布を叩く音が大きくなる。先程より雨足が強くなってきたようだ。流石に十年前のあの日ほど酷くはないが。
     城から逃げ落ちた日、叩きつけるような暴雨の中でジョセフは幼い子供を抱えながら馬で駆け続けた。
     敬愛する主君は自分達を逃す為の肉壁となった。いつ追手に見つかってしまうか分からない。そんな状況で、もしかしたら古傷が痛んでいたかもしれないのに、そんな素振りを一瞬たりとも見せずに母を失ったアレインを気遣い、あろうことか雨に濡れて寒いだろうに我慢させて申し訳ないと頭を下げたのだ。
     ずっとそうだった。
     こちらの傷に寄り添い前へと進む道を示してくれるのに、自分の弱さや傷は隠し、気にしなくていいと、なんでもないかのように振る舞う。あの日や古傷の話だけではない。アレインに対してずっと、そうだったのだ。
     ジョセフには申し訳ないが、今日は強引に天幕の中へ入って良かったと思った。外で返事を待っていたらきっと、いや、必ずこの人は隠そうとした。
     十年間、そうしてきたように。
    「…少し、待っててくれ」
     彼の十年の献身に報いる方法は、自分が今してやれる事は何なのか、それが朧げながらも思いつき、アレインは立ち上がって天幕の外へと向かった。外の近くにいた見張りに一言伝えてまた引き返し、戻る途中で先程放ってそのままだった雨除けを我ながら随分と焦っていたな、と思い返しながら雨具掛けにかける。そんな様子を不思議そうに見守っていたジョセフは、目の前に立ったアレインへ困惑した視線を投げかけた。
    「…殿下?」
    「今日は俺もここで寝る」
    「…………今、なんと?」
    「貴方と一緒の寝床に入ると言ってるんだ」
     ジョセフの困惑したような眉間の皺がますます深くなった。自分でも無茶苦茶な提案だとは思うし、じわじわと頬に熱が集まって赤く染まりつつあるのが鏡を見なくても分かった。
     それでも、貴方のためになるのなら、全てを一人で抱え込まなくてよくなるのであれば、恥ごとき幾らでもかいてやる。
    「……アレイン殿下。何故そのような…」
    「…貴方が一人で何もかもを耐えようとしているのが、嫌なんだ。貴方が俺と共に歩んでくれているように、俺も、貴方の傷に寄り添いたい」
     コルニアの為に傷つき続けた聖騎士の腕にもう一度触れる。ふと、そういえば前は逆の立場だったな、と思い返す。
    「…それに、俺、貴方に無理はしてほしくないし、苦しむ顔は見たくないんだ」
     以前の言葉を引き合いに出せば、その言葉をかけてくれた本人は目を見開いて固まり、ややあってため息を吐いたのを見て、今が攻め時と畳み掛けに行く。
    「見張りの兵にも今日は自分の天幕に戻らないと伝えておいた。ああそうだ、俺の我儘でここにいたいと言ってある。貴方の体調のことは話してないから安心してくれ」
    「…………私の負けです」
    「はは、また俺の勝ちだな」
     契約の儀式以降の敗北宣言を聞いて緊張から解放され、安堵の笑みを浮かべながら彼の手を取り、寝台へと共に向かった。
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    2kurokma

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    古傷が痛む養父の腕をさすりながら隣で一緒に寝る(やましい意味合い0)殿下が見たくて書き始めた
    便宜上アレジョセと呼んでるけど、親子愛のつもりで書いているので殿下の養父に対する距離がもの凄く近い以外はカプ要素ないと思いながら書いてる
    でも書いてる人がアレジョセのオタクだからそう見えるだけかもしれない
    雨の降る夜 乙女の指輪をジョセフへ渡し無事に儀式を終えた日から、アレインは仕事を済ました夜に彼がいる天幕に向かう許可をもらった。別にこれといって何か特別なことをするわけではなく、解放軍とは関係ない日常の話をしたり、話題がなくとも二人で穏やかな時間を共に過ごしたりと些細な内容だ。最初はジョセフがアレインの天幕に行くと言ったが、夜に会いたいと自分が提案したのに来させるなんて申し訳ないだの、俺が行きたいだけだから気にしなくていいだの、恥も外聞もなく駄々をこねにこねてなんとか彼の天幕に入る権利をもぎ取ったのだった。
     とはいえ、解放軍の総督と参謀というどちらも忙しい立場であるため毎日とはいかず、自身の天幕に引き返して眠るまでの僅かな時間だけだ。それでも、ずっと心の奥底にしまいながらも夢に見ていた、父子として穏やかに語り合う時間ができたのが、なにより彼がそれを許してくれたのが嬉しかった。
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