HBD サーシャ今日は私にとって悲しくとも嬉しい日。私がこの世界に生まれた誕生日。
昔は祝ってくれる人がいなかったけど、今はお家の人達が盛大にお祝いしてくれる。お姉様もお義母様達も、祝い方がなんというか盛大すぎるような気がするけど……
ノックの音がして、大好きな人が入ってくる。
「あら、起きていらっしゃったのねサーシャ。」
「お姉様!」
「本日はサーシャのお誕生日ですわね。おめでとう。」
やっぱり、言葉でお祝いしてくれるだけでもすごく嬉しい。特にお姉様からの言葉は不思議と幸せな気分にさせてくれる。
「これで私が最初にお祝いできたかしら?」
「えっと…実はさっきお義父様が…」
「そうだったのね……」
一番最初に祝えなかったからか、ちょっと悔しそうな表情を隠しきれないお姉様が可愛すぎてすぐにでも抱きしめたい。
うぅ…我慢しなきゃ………
「そうだわ。本日もサーシャにプレゼントを用意しておりますの。」
「去年みたいに高そうなブレスレットとかじゃないよね…?」
「今年はちゃんとサーシャが大好きなものを用意いたしましたよ。」
何を用意したのか聞こうと思ったけど、私の口に指を添える素振りをして、晩御飯の後まで秘密と言いたげな顔でこっちを見てきたから楽しみにしておこう…今知れないのは少し残念だけど…
「それでは改めまして…サーシャ、お誕生日おめでとうございます。」
家族と晩御飯を食べた後の夜、お姉様、お師匠様、グラナーちゃんの3人が一緒に誕生日を祝ってくれた。
「私なんかが一緒にいていいんでしょうか……」
グラナーちゃんが不安そうに口を開くけど、私のお友達だし気にしなくてもいいのになって思っちゃう。
それでも私のために来てくれたのはとても嬉しいし仲良しって思ってくれてるんだなってもっと嬉しくなる。
「さて、それじゃあサーシャにプレゼントを渡しましょう。」
「最初は俺でいいか?」
お師匠様が一歩前に出て両手で持てる大きさの袋を差し出してくる。なんだかとても大きそうで、中に何が入ってるのかがとても気になる。
「戦闘詳報を基に作った戦術教本だ。是非とも役に立ててくれ。」
「戦闘詳報……?戦術…教本…?」
あまり聞き慣れない単語が出てくる。騎士団の人達はすぐに分かるのかな…?
「あー…戦闘のデータを使って作成した戦い方の極意…とでも言えばいいか?まぁお前がより強くなれるように書いた本だ。」
「これ全部…お師匠様が…?」
「三日掛けた。」
「休んでください!!!」
ピースサインをするお師匠様に若干隈が見える…三日間も寝ないでこれを作ったのかな…それとも…?
「とにかくお師匠様はゆっくり休んでください!体壊しちゃダメですから!!」
「そうか…?あまり無理はしてないんだがな…」
「お師匠様は自覚が無さすぎです!そのうち動けなくなっちゃいますよ!」
私のために準備してくれたのは嬉しいけどそれよりも体調の方が心配になる…本当に大丈夫なのかな…
「えっと……次…私でいい…のかな…?」
お師匠様を無理矢理にでもソファーに寝かしつけた後、グラナーちゃんが恐る恐る出てくる。なんだか小さな袋を大事そうに抱えていて、少し自信が無さそう…?
「あの…これ……サーシャさんが好きって言ってたサメさんのぬいぐるみ…頑張って作ってみたんだけど……」
ゆっくり開けると袋の中には手のひらに収まる大きさのぬいぐるみが二つあった。所々いびつな形をしてるけど、お店に売ってあっても全然おかしくないくらいの出来の良さに感動してる。
「グラナーちゃん…これ貰っちゃっていいの…?」
「こんなのでよかったら…ですけど…」
「ううん、嬉しいよ!ありがとうグラナーちゃん!」
このぬいぐるみ達は大切に飾っておこう。私からよく見える場所に。
「喜んでもらえてよかったです…あんまり慣れないから喜んで受け取ってもらえるか心配で……うぅ…」
「グラナーちゃん!私そんなひどいことしないよ!!それにほら!このサメさん達、すごく楽しそうな顔してる!グラナーちゃんこの子達を作るとき楽しかったんじゃない?」
「私…上手く作れた…?」
「そりゃあもう!本当にありがとうね!」
にへらと笑うグラナーちゃんを見て、不思議と頭を撫でたくなってしまう…だめだめ……グラナーちゃんは私よりも歳上なんだから……
「最後は…私ですね?」
お姉様が手ぶらでゆっくりとこっちへ歩いてくる。これってもしかして…少し前に本で読んだあの…?
「プレゼントは…この私です。」
「えっ…?お姉様……!?」
「なーんて、今のはちょっとした冗談よ。ちゃんと準備してるわ。」
そう言って魔法陣から平たい箱を取り出してくる。あの本みたいな展開になるって思ってたけど、違うようでちょっと残念…
「特製のチョコレート菓子よ。サーシャ、甘味系の物は大好きですものね。私は今でも覚えていますわ。サーシャが初めてここに来た時、チョコレートを食べて目を輝かせていらっしゃったのを。」
「わぁ…私が大好きな味しかない…!」
隅から隅まで、お気に入りの味で埋め尽くされてるチョコレートの大群を見て、思わず胸が踊る。
「サーシャの好みは把握しておりますから。これくらいは私でもできるのよ?」
「うん…!嬉しいよお姉様!ありがとう!」
「味の感想は後で、じっくりと聞かせてもらいますからね。」
もらったチョコレートを大切にしまって、プレゼントを見返してみる。どれも個性が溢れてるけ、ど全部を通して私はとても愛されているんだって思って、不思議と言葉が出てきてしまった。
「私、幸せ…」