俺がしているのは、お前の好きな人の話だが。【宗雨】「マズい……」
雨竜はそんなことを呟き歩みを速くするも、もう取り返しがつかないことは分かっていた。
これは、僕自身が選択したことだ……
でも冷静に判断したとは言い難い。その場の流れからの咄嗟の判断だった。
「どうしよう……」
後々のことを考えると、とめどなく冷や汗が流れてくる。しかし……今はひとまず現状の問題をどうにかしなければならなかった。
雨竜が後ろを確認すると、自分を追いかけてきている派手な化粧をした和服の女性が視界に入る。
「っ……うわっ!」
突然進行方向に現れた影にぶつかってしまい、雨竜が「すみません!」と謝って顔を上げた。そこにいた知っている顔に、雨竜は青くなっていく。
今考えると商業地区にいたのだから会っても不思議ではないと思うが、この時はとにかく焦っていて、頭が全然働いていなかったのだ。
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