「迎える」「送る」「ともに」 夜の海沿いの道を駆ける。
潮の匂いが濃くなるたびに、胸の高鳴りも大きくなる。
鼓動と足音が重なる。まるで一歩ごとに刻まれていく秒針みたいで、待ち合わせの時間を早めてくれている気がした。
小さい頃からずっと夢見てきた初恋の人と、今日もまた会える。
それだけで、心は軽く、体は自然と前へ前へと走っていた。
小さかった波の音が大きくなっていく。
チカチカと光る灯台が自分の背丈を越したくらいに見えた距離のところ。視界に逢いたくて堪らなかった人影が映った。
いつもの笑顔が自然と深くなる。湧き上がる感情のまま、僕は手を振り上げて声を上げた。
「館長さーん!」
人影が小さく跳ねる。その姿にまた口角が持ち上がって、駆けていた足を更に加速させる。
2015