友よ「今年も蝋梅が良い匂いだったね」
学校からの帰り路だった。なんということもない様子で幼馴染はそう言うが、園芸を趣味にするだけあって植物に詳しい幸村と違って、俺は梅と桃と桜の見分けもつかないので同意を求められたところで答えようがない。
「ばい、と言うくらいだから梅の仲間なのか」
「いや、別の種類だよ。花の時期はだいたい同じだけど」
「ややこしいな」
「それにしても、見たことないなんてもったいないなあ」
ふっくらと開く卵色の花ところころした丸いつぼみが愛らしく、香りは甘やかでありながら優しいのだと幸村は歌うように続けた。
「駅からお前の家までの道にも立派なのが植ってるのに」
「そんなことを言われても知らんものには気づきようもない」
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