【須佐鍛冶】真夜中のひとしずく「あ」
「あれ」
ほかほかと温かい湯気を顔に感じながら箸を進めようとしていたその手が宙で止まる。丑三つ時には少しばかり早い今、ベッドから起きてきた秀ノ介に真夜中の禁忌が見つかってしまい、彦道はそっと箸を戻した。
「どうしたの? お腹すいちゃった?」
「課題が終わんなくてよ……根詰めてたら腹減った」
「締切明後日だっけ? 大変だね」
「気持ちのこもってない『大変だね』やめろ」
「だって鍛冶野の自業自得だし……」
秀ノ介はキッチンで水を飲んだのち、そのまま彦道の前に座った。てっきり水を飲みにきただけでそのまま眠りに戻るのだろうと思っていた彦道は思わずえっと声を立てた。
「ん?」
「居られると食べづらいんだが」
「いいよ、気にしないで」
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