「いおくんが好き…」
顔をこれ以上ないくらい真っ赤に染めた大瀬さんに告白されたのが一週間前。
僕はその時、突然の事に戸惑って何も答えてあげられなかった。
僕にとって大瀬さんはシェアハウスの同居人、それ以外の感情など持って無かった。
その一件以来、大瀬さんは僕の前に姿を現さない。
向こうが避けてるからか同じ家にいるのに驚くほど会わないので最悪の事態も考えられたけど、僕以外の皆さんには普通に接してるみたいだった。
だけどこうも会わない日が続くと胸が苦しくなり調子が悪くなってきた。
いつから僕はこうなってしまったのだろう。
大瀬さんがいないとダメになったんだろう。
どうして僕はこうなるまで自分の気持ちに気付けなかったのか。
浮かぶのは後悔ばかり。
大瀬さんの部屋の前に立ちドアを叩けない日が続く。
会わない日が続くほど気まずくなるだけ、あと一歩踏み出せぱいいだけの事なのに。
謝りたい、自分が悪いのだから今更その先の関係なんて望んでない。
今日こそはと大瀬さんの部屋へと向かったもののやはりドアの前で立ち尽くしていた。
悶々としながら身動き出来ずにいると急にドアが開いて大瀬さんが出てきた。
「あ…」
「…え?」
大瀬さんは物凄く驚いていた。
いるとは思って無かったらしい。
「―っ!」
「大瀬さん待って!」
ドアを閉められそうになったので慌てて足を挟んだ。
「ど、退かしてよ…」
「こうでもしないと大瀬さん話させてくれないでしょ?」
挟まれている足が痛い。
でもこの足を放したらもう話をする機会が無くなる気がした。
「…自分は…もう話すことはない、から…」
「少し…本当に少しでいいから僕に時間をくれない?」
「………」
暫く待っていると大瀬さんが無言で扉を開いてくれた。
「…ありがとう」
僕は部屋に入り大瀬さんの隣に座る。
なんだか久し振りに大瀬さんを見た。
泣き腫らした目に眠れてないのか目の下の隈は前に見た時より酷い事になったいた。
顔色も良くないし少しやつれた気がする。
あの時の僕の態度が大瀬さんをこんなにも傷付けていたんだと思い知らされた。
「い、いおくん!?」
気付けば大瀬さんを抱き締めていた。
もう歯止めが効かない。
「先週は本当にごめんね。ちゃんと返事出来なくて…」
「え…?」
「あの時僕はまだ全然自分の気持ちに気付いてなかったんだ。大瀬さんに会えなくなって初めて気付いたんです」
「………」
「僕は大瀬さんが側にいないとダメみたいなんだ。大瀬さんが好きです…返事、遅れてごめんね」
今更だと思うけど僕の気持ちを伝えた。
許してもらえるなんて思ってない、でも伝えたかった。
腕の中の大瀬さんはずっと無言で俯いていたので表情は分からない。
「……遅いよ」
「……ごめん」
「…許さない」
「…ですよね。今更そんな事言っ…!?」
僕の言葉は口を塞がれた事により中断させられる。
驚く僕の腕からすり抜けた大瀬さんは挑戦的に微笑んだ後、走って逃げ出した。
まるで捕まえてみろとでも言うかの様な。
僕はその誘いにのる事にした。
捕まえて、さっきのキスの意味をはっきりさせたいと思ったから。