Brother’s breakfast「朝食にはふつう、卵だろう? ちょうどそこに卵があったからポーチド・エッグにした。それだけだ」
「じゃあ兄さんは、自分がいちばん好きな紅茶を勝手に淹れられて勝手に飲まれてもいいのか? そうじゃないはずだ。あれは何の変哲もない鶏卵だけど、僕がいま世話している動物にとっては貴重な栄養源、たんぱく質なんだ!」
僕とニュートはトランクの前で、まるで旅行前に観光順路について連れと揉めるみたく――少なくとも何も知らない人間にはそう見えるはずだ――、ぐぬぬと互いを見合って両者一歩も引かず、件の卵について口論していた。
きっかけは、共同で使っているキッチンに新鮮な鶏卵が二個、置き去りにされているのを見た僕がそれを使って朝食を作っただけのこと。
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