ミラーリング #2(カルデア編) 扉を開ければ、パチパチと炉ばたで燃える温かい火。
焼いたパンと、山羊の乳の匂い。
刺繍の手を止めて、彼女が顔を上げる。
一歩を踏み出せない自分を見つけて、その美しい目が細められる。
椅子から立ち上がり、白くて細い手を差し出しながら彼女は微笑む。
──おかえりなさい、猛犬さん。
***
「どおいうことぉぉぉっっっ!?!?!?」
マスターがすっとんきょうな声を上げた。隣ではマシュが「先輩、落ち着いてください!」と必死になだめている。
マスターたちの前では、召喚されたばかりのランサークラスのクー・フーリンが、戸惑ったように立ち尽くしていた。
かの英雄の象徴ともいうべき赤い槍を両手でぎゅっと握りしめ、不安そうな顔であたりを見回している。
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