ミラーリング #13(ディアドラの悲劇編)ディアドラの悲劇
「じゃあ、行ってくるわね。遅くはならないと思うわ」
「ああ」
戸口に立ち、クー・フーリンはエメルと口づけを交わした。
迎えに来た御者に軽くうなずきかけ、しっかりとマントに身を包んだ妻が出ていくのを見送る。
エメルは、ときどきこうして貴族の館に出向き、娘たちに刺繍を教える仕事をしていた。
妻の姿が見えなくなると、クー・フーリンも自分の館に取って返した。
エメルが用意してくれた昼食の包みと皮の水袋を取り上げると、召使いたちに留守中の指示を飛ばした。万事整えてから、外で待っていたロイグの元へ走っていく。
「そこまで!」
朗々とした声とともに、威勢のいい返事が響き渡った。クー・フーリンは満足そうに腕を組む。
19891