転生したら、2次元の大好きな漫画の世界に来ちゃいました「あぁ、アタシ…人生…終わるのね………」
決して良い人生とは言えなかったけれど、それでも好きなことをして生きてきたし、悔いはないかな…なんて思って、アタシはそっと瞼を閉じた。
思い残すことがあるとすれば、母と父や妹達に、アタシの部屋の整理を任せるのは忍びないかなってのと、妹よ!アタシのデータは消してくれ!との思いくらいだ。
『ここで速報です!◯◯へ向かうバスが、山道を走っているカーブエリアの所で、落石にあい、転落したとのことです。乗っていた乗客から運転手まで、約15人の内重症、死亡とみられます。現場では、今救出作業とのことで、詳しい状況は分かっていまけん~』
25歳の若さで、アタシは転落事故で人生の幕を閉じた。
◆◆
パチリ。
目を覚ますと、何故かアタシは小屋の様な所に居た。
ーえ?!アタシ死んだんじゃないの?え?生きてる?
瞳だけをキョロキョロと動かしてみても、どう見ても木製の天井に壁。匂いからして古風な感じの、田舎のお婆ちゃんの家の匂いのようで。
生きているなら病院のはずなのに、何故こんな古めかしい所に自分は寝転がっているのかと、アタシは混乱を極めた。
「起きたか?」
パチパチと火の音がする。そこへ低い男の人の声がした。
ー人が居る?!
アタシはガバリと上体を起こした。が、フラリと眩暈がして頭を抱える。
「これ、そんなに急いで起き上がるでない。気絶していたんだ。ゆっくりで良い」
ー………待って?この声の人。凄く良い声……てか、聴いたことある声なんですけど?!嘘でしょ?そんな…この世にあの声優さんの声と同じ人いるの?!
頭を抱えていたアタシは、恐る恐る声の主の方へと視線を向けた。
「起きたのなら、飯を食うか?腹が減っているだろう」
アタシは驚愕で目を見開いた。
そこに居たのは、赤い天狗の面を着けた老人だったからだ。
それに服装。まるで水の様な、雲の様な模様の服。見たことがある服装。
ー嘘でしょ?!何で!?どういうこと!?だってこの人…
「………これは申し訳ない。無礼でしたかな?儂は元水柱の鱗滝 左近次と申す者。そなたは…確かつい最近16という若さで柱になられたばかりの、氷柱殿とお見受け致したが…違っていただろうか?」
ー………………は?は?
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ??!!」
どうやらアタシは、死んで転生した先が、あの大好きな漫画の世界だったらしい。
今流行りの…?でもあれってゲームの世界とかじゃないの?
嘘でしょ?アタシの製作活動の源なんですけど?!
そんなことってあるぅぅぅぅう??!!
アタシは頭を抱えて絶叫した。
けれどもこれは夢かもしれないと、はたと思い直す。
これは都合の良い夢で。本当はもう死んでるとか。と考え直したアタシは、転生とか馬鹿な考えは捨てて、とりあえず楽しもうと思い出した。
なにせこの世界は、アタシの大好きな漫画の世界。
しかも、アタシの夢見たことが起こるかもしれない!
そう思うと、アタシは俄然この世界に生きる気が出てきた。
それから冷静に…と努めて、今がどの辺りの物語なのかを知る為に、アタシは鱗滝さんと話す為に向き直った。
が、そこではたと気づく。
「…………え?今、アタシのこと何て?氷柱?って言いました?」
しかも16とか言ってなかった?16?16歳ということだろうかと、また頭の中がごちゃごちゃになる。
「あぁ。そう聞いた」
「そう………ですか…え?ここは…?」
「狭霧山だ」
「あ、ですよね…え?ここには鱗滝さん1人ですか?」
「いや…修行に出ている者が2人おる」
「2人………」
「あぁ。もうすぐ帰って来るはずだ」