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    まえだ

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    まえだ

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    幸せの日々続編

    #さねぎゆ

    幸せの日々 其の参あれから早いもので、更にまた1年経つと俺、こと不死川 玄弥も小学6年生になりした!



    それぞれの未来



    そして秋の行事と言えば、学園祭!

    あ、因みに運動会は5月に終わりましたよ。この辺りは5月に変わったんですよね。兄ちゃんも義勇ちゃんも来てくれて。父ちゃんや母ちゃんと蔦子姉さんまで総出でちょっと恥ずかしかったけれど、嬉しかった。ちょっと兄ちゃんや父ちゃんの声援で周りが引いてたけど、凄く楽しかったです。

    そんな訳で、小学生には関係ないけど学園祭です!
    兄ちゃんと義勇ちゃんの通う高等学校は、一般の人も入れるようになってるので俺達弟妹で行くことになりました。1番下の就也もあんなに小さかったのに、今じゃあ3歳だしね。でもまぁまだまだ小さいから抱っこ抱っこしてして!な甘えん坊だけど。今正に俺が就也を抱っこしてるけど。
    そんな就也も一緒に6人で、いざ!兄ちゃんの高校へ!と意気込んで来ました。
    義勇ちゃんの情報によると、お洒落なカフェをすると言っていたので、お昼ご飯も兼ねて兄ちゃんのクラスへと一直線に行こうと思います。
    因みに今日は俺達の小学校は創立記念日とかで休みです。たまたまですよ、たまたま。
    受付をしてから入る時に校内地図やそれぞれの学年クラスの催しが書かれたパンフレットをもらったので、その地図を見ながら兄ちゃんの教室を目指します。
    学校に着いたことは兄ちゃんに連絡済みだし、着いたら直ぐに兄ちゃんの教室に来るように言われているので、ことや弘がどこかへ行こうとするのを阻止して進みます。寿美や貞子はきょろきょろと楽しそうに周りを見ながらも、一緒に地図を見て不安そうな俺に「あってるあってる、あっちあっち」とやっぱりことや弘の走り出そうとするのを阻止しながら手伝ってくれます。本当に家では生意気な妹達ですが、しっかりしてるのでこういう時に頼りになる妹達です。

    「そういえば、寿美。錆兎も来るって言ってた?」
    「え?聞いてない。来るの?」
    「たぶん。義勇ちゃん、誘ったって俺聞いたけど」
    「じゃあ、じゃあ!真菰ちゃんも来るかな?!」
    「俺に聞くなよ…来るんじゃない?」

    真菰ちゃんは鱗滝さんの所に錆兎と一緒に住んでる寿美と同じ学校で同じ学年の子だ。義勇ちゃんと仲が良くて、寿美と貞子も凄く仲良しである。
    寿美と貞子が俺の言葉を聞いて、来てるかもしれないと分かると、早く早くと急かすのであっという間に兄ちゃんの教室に着きました。

    「あ、ここだ」
    「ここ~?」
    「あ!あれ義勇ちゃんだよ!」
    「お~お~!来たかぁ~お前らぁ!」
    「え?!天ちゃん!?ヤダ!かっこいい~!!」
    「だろぉ~?俺様は何でも似合うからな」

    こっそり覗いてるつもりが、どうやら宇髄さんにはバレたようで、直ぐに駆けつけて来てくれました。
    寿美と貞子が宇髄さんの姿を見てキャーキャー煩いです。でも気持ちは分かる。お洒落なカフェで見かける白のシャツに黒のウエストエプロンで黒パンツスタイルなよくあるカジュアルな感じなのに、様になっていて男の俺から見てもかっこいい!ナチュラルに着こなしてる!流石自称祭の神。と俺が思っていると、騒ぎで気づいたらしい義勇ちゃんがこちらにやって来ました。

    「玄弥。来てくれたのか…」

    そう声を掛けられてから気づいた俺は、義勇ちゃんを視界に入れた瞬間、ヒュッと息を飲んでしまいました。

    「………玄弥?」
    「そ、その格好…」
    「あぁ、女子はこれなんだ…実弥は短い短いと怒っていたが…やっぱり変だろうか?」

    もじもじと足を擦り合わせて恥じらう義勇ちゃんに、俺は兄ちゃんの怒りが分かった気がします。そして俺は鼻血が出そうです。
    なにせ義勇ちゃんの言った女子の服装は、宇髄さんと似たような感じにはなっているが、シャツの上からぴっちりした黒のベストにウエストエプロンがかなりショートな上に黒のプリーツスカートが下着が見えるのでは?という程の丈なのだ。そして靴下はいつも義勇ちゃんが学校に履いていく足首より少し上位の長さなので、義勇ちゃんの綺麗な美脚の生足が!ベストもぴっちりだから胸の強調が!ぴっちりなお陰で腰の細さも強調されてる!となんだかくらくらしてきた。

    「へ、へんじゃないヨ…」

    なんとか絞りだしてそれだけ伝える。けれど、情けないことに義勇ちゃんを見て俺同様弟達もまだ小さいというのに真っ赤にして固まっている。唯一寿美と貞子と、3歳児の就也だけは。

    「やば…義勇ちゃんエロ…」
    「義勇ちゃん。ちゃんと下に何か履いてる?」
    「い、一応…」
    「ぎゆちゃ、かぁいーねー?」
    「ありがとう、就也」
    「おいおい、冨岡ぁ。お前は刺激強すぎなんだってぇ~。おーい、不死川ぁ~!チビ達来たから、もう冨岡と休憩行けよぉ~」

    固まった俺達を見て、宇髄さんが気を利かせてお兄ちゃんを呼んでくれました。
    教室の黒板がある側にスペースが少しあって仕切りが立ててあり、その向こう側は見えなくなっている。その中でどうやらクラスの人達がドリンクや食べ物を用意しているようだった。そこに1箇所仕切りがない出入りする為の所に暖簾がしてある。
    そこから「あァ?」と気怠そうに兄ちゃんが顔を出しました。

    「おゥ、玄弥ァ。皆も来てくれたのかァ!」

    兄ちゃんは俺達を見ると、途端に笑顔になってこちらにやって来ました。その兄ちゃんも、宇髄さんと同じ格好をしていて、とても似合っています!兄ちゃんの場合、胸元凄い開いてるけどぉ!

    「実兄ぃ!中に居たの?」
    「おゥ、貞子ォ。兄ちゃんなァ、軽食作る係なんだァ」
    「ま、不死川は料理できるし、この強面だからな!」
    「うっせェぞォ、宇髄ィ…」
    「でも似合ってるよ!実兄!」
    「そ、そうかァ?ありがとなァ、寿美ィ」

    わしゃわしゃと兄ちゃんが貞子や寿美の頭を撫でていく。

    「ん。実弥が1番かっこいい…」

    ドヤ顔で言う義勇ちゃんにも、兄ちゃんは「ハイハイ、ありがとよォ」と撫でて。

    「俺も実兄のご飯食べたい!」
    「こと。家でいくらでも食えるだろォ」

    兄ちゃんの腰に抱きついたことも撫でて。

    「実兄はいらっしゃいませしないの~?」
    「しねェなァ。弘が俺の変わりにしてくれっかァ?」
    「いいよぉ~?」
    「いいのかよ」

    ブハッと笑いながら弘も撫でる。最後に就也と俺に向き直って撫でてくれる兄ちゃん。

    「就也もよく来てくれたなァ。ありがとなァ」
    「ふへへ」
    「玄弥。お前もこいつ等連れてきてくれてありがとなァ。大変だったろォ?」
    「大丈夫だよ。寿美と貞子が手伝ってくれたから」
    「「えへへ」」
    「流石!不死川家の女は頼りになるなァ。ははっ」

    クラスの皆が、兄ちゃんの穏やかな雰囲気に驚いているのが分かる。いつもそうだ。家族にしかこんな穏やかな表情しないらしい。兄ちゃんの運動会を見に行ったら、よく周りが驚いているのを見るので、もう慣れたけれど。やっぱりちょっと優越感。俺の兄ちゃん、超ぉ~超ぉ優しいんだぜ!ってなる。えへん!
    すると宇髄さんが何やら弟妹達に話しかけ始めたので、兄ちゃんは片手に持っていた物を義勇ちゃんの正面に立って何かし始めた。

    「実弥?」
    「いいからじっとしてろォ」

    どうやら兄ちゃんは、学校のジャケットを持って来ていたようで、義勇ちゃんの腰に巻いた。スカートよりも長い兄ちゃんのジャケットのお陰で、なんだか俺もホッとする。
    けれど、教室内に居た男の視線が兄ちゃんを睨むようなものに変わったのは、義勇ちゃんを厭らしい目で見ていたということなので、兄ちゃんの行動は正しい。よって俺も義勇ちゃんの腰に巻きつけ終えた兄ちゃんと共に、義勇ちゃんの背後にいる連中に睨みを効かします!
    勿論、義勇ちゃんはそんな男共の視線には気づいていないので、義勇ちゃんに気づかれないように睨みます!
    すると父ちゃん譲りの強面眼力のお陰で、ささっと男共は目を逸らしました。
    義勇ちゃんは兄ちゃんのだ!100年前からね!!とふんすと勝ち誇る俺に、腕の中にいる就也が不思議そうにして首を傾げた。因みに義勇ちゃんも就也みたいに不思議そうに首を傾げて兄ちゃんを見てた。3歳児と同じ行動!

    「にーに、だっこぉ~」
    「ん?何だァ?就也ァ。玄弥だけじゃなくて、俺にも抱っこしてほしいのかァ?」
    「ちてぇ~」
    「はいはい」
    「ごめん、兄ちゃん。いいの?」
    「大丈夫だァ。その代わり、帰る時はまた頼むなァ?玄弥ァ」
    「うん」
    「そんじゃ、行って来いよ!昼飯もついでに食べて来な」
    「宇髄は行かないのか?」
    「え?天ちゃん行かないの?」
    「俺は休憩まだだからなぁ~」
    「え~?」

    寿美や貞子、弘が宇髄さんにくっついてブーブー言ってると、クラスの女の人が宇髄さんと兄ちゃんに「明日名一杯働いてくれるなら、今日のところは一緒に行って来ていいよ」と言ってくれたので、宇髄さんも一緒に回ることになりました。
    俺達と義勇ちゃんと兄ちゃんで、その女の人に丁寧にお礼を言って頭を下げました。

    さて、出発です!

    と歩いていると、兄ちゃん達が着替えてないので凄く注目を浴びてます。ちょっと恥ずかしい。いや、凄い恥ずかしい!

    「………義勇?実弥?玄弥も?」
    「あ、寿美ちゃんも貞子ちゃんもいるね!」

    宇髄さんと兄ちゃん達でどこで飲み食いするかを話ながら歩いてる時。どこからかそんな声が聞こえてきた。

    「錆兎!真菰!」

    直ぐに気づいたのは義勇ちゃんだ。そしててちてちと寄って行くけれど、錆兎が義勇ちゃんの姿を見て絶句している。分かるよ。俺もそうだったからね!
    幾ら兄ちゃんのジャージを腰に巻いてたって、前からはあんま変わらないからね。

    「わぁ~義勇~。凄い格好だね?」
    「?そうか?」
    「さ、実弥!!これはいいのか?!!」

    錆兎が凄い形相で兄ちゃんに聞く。
    その隣でやっぱり義勇ちゃんはよく分かってなくて、首を傾げていた。

    「おゥ、錆兎。来てくれたンかァ…それなァ、俺のクラスの女子全員だからよォ、阻止しきれなかったァ…」
    「こいつ、すげぇ怒声響かせて拒否ってたぜ!でも却下くらってんの!ギャハハッ」
    「笑いごとじゃねェんだよ!宇髄ィ!クラスの野郎共と手ェ組みやがってェ…!」
    「な?!宇髄!義勇に何かあったらどうするつもりだ?!」
    「だーい丈夫大丈夫ぅ!冨岡にはこんなこわーい顔のナイト様が常に傍にいるんだからよぉ!」
    「………それはそうだが…」
    「オイ、錆兎!諦めんな!俺は料理係だから常に一緒じゃねェ!もっと加勢しろォ!」
    「どういうことだ?宇髄?」

    また始まった…宇髄さんが義勇ちゃんにちょっかいかけたりすると、錆兎と兄ちゃんで宇髄さんに詰め寄るのはいつものことです。錆兎は前世で義勇ちゃんの兄弟子だったこともあって、1番は義勇ちゃんの味方なのでこうして兄ちゃんに加勢することも多々あるけれど。兄ちゃんが義勇ちゃんを泣かせた時の錆兎は凄く恐い。兄ちゃんでも容赦なく錆兎は説教をします。本当に恐いです。まだ俺より年下で寿美と同じ小学3年生なのに、貫禄があります。
    だけど俺は知っているのです。そんな錆兎も、実は義勇ちゃん達と今話してる真菰ちゃんには弱いことを。つまり最恐は真菰ちゃんだったりするんだよなぁ。

    そしてそんな時でした。

    「ねぇねぇ、あれ、双子?かわいー!誰か兄弟がいるのかなー?」
    「すごくそっくり!」

    そんなお姉さん方の声が聞こえたので、ふとその双子の方を見たのです。

    「…………………………時透?」

    小さな声で呆然とそう呟いたけれど、どうやら相手には聞こえていたようで、俺に気づくと双子の片割れが驚きと喜びを混ぜた表情で飛びついてきた。

    「玄弥ぁ~!!」

    その声に驚いた皆が、一斉に俺達を見て、

    「は?時透!?」
    「え?時透なのか?!」
    「時透!!」

    兄ちゃんと宇髄さんと義勇ちゃんが駆け寄ってきて俺を巻き込んで抱きついた。苦しい!!

    「ねぇ、無一郎と玄弥が死にそうだよ。離れてよ」

    その様子を見ていた双子のもう1人が、そう言って助けてくれました。

    「義勇、知り合い?」
    「あぁ!真菰、聞いてくれ。この子は最年少で柱になっていた時透だ」
    「やっと会えたなァ!久しぶりだな、時透。元気にしてたか?」
    「うん!見て!今は兄の有一郎も一緒なんだよ!」
    「初めまして。兄の有一郎です。皆さんのことは、無一郎から色々聞いてます」

    ペコリと頭を下げてくれたのは、本当に見分けがつかない程そっくりな兄だった。
    一応、前世のことは弟妹達は知らないので、既にヤバいけれどこれ以上は駄目だろうと、再会で嬉しいけれど俺がストップをかけます。

    「兄ちゃん、義勇ちゃん。俺達お腹空いたから…先に錆兎達と行ってていい?」
    「あ、あァ、そうだな…」
    「玄弥?」

    無一郎がどうしたの?と言いたげな表情をしているけれど、ごめん。今はちょっと無理なんだ。

    「あー…なら、冨岡達は先に行っといてくれるか?さっき話してた胡蝶の所でパンケーキ食うだろ?」
    「あァ、悪ィ」
    「錆兎、真菰、行こう。時透、またな」
    「え?あ、うん…」
    「義勇ちゃん、もういいの?」
    「あぁ」

    そうして俺達は、本当は俺ももっと話たかったけれど、その場を後にしました。きっとまた違う日に集まる計画を、宇髄さんならしてくれるだろうから。


    ー一方残された3人。

    「………どうして…玄弥…」
    「あー…それはなぁ…」
    「………もしかして、知らないの?弟妹達。あれ、たぶん不死川 玄弥の弟妹達だよね?」
    「え?そうなの?」
    「おぅ!よく分かったなぁ?有一郎!」
    「分かるよ。似すぎ」
    「プハッ!だよな!なんかお前、初めて会った気がしねぇわ」
    「じゃぁ、不死川さんも、今度は兄妹達と一緒になれたんだね」
    「あぁ、そうなんだよ。お前等も、一緒になれて派手によかったな!」
    「うん!」
    「まぁ、そういう訳でな?あれ以上はチビ達の手前、話せなかったから、また今度違う日に話そうぜ?あ、前世の話無しなら、今からでも一緒で大丈夫だけどよぉ…お前等、2人だけで来たのか?兄とか姉がいんのか?」
    「ううん。いないよ」
    「知ってた?この学校、たまたま知ったんだけど、理事長が産屋敷って人なんだよ」
    「あぁ!それで来たのかぁ?今日はド派手な祭だから、一般人も入れるからな!」
    「文化祭でしょ?」
    「言ったじゃん、有一郎。宇髄さんは、祭好きだって!宇髄さんからしたら、こういうのもド派手な祭なんだよ!」
    「そうそう!なんせ俺様は、祭の神だからな!んじゃ!前世の話無しで、皆と合流すっか?なんせ、この学校には、まだまだいるぜぇ~?」
    「ほんと!?炭治郎も!?」
    「え…あー…竈門は…どうだろ?」
    「え~?何それぇ~!」
    「後で冨岡に聞いてみっから、お前等時間大丈夫なら合流するぞぉ~」
    「「はーい」」



    それから暫く胡蝶さんの所でパンケーキを皆で食べていると、時透と宇髄さんが来ました。どうやら弟妹達のことを話してくれたようで、前世の話はしませんでしたが、胡蝶さんや前世の柱の人達に会う度に時透と泣きながら抱きあって再会を喜んだので、弟妹達は若干引き気味でした。
    そして分かったことがありました。
    時透はなんと!不死川家の次女の貞子と同じ小学1年生でした!
    しかも、今度から転校してくるようで、同じ学校になるそうです。

    こうなると…俺の師だった悲鳴嶼さんにも、いつか会えそうな気がします。

    その後の学園祭では、お化け屋敷をしていた煉獄さんと伊黒さんと甘露寺さんの教室に行くと煉獄さんの弟の千寿郎くんもいて、炭治郎と襧豆子もいました。感動の時透との再会を果たして。もの凄い人数になりながらも、俺は高等部という未知な場所でなんだかそわそわしながらも、兄ちゃんと義勇ちゃん達と楽しい学園祭を過ごしました!



    ーその日の夜。

    「兄ちゃん、寝た?皆」
    「おゥ。お前も寝ろよ。明日学校だろォ?」
    「うん。今日は楽しかったね!無一郎にも会えたし」
    「そうだなァ…後は、悲鳴嶼さんに会いてェなァ…」
    「!」
    「何だァ?そんな顔して…」
    「だって…俺も同じこと思ってた…」
    「そうかィ………悲鳴嶼さん泣くだろうなァ…」
    「え?何で?会えたから?」
    「俺とお前のこと、悲鳴嶼さんすげェ気にしてくれてたからなァ…特にお前な」
    「っ………うん…優しい人だったもん…」
    「今はこんなに仲良くやってますって、見てほしいなァ…」
    「うん………でも、きっと会えるよ。無一郎達だって、お館様の名前を見てこっちに来たって言ってたし。きっと、悲鳴嶼さんも…」
    「そうさなァ…会えるの楽しみだな」
    「うん!」





    2





    それから無一郎も俺の家に炭治郎達と遊びに来たり、兄ちゃん達や宇髄さん達とでも出かけたりして、いつも以上に賑やかに過ごしながらも、あっという間にまた1年が経って、俺は中学生になりました。

    でも兄ちゃん達は高校3年生。受験生です。

    そんなお正月。といっても3日なんだけど。

    「「「明けまして、おめでとうございます」」」
    「あけおめぇ~ことよろぉ~」
    「おめでとうございます。今年も宜しくお願いします」

    義勇ちゃんが鱗滝さんの所へ挨拶に行くというので、着いてきました。不死川家7人兄弟に、何故か宇髄さんと善逸も着いてくるという謎の集団。けれど、錆兎達との仲もあって、この集団でも鱗滝さんは受け入れてくれる。俺なんて、前世では会ったこともなかったしな。
    本当は新年の挨拶もだけど、実は蔦子姉さんが紹介したい人がいるからと、今日鱗滝さんの所へ来るらしいから俺達も来たのです。

    鱗滝さん夫妻は、前世から義勇ちゃんとの繋がりもあって義勇ちゃんが誕生した時から仲が良かったらしく、冨岡家とはご近所さんだったとか。義勇ちゃん達の両親が死んで俺達の家の隣に越して来るまで色々なことを面倒見てくれていたらしいのです。だから、蔦子姉さんにとっても鱗滝さんは父親代わりになります。

    その蔦子姉さんが"紹介したい人"とは誰なのか、と義勇ちゃんと兄ちゃんがそわそわしながらも、見定めてやる!と朝から意気込んでいて。いや、正確にはお正月に紹介したい人がいると、蔦子姉さんが言ってからだ。
    実はこう見えて蔦子姉さんはずっとつきあってる人がいたらしいが、余りそんなところを見せなかった。なぜなら、過激派の義勇ちゃんと兄ちゃんがいたからだ。
    1度よく出かけて行くようになった蔦子姉さんに、誰と行ってるのか義勇ちゃんが前に尋ねたことがある。義勇ちゃんが中学生3年くらいの頃だから、蔦子姉さんは大学生だ。
    「彼と…」と照れながら言う蔦子姉さんのデートに、義勇ちゃんと兄ちゃんが尾行したのは言うまでもない。デートに行く度に遅くならないように蔦子姉さんに言い寄る姿も。その猛攻撃に辟易した蔦子姉さんは、暫くするともうつきあってないと言って出かける回数が減り、それから彼氏がいるような素振り1つも見せなかった。
    それが今回の"紹介したい人がいる"なのだから、義勇ちゃんも兄ちゃんも闘志を燃やしているし、なんなら錆兎もなんかそんな風に見える。
    俺達も蔦子姉さんのこと大好きだし家族のように思ってるけど、兄ちゃんや義勇ちゃん程じゃない。まぁ、見定めるつもりはあるけど。でもきっと蔦子姉さんのことだから、変な人に引っかかってるとか思わない。弟妹達は、たぶんまだよく分かってないんじゃないだろうか。

    約束の時間はお昼の12時。ご飯を一緒に食べることになっています。
    鱗滝さんの奥さんと真菰ちゃんや寿美と貞子で、おもてなしのための料理を楽しそうに準備しています。
    義勇ちゃんはそれどころじゃないから、そわそわそわそわしながら部屋の中をてちてちぐるぐる歩き回っている。

    「で、何で無一郎と有一郎も来たの?」

    実はさっきチャイムが鳴ったので、義勇ちゃんが物凄い勢いで玄関の扉を開けに行ったのだが。開けた先に居たのは蔦子姉さんではなく、炭治郎と襧豆子、無一郎と有一郎でした。
    まぁ、そもそも蔦子姉さんとの約束の時間までには後1時間あるんだけど。

    「え?だって、炭治郎が行かなきゃって言うから…」
    「炭治郎の家に挨拶兼ねて遊びに言ったら、急に…」
    「すまん。待つ間耐えきれなくて…俺が炭治郎に連絡してしまった…」

    そう言うのは、兄ちゃん義勇ちゃん同様に、そわそわして座っている錆兎だ。さっきからお茶を飲む回数が多いし、トイレに行ったり来たり。
    因みに隣に座っている兄ちゃんの貧乏揺すりは止まりません。無駄に舌打ちもさっきから凄いしてるし。

    「いや、呼んで正解だァ…炭治郎」
    「はい!」
    「分かってるな?お前の鼻、頼りにしてるぞォ…」
    「任せて下さい!前世同様、落ちぶれてません!」

    兄ちゃんがシィァァァァア…と前世の時の呼吸の音を口から吐き出す。俺はビクリと肩を跳ねさせた。だって前世の兄ちゃんを思い出したからだ。あの頃の兄ちゃんは柱で恐かった。俺が何を言っても、突き放されていたあの頃。本当は全て、俺を想ってのことだったけど。

    「落ち着きなさい。4人共」

    ピシャリと鱗滝さんの声がリビングに響く。別に怒鳴った訳でもないその静かに諭すような声音に、4人が動きを止めた。
    義勇ちゃんは、その場で足を止めて俯いたまま。錆兎は、コップを持ってこねこねしていた手を。兄ちゃんは貧乏揺すりと呼吸を。炭治郎は警戒態勢に入っていた動きを。(と言っても、キリッとした顔に背後に黒々としたオーラ?を吐き出していただけだけど)
    そんな4人の様子を、やれやれ…といったように見た真菰ちゃんと襧豆子。
    水の呼吸の一門は、仲が良いなー…と俺は眺めていた。本当に鱗滝さんがお父さんみたいだ。
    って、あれ?兄ちゃんいつから水の呼吸の一門になったんだっけ?

    「ねぇねぇ、玄弥」
    「ん?」

    そんな時に、こそこそと無一郎が俺の服の袖をちょんちょんと引っ張って話しかけてきました。

    「玄弥も見たことないの?その、冨岡さんのお姉さんの彼氏さん?」
    「うん。蔦子姉さんね。そんな素振り、今までなかったよ」
    「ふ~ん…」
    「ていうか、実弥さんは分かるけど。なんで炭治郎も錆兎くんもそわそわしてるの?」

    有一郎の質問は最もだ。義勇ちゃんが皆で無一郎達との再会を祝して集まった日に、錆兎も居たから簡単に説明はしたみたいだけど。今世では、家族ぐるみで仲良くしてるとは言ってないのかな?まぁ、口下手な義勇ちゃんの説明だからな。

    「錆兎のことは、義勇ちゃんから何て?」
    「え?前世での親友で、兄弟子だったって。最終選別で死んだとしか…」
    「それだけ?」
    「うん…」

    やっぱり義勇ちゃんだ。凄いざっくり。

    「そうだけど。今世では、義勇ちゃんと鱗滝さんは家族ぐるみで昔から仲が良かったんだよ。だから、蔦子姉さんとも仲良しなんだよ」
    「へぇ~、そうなんだ!」
    「なら、炭治郎は?」
    「ん~…炭治郎はまぁ、兄弟子のお姉さんだから?かな?水一門の絆的な?」

    あれ?ほんとだ。炭治郎も錆兎や義勇ちゃん達と仲が良いけど。家族ぐるみだっけ?
    炭治郎の家はパン屋さんで家族で色んなお客さんと仲良くしてるからなぁ。蔦子姉さんのことも知ってるけど。
    でもまぁきっと、水の呼吸一門の繋がりもあるだろうな、と改めて聞かれると分からないもんだなぁと俺は思いました。

    「義勇。座りなさい」
    「はい………」

    鱗滝さんにそう言われて、てちてちと義勇ちゃんが座りに俺達の所へやって来ると、義勇ちゃんはそれでもまだ落ち着かないのか、鱗滝さん達の前では絶対に座らない兄ちゃんの胡座をかいた脚の間にちょこんとお山座りをした。

    「ぎ、ぎゆ?」

    兄ちゃんが珍しく狼狽えている。兄ちゃんにとって鱗滝さんは、嫁の父親的な感じだからそういうの控えたいんだろうな。まぁ、俺達からしたら通常なんだけど。麻痺してるな、とは思う。後、意外と鱗滝さん気にしてないよって兄ちゃんに言いたいけど、まぁいいか。
    ずるる…と鱗滝さんは穏やかにお茶を呑んでいる。そしてキッチンでは楽しそうにお昼ご飯を作っている女子達。鱗滝さんに落ち着けと言われてお通夜の様な水一門と兄ちゃん。そんな4人を見ていて肩を震わせてぷるぷる震えてる善逸と宇髄さん。もういっそ笑ってあげた方がいいのでは?でも鱗滝さんの手前、宇髄さんも大人しくしてるんだろうな。

    俺達はというと、鱗滝さんの前では弟達も大人しいのです。その異空間を順番に見渡して大人しく座っています。鱗滝さんが時々、みかんをことと弘と就也に剥いてくれて食べたりしてます。無一郎や有一郎にも剥いてくれて、鱗滝さんは優しいです。剣道ではめちゃくちゃ厳しいと聞いてますが、そんな厳しい人に普段は見えません。
    あ、因みに俺は、剥いたり剥いてもらったりです。前に自分で…と断ると、しゅんとする鱗滝さんに「あ、ごめん!じいちゃん…」と言っちゃったことがあってめちゃくちゃ恥ずかしくて。今世では鱗滝さんまだ40代なのに、おじいちゃんだなんて失礼だよな、と焦っていたけど、優しく微笑んでくれて。それから鱗滝さんは剥く前に自分で剥くかどうか聞いてくれるようになりました。

    そうして各々に過ごしている内に、あっという間に約束の時間がやったきました。

    ピンポーンというチャイムが鳴るとやっぱり一目散に義勇ちゃんが凄い勢いで出ていきました。
    それから挨拶をしているような声がここまで聞こえてきます。あ、いつの間にか鱗滝さんの奥さんも玄関に行っていたようで、4人の話し声が段々とこっちのリビングに迫って来ました。
    それに合わせて鱗滝さんがゆっくり立ち上がると、ざっと勢い良く兄ちゃん達が立ち上がる。恐いよ。
    兄ちゃん達が扉を睨み、何やら緊張感のある雰囲気です。鬼でも来るのかな?

    ガチャリ、とリビングに入る為の扉が開いた瞬間に、兄ちゃん達からゴクリと唾を飲み込む音が聴こえてきました。だから、無惨でも来るの?
    チラリと耳の良い善逸と宇髄さんを見ると、善逸は引いていて、宇髄さんはワクワクとこれから起こることに扉と兄ちゃん達へと交互に世話しなく目線が動いていました。
    兄ちゃん達を止められるのは、やはり鱗滝さんだけのようです。

    扉の向こうから蔦子姉さんの後に続いて男の人が姿を見せました。
    とってもおっとりとした男性で、蔦子姉さんと雰囲気が似ています。
    鱗滝さんの姿を認めると、男性がぺこりと頭を下げて、

    「初めまして。蔦子さんとおつきあいさせて戴いております。岸田 公平と言います」

    と丁寧に自己紹介をしてくれました。
    炭治郎と錆兎が、警戒心剥き出しです。
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