打ち上げの場というのはとかく賑やかで喧しくて秩序もくそもなにもないものである。それが開始から三時間も経っていれば尚更だ。
だから、それなりに離れた場にいたにも関わらずトイレから帰ってきた羂索にその声が聞こえたのは、ひとえにその声が髙羽のものだったからであるし、なによりも聞き捨てならないたぐいの話だったからである。
「おまえもなあそろそろいい年だし、いい子とかいないのか?」
「あー、……そっすね、ええっと」
髙羽の隣にいたのは先日結婚したばかりの先輩芸人だった。下積み時代から支えてくれた姉さん女房。どれだけ彼女に苦労させてどれだけ彼女に支えられたか。苦労ばかりさせたにも関わらずプロポーズにはいと言ってくれた彼女。いまの自分がいるのは彼女がいるからで、そんな彼女と結婚できた自分が如何に幸せ者か。
15019