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    iinetobokuma

    @iinetobokuma

    かいたものをおいていきます

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    iinetobokuma

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    ヴィテとヒロテが茶をしばく話。
    とりあえずヴィに高い打点で紅茶を淹れて貰おう、で書き始めました。

    白亜のお茶会 眩しいな、という感想がまず浮かび上がった。
     白い部屋だ。
     壁も床も、窓枠の隅までも、全てが白。
    カーテンも当然白く、この空間では銀のカーテンレールすら白く見える。
     そんな空間では家具も全てが真っ白…かと思いきや、椅子やテーブル、戸棚は柔らかなウッドベース。座面に置かれたクッションはオフホワイトに抑えられており、眩さすら感じる明るさの中にも過ごしやすさが担保されるこの部屋の主のこだわりとバランス感覚が見て取れる。
    「ああ、もう少し待っていてくれ!君には取っておきを味わって欲しいんだ…!」
    「はあ…お構いなく」
     手持ち無沙汰ならそこの本はどうだろう、ヒーローなら気に入るはずだ!と部屋の主から朗らかな声。本棚に目を向ければ全て異国語。
    「…日ノ本言葉の本を置けよ」
     ヒーローと呼ばれた客人は悪態ひとつ、拗ねたように目を逸らした。



     部屋の主はヤカンを鼻歌混じりに持ってきた。銀色のそれは綺麗に手入れされており、それでいてしっかりと使い込まれているのが見て取れる。
     ぴかぴかの硝子のポットに湯を注げば茶葉がふわふわと花弁のように開いていく。それを確認するとヴィランは満足げに笑み、机に茶会の準備を進めていく。
     手持ち無沙汰にソファに寝っ転がってクッションを天井へ投げていたヒーローも、紅茶の香りにつられて起き上がる。
    「おぉ…えめっちゃオシャレ。ガラスなんだ」
    「そう。花弁のように茶葉が開いていく所をどうしても見てみたくてね。一目惚れさ。
     そうしたら似合うカップを、しまう戸棚を、ティーセットを置く机を、机に合う椅子を、と変えたくなっていって」
    「…え!この部屋ってそれでこうなってんの?!」
     にっこり微笑み、ポットを持ち上げ紅茶を高い打点から淹れる。
    「その通り」
    「はぁ〜…!そんでもってお前もそのポットに見合う淹れ方をって?ホント凄いね。お前のそういう所だけは尊敬できるわ」
    「何、己の心情に対して素直でいないと気が済まないのさ。我ながら面倒だと思う時もあるが…『それ』を作り上げ切った時の高揚感ったらないね。
      …さ、どうぞ。君の好きな香りの葉を用意したんだ。是非!冷めないうちに飲んで欲しいな…!ああ勿論、薬やら毒やら、何の小細工もしていないのは君が今その目で見ていた通りだ。安心して欲しい。」
     角砂糖の入ったこれまた透明硝子のシュガーポットを戸棚から取り出す。
    「ミルクと砂糖はいるかい」
    「いや結構」
    「…そう。それでいい。俺が戸棚から出してきたものなんて、見えない所で何を混ぜているか分かったものじゃあないからな。それでこそ『俺の』ヒーローだ。」
    「いや俺はお前のでは無いからね。
     ていうかこのハイセンスな部屋にどうしてお招き頂けたの?ここお前のプライベートルームなんじゃねえの?俺部屋で任務の後泥のように寝てたハズなんだけど」
     椅子にストンと腰かけキョロキョロと見回す絶対的ヒーロー。首のゴーグルや腰に吊るしたナイフ等の装備はそのまま、警戒は緩めてはいない。
    「ふふ、お褒めに預かり光栄至極。…さあ。ひとりでアフタヌーンティーをするのに少し飽きたのかもしれないな。」
     ヴィランはその反対に装備を全て外し、柔らかな所作でカップを引き寄せゆったりと椅子に腰かけ、微笑みかける。まるで自室でリラックスしているようだ。
     そんなヴィランを、客人ヒーローはカップを両手に持ってとっくりと眺め、
    「………はー。俺ってマジでイケメンだなあ…そう思わない?俺朝起きて鏡見る度ビックリするもん」
    感心したようにウンウンと頷く。その話には当然なんの脈絡もない。
    「…ヒーロー、頼むからもう少し俺とのキャッチボールを楽しもうと試みてくれないか。思想は違えど、俺たちには共通のトークテーマは多いんじゃあないか?」
    「えー…じゃあロボットに心はあるか否かとかどう」
    「ふん…ああ、そういう夢を抱いてるものと一緒にいたことはあるな」
    「へー、どうだった?」
    「ヒーロー、夢はいつか醒めてしまう。綺麗で無垢な夢に対して、悪役(ヴィラン)の俺ができる事なんて限られてるのさ。」
     言葉を紡ぎながら、ヴィランは紅茶にミルクを注いでいく。
    「何、何したの」
    「……なんか楽しそうじゃないか?恙無く事の運んだヴィランの活動報告なんて、ヒーローの君にとってロクでもないことのはずだが…」
    「いやあ気のせいじゃない?ほら続けて続けて」
     そうかい?と角砂糖をつまみ、カップに落としてティースプーンで紅茶をクルクル混ぜる。
    「人に近しいアンドロイドを作ろうとする科学者と、そのアンドロイドがいてね。どうすれば人間になれるのかと……。ヒーロー?笑うポイントじゃないはずだが…?」
    「いや…!いや、ごめんごめん!こっちの話だから!続けて!!」
    「そうか。…でもアンドロイド、というか人の造った機械っていうのはあくまでそれらしきもので人間じゃあない。現代科学ではね」
    「まあそうだね」
     だから、と言葉を切って。
    「…アンドロイドを人にしたい理由と、それで何をするのかを、もっともっと深掘りさせてあげた。俺が出来たのは、たったそれだけ。本当に、それだけの事」
    「ほーん。で?どうなったんだよそいつら!」
    「なんでそんなに楽しそうなんだヒーロー。……俺にとっては何も楽しくなかったよ。筋書き通りにしか起きないベタな争い、どこかで見たようなコピーペーストのディストピア。そりゃあ筋書き通りに壊れていく世界楽しいよ!自分の思い通りに事が運ぶの最高!だけど!
     なんか…こう!あるだろ!なあ!!」
    「お前結構めんどくさいよね」
    「頭が良すぎるのも考えものだぜヒーロー、壁の高さや硬さが分かっちまうもんだからすぐ立ち止まって諦めちまう。『そういうもの』だって、受け入れちまう。受け入れるなよ。何のための頭脳だ、科学だ?ええ??
     …はあ、あの人間や機械も、もっと頑張れる伸び代があると思ったのになあ。ガッカリだよ」
     そう慨嘆するヴィランと反対にヒーローは手を叩いて爆笑していた。
    「あ、アンドロイドを…!人に…!?鉄くずが…??」
    「あの場にお前が居なくて良かったと心から思うよヒーロー。確認したいんだが市民の救済を旨に活動してるんだよな?」
    「へ?そうだよ。だけど俺の思想とヒーロー活動は何も関係ないだろ。
     救うべき市民なら、可愛いJKだろうと俺に敬意を表さないクソガキだろうと自分を人間だと思い込んでる鉄くずだろうと救うよ俺は」
    「………その切り分けだけは羨ましいね、本当」



     笑い終わったヒーローはようやく紅茶に口をつける。確かにうまいし、本当に毒は入っていないようだ。
    「というか俺しか話してないんじゃあないか?ヒーローはそれでいいのかい」
    「んー、俺もたまには応援の声くれてる熱烈なファンをゆっくりこの目に焼き付けたいし、話に耳を傾けたいからいーのいーの。
     たまにはこうやって、言葉少なに茶飲みながら、ゆっくり顔を見合うのもいいんじゃあないの?ヒーローとヴィランってのをお休みして…そう、休戦協定ってヤツ!どーよ。」
     ヴィランの紅茶を持つ手がぴくり、と、軽く震え、視線が物憂げに揺らぐ。
     が、それだけだった。
    「……………は、は、は。いやあ俺って傍から見たらこんな怪しげに人を誑かしてるんだなあ。参考になったよ。感謝感謝。」
    「はァ?!怪しげに?!誑かしてるぅ?!俺ヒーローなんですけど!!言い方悪すぎだろ訂正しろ訂正ー!」
     吠えかかるヒーローの声を聞き流しながらおかわりを注いで角砂糖をひとつ落とし、くるりとティースプーンでひと回し。柔く笑んで紅茶に口をつける。
    「いやあ…同じ顔(そんざい)を突き合わせるとさ、普段とは違う角度から分析出来ていいもんだね。
     …俺はもっとあくどく、心を酷く掻き回すように。一生の傷を刻み付けられるようにやらないとな、って改めて分かったよ。」
     まだまだやれる、そう目をギラつかせるヴィランに、ヒーローは椅子を軽く後ろに引く。
    「なあ。俺が言ってもアレかもだけどさ。
     ──そういうの、やめる気はねえの。
     今日は偶然にもゆるゆる茶飲み友達してるけど俺絶対的ヒーローなんだよこれでも。
     だからさ、お前が…話だけじゃなくてね、ヴィラン的活動してる現場にガチで直面したら、幾らお前が『俺(佐伯イッテツ)』だろうと、処すよ。普通に。任務として。」
     真面目に真摯に警告することヒーローにほんの一瞬、面喰らい。
    「ハ、君はほんとうにばかだなあ、ヒーロー。」
     破顔一笑。
    「ああ本当にお笑いだ。相変わらず素敵なお話が上手な事だね、噺家にでもなったらどうだい?
     なあヒーロー。俺が、この悪役(ヴィラン)がだ。そんな提案をヒーローサマから受けて、だ。」
     一息。
    「──辞めるわけないだろうが。あまり舐めた口を叩いてくれるなよ、招かれざる正義風情が。」
     全ての表情を無くした貌と声で、言葉を突き刺す。
    「…まあ、なあ。辞めないよなあお前は。」
     その『なにもない』表情を真っ直ぐ見、哀しい哉、と零し、眉を下げた笑顔でカップを置く。
    「この世界ってなんか話が通じる奴からいなくなってくんだよな。あ〜あ、また俺の茶飲み友達減っちゃうんだ!」
    「生業だと思って受け入れな、ヒーロー。…ん?つまりお前、俺を倒せると思ってる」
    「へ?うんヨユーヨユー。だって正義は必ず勝つからね。」
     ヴィランはスっと目を閉じ、紅茶を呷る。沈黙六秒、アンガーマネジメント。
    「──表へ出ろ」
    「えドナルド?!それ絶ッ対ドナルドだよなあ!!なあ!もしかしてお前って結構『わかる』ヤツな」
     爆発した。
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