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    iinetobokuma

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    iinetobokuma

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    喧嘩ごっこするヴィテとテの話
    大前提ですがない話です

    紫紺の緞帳──名作は何回観てもいいものだ。
    ──演じる側も然りだろうか。



    「相も変わらず素晴らしきご身分だなヒーロー様は!さぞかし立派な『正義』を胸に掲げおれたちを裁いているんだろう!なあ聞かせてくれよその輝かしき詔を!今日こそ俺の心にその聖なる調べを轟かせてくれ!」
    ヴィランが声高らかに、目を輝かせ、ヒーローへ宣戦布告する。
    「いや、単なる任務の一環ですけど。お宅さあ、騒音で近隣から苦情来てるんすよね〜」
    ヒーローはそんな己への激情は意に介さず、いつも通り淡々と任務開始。気分良く朗じているヴィランに乗れば、ペースを掴まれるのが火を見るより明らか。
    「あ?」
    「は?」
    そうして互いに地雷を踏み合い、戦闘の火蓋を切って落とす。
    「任務任務任務任務!お前はいっつもそうだなヒーロー!肝心要の芯を!お前の正義の有様を!俺になんにも見せてくれない!
    …ははあ〜さては焦らしプレイがお好きなのかな?隠しごとが過ぎると百年の恋も冷めてくるってもんだぜ?」
    ヒーローは話の途中で声のする方角へその辺の瓦礫の破片を投げたが、お題目は変わらず止まなかった。ハズレ、もう一回遊べるドン。
    「え重た…なにそれ、メンヘラってやつ?つかなんでお前に俺の諸事情やら思いの丈を語らなきゃいけないんだよ。
    え〜自分語り〜?自分語りが許されるのは、小学生までよね〜!ッ、キャハハ!」
    ヒーロー側にもミームの途中で投擲用のナイフが飛んできた。ここにはもう居られない。
    そうして互いに姿を見せず、口だけの攻防を続ける。
    向かい合って正々堂々切った張ったなんて、二人はしない。華々しい戦闘は他のヒーロー(ヴィラン)に任せればいい。らしくないだの卑怯千万だのと言うやつには言わせておけばいいのだ。己らは己らのやるべきをやっているのだから。
    そこだけは、このヒーローとヴィランの意見の一致している所である。
    ただまあ、傍から見れば隠れんぼと口喧嘩なのは明らかで当然見栄えからはかけ離れており、見るものが見れば、
    『もう!いつまでも敵さんと仲良う遊んどらんと、はよ帰るで!』
    『グダグダ言い合ってねえでとっととケリ付けろよ〜!お前に賭けてんだよこっちは!!』
    『いつも思うけどさ、ツラ合わせて殴りあった方が早くね?何、お前もしかしてビビってんの?』
    と叱られたり罵られたり煽られることは請け合いである。
    「もし皆いたらこういう時って助けてくれ…ない!うーん、絶対ないね!お前が蒔いた種だろ早く片付けろよ位言われるかな!いやあ、俺なんも悪くないんだけどなあ…なんで毎回こんな目に合わないといけないんだ?」
    「…なんだか静かだねヒーロー。姿の見えない俺をどうにかあぶりだそう、とでも考えてるのかな?」
    「お前はペラペラペラペラとさあ!沈黙を貴ぶって言葉知らないの?ま、俺も最近知ったんだけど。ちょっとした間なんかを味わうのもいいもんだよ?」
    「ハハ、お互いだろそれは」
    「まあな」
    言葉のやり取りをすればするほど、当然、互いの場所は分かりやすくなる。
    手持ちのツールがあれば撹乱もしやすいが生憎今日はそういう小道具はない。
    残機があるのは相手も同じ。
    煙草を吸うことで精製される佐伯の残機猫なる存在は、その生まれ故に足取りを掴まれることもある、という隠密したい時には看過し難いデメリットも存在する。
    一見互角に見えるが、ナイフが飛んで来た事からして相手のステージに転がり込んでしまった可能性もままある。
    「しかし良いナイフだなー、俺のの次に。ま俺のは最早腰にぶら下げてるバランサーみたいなもんだけど…」
    使わないのかと各方面には言われるし、一応これでもナイフを使った訓練はしているのだが如何せんお披露目する機会がない。
    まあ、
    「立ち位置?的に、俺が刃物振るう機会なんてない方がいいんだよね〜。そう!何せ俺様ってクールで落ち着いた頭脳派だし…」
    皆が聞いていれば非難轟々間違いなしの発言を堂々としながら剥き出しの膝を薄く斬り、血で濡れた刃を近場の瓦礫に刺してそのまま移動。垂れる血はわざとそのままに。
    「いやでもアイツ俺のこと分かってるツラしてるしな〜!これじゃ大した時間稼ぎにならないか〜!」
    苦笑しながら自分の歩いた血の跡を見る。
    「までもないよりマシか!そだな!頼むヴィラン(おれ)!引っかかってくれ!!」
    そうして足跡を途中でぐしゃぐしゃと踏み荒らし血を拭い、また元気に駆け出していった。


    ◇◇◇


    幕間


    ──お前のことをずっと見ていた
    ──お前のこともずっと見ていた



    せっせと地雷を埋める抜き手の革手袋の指がぴく、と震える。
    「……ん、今ヒーローが密かに俺を小馬鹿にした気配がしたな。全く恥ずかしがり屋さんだ。俺の事は目の前で堂々と罵ってくれていいのに……」
    ヴィランはひと通りの作業を終えると、スコップを担ぎ高揚した表情で瓦礫の荒野をスキップ交じりに跳ねる。
    蹴飛ばした小石で時折折角埋めた地雷が爆発しているがどこ吹く風。ヒーローがこんなトラップに当たるだなんてそもそも思っていない。
    「この世界には、人体を本当に損傷しうる武器等が存在する」──そう認識させるだけで、彼のリソースを十二分に割ける。
    ヴィランはいつもこのように、文字通りの夢の世界でヒーローを時に引きずり込んで『遊んで』いる。
    「いやあ…ヒーローとお茶した後、二人っきりで『遊べる』なんて…うーん!我ながらなんて完璧なデートプラン!これでヒーローは危なっかしい俺から決して目を離せない!そう…つまり俺に首ったけ!なあ!お前もそう思うよな!
    『ソウソウ!ヒーローハオマエノコトガダイスキ!』
    ぬかすなァ!絶対的ヒーローがヴィランの事を好きなわけねえだろうが!なんだそのVHS並の解像度の低さは!失せろ!」
    一人芝居で唐突に解釈違いを起こし、勝手に怒りを募らせ、手近な物陰に手榴弾を投げる。
    傍から聞いていれば支離滅裂な言動、行動そのものであるが、これがヴィランのいつも通りなのだった。
    「ふー…!ふー…!絶対的ヒーロー佐伯イッテツヴィランを好きだなんて絶対に言わない…!おれたちを出す日を間違えた生ゴミを見る目で淡々と処分するんだ…ッ!
    ───おい、今お前ヒーローに陶酔したな?
    悪役ヴィランは!正義ヒーローに!縋ったりしなぁい!!悪役おれたちは孤独に生きて孤独に死ぬ!誰にも救われない!報われない!ヴィランおれたちなんてのはなあ!排水溝に捨てられて唾吐かれるのがお似合いなんだよ!クソが!黙れ俺!!死んでしまえ!!」
    自分にも解釈違いを起こし自家中毒に陥ったヴィランは怒り狂いながら瓦礫に頭突きを繰り返す。
    「……ぅ、うぅ。なんで…どうして来てくれないの…ヒーロー…。俺はこんなにちゃんと悪い子なのに…早く俺を片手間にひねりつぶしてやっつけてくれ…。
    もうこんな惨めな思いなんて真っ平御免だ…なあ……。
    ねえ、はやく…うぐぅぅ……」
    今度は蹲って呻き出す。
    いつも不敵に笑い、舞い踊るように悪事を成し、誰もを恐れさせるヴィラン。

    その声は、夜闇を恐れて泣いている子どものようにも、聞こえた。
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