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    スパ○72パロ/エウルベ、全年齢
    他ユーザー様のアイディアが始まりのパイロットのエウ、整備士ルベのお話です。
    ブフ様も多く喋ります。
    引き続き、ふんわり設定でお楽しみください。
    ※時系列(過去から順に)
    ▶︎「「合うわけ」」
     蒼い流星

    ##パロ時空

    「「合うわけ」」戦場では、共に戦い抜こうと誓ったはずの仲間達の命も呆気なく散っていく。

    平穏とは程遠いこんな世界で死は珍しいものでも何でもなく、
    最早隣人のような存在ですらある。
    どんな実力者であろうともほんの些細な油断、慢心、不運……
    自らの手でコントロールすることは叶わないような理不尽で命を落とすこともあるだろう。
    最前線に立つ者たちであればそれは至極当然であるし、
    軍事拠点に籍を置く以上はオペレーターや整備士のような非戦闘員であってもソレは他人事などではない。

    エースパイロットとして最前線で活躍を続けているエウリノームも、
    これまで数えきれないほどの別れを経験してきた。
    優秀な戦果を評価され昇進していく彼を妬んで一方的にライバル視してきた元上官、仲良くしてくれと頼んでもいないのに馴れ馴れしく声をかけてきた同期、多くの戦場を共に乗り越えて来た戦友、弟子にしてほしいとキラキラとした瞳でずっと後ろを着いてきた後輩、世話になっていた整備班の親父さん……
    気付けば皆、先に逝ってしまった。

    当初は別離の感傷に浸ることもあったはずだが、今となっては死も悲しい出来事ですらなく。
    戦いに明け暮れる日々の片隅からその存在が消えてしまったという結果でしかない。

    仮に心を預けた相手がこの世から居なくなってしまったら、
    その預けた心は何処に行くのだろうか。
    都合よく持ち主の元に戻って来て、何事もなかったかのように元通りになるか?
    無理矢理にでも埋め立ててツギハギで補修すれば元通りになるか?
    預ければ預けるほど己の心は削れ、擦り減り、いつの日か自分自身の心は磨耗して無くなって、空っぽになってしまうのかもしれない。

    そんな恐怖から逃れるためにはどうすればいい?
    ……簡単なことだ。
    そもそも最初から空っぽの状態にしてしまえばよい。
    ハナから無いものであれば、失うこともないのだから。

    エウリノームはいつからか、他者との深い関わりを無意識に避けるようになっていた。

    任務の遂行を最優先とし、方法は問わず目前の敵は全て殺す。それだけで良かった。
    何のために戦っているのか?そんなこともどうでも良い。敵は自分が全て殺し任務を終える。それだけで良かったのだ。何も難しく考える必要はない。

    とはいえ、彼に愛想が無い訳ではない。
    必要な日常会話や作戦会議は滞りなく行い、飯時に顔を合わせれば同じ卓を囲むような知り合いは多い。
    ただ、傍から見てどんなに親しげな相手だったとしても、皆一様に口を揃えて言う決まり文句は「彼が何を考えているのか正直わからない」だった。


    彼の実力と完璧に近い任務成功率が評価され、
    部隊長に抜擢されることが決まるまでにさほど時間はかからなかった。

    部隊長としての辞令が下るに当たり、
    エウリノームは単独で母艦へ呼び出されることになった。
    世界救済に向けて結集した戦力の要である三界同盟
    その盟主ベルゼブフが直接指揮を執る超弩級戦艦、
    通称「フライナイツ」への搭乗は誉れであり、一般兵達の憧れの象徴でもある。

    入艦手続きを済ませ、
    案内された部屋の最奥で机に手を添えながら佇む銀髪の男に向かって首を垂れる。
    「特務七課所属エウリノーム、到着いたしました」
    「よく来てくれた。エウリノーム」

    眼帯を身に付けた長身のその男は、穏やかながら威厳に満ちた声で応じる。

    「お招きに与り光栄です。ベルゼブフ様」
    「そう畏まるな、私とオマエの仲だろう。
    今ここに体裁を気にするような面倒な者たちは居ないのだから」
    「そうか?なら、堅苦しいのは無しで良いな」

    それで良い、とベルゼブフは頷いた。
    ゴロゴロと鈍い音がすることに気づき、彼の手元をよく見ると机に添えられたと思っていた片手で黒猫を愛でているではないか。

    「既に話は聞いていると思うが、オマエの戦果に対する上層部の評価が高くてな。
    その功績を讃え、今後の更なる活躍を期待して特務七課第二部隊の隊長に任命することとなった」
    「うむ。断る理由もない。やってみよう」
    「引き受けてくれるか。感謝する」

    特に昇進を望んでいた訳でもないが、
    その言葉に偽りはなく、特に断る理由もないから引き受けることに決めていた。

    話はこれで終わりだろうか?と目で訴えかけるとベルゼブフはまさか、と微笑んだ。

    「要件はもう一つ、オマエに提案がある。
    来てくれるか、バールベリト」

    ベルゼブフは聞き覚えのない名を呼び、部屋に1人の青年を招き入れた。

    「……どーも」
    ツナギを纏い、腰に下げたポーチからカチャカチャと工具の金属音を響かせて気怠げな歩調で現れた彼は、自身より頭一つ分ほど背の高いエウリノームの顔を上目遣いで見やると首だけ軽く動かして挨拶をしてきた。

    「見ない顔だな」
    「これまでずっと私のもとで動いていたからな。知らないのも無理はないだろう」

    服装から見て、整備班の所属であることは間違いない。
    紫紺の長髪を一つにまとめ、髪色よりも明るい紫の瞳を持ち、歩調と同じく表情は気怠げだ。
    そのガラの悪そうな印象とは裏腹に他者への壁は感じない不思議な雰囲気を纏っている。

    全身に目線を移して行くと、耳にたくさん、鎖骨に2つ、前腕にもたくさん、短いタイトなインナーの隙間から覗く臍の横にも1つ……あちこちにアクセサリーを付けている派手な男だ。
    今ここから見えない部分にも少なくともあと幾つかは身に着けているのではないだろうか、とエウリノームはぼんやり考える。

    「……んだよ、なんか失礼なヤツだな。
    初対面の相手のことをジロジロ眺めまわしやがって」
    「すまん。装飾の多い派手な奴だと思ってな」
    「はぁ!?そんなん人の勝手だろーが!
    初っ端から面と向かってそれ言う?変なヤツだな、オマエ」

    「バールベリトは見ての通り整備班の所属だ。
    これまでは宙域作戦部隊を専門に任せていたんだが、今後に備えて地上作戦中心の部隊に預けてみたいと考えていてな」

    顔を合わせるなりケンカ腰で話し始めた2人の様子を気にすることもなく、ベルゼブフは経緯の説明を始めていく。

    「昇進の件を聞いて、これは良い機会だと思ったのだ。
    バールベリトはまだ地上戦部隊での経験には乏しい。下手な部隊に預けたくはなかったのだが……オマエのことは信頼しているからな。安心して預けることができる」

    「こちらで特に期間を定めるつもりはない。存分に学んでくるといい。
    最後に、これは私の直感なんだが……オマエ達2人は気が合うのでないかとも思ってな」

    「合うわけないだろう」「合うわけねーだろ!」
    発言が綺麗に重なった両者は一瞬顔を見合わせ、
    エウリノームは精悍な眉を顰め
    バールベリトはフンッと鼻を鳴らし
    互いにそっぽを向いた。

    「フフ……見込んだ通りだ」
    やたらと楽しげなベルゼブフは笑いを噛みころしながら言葉を続ける。

    「そう遠くない未来、オマエ達もこのフライナイツで共に戦う日が来るかもしれない。
    楽しみにしているぞ」

    ありえん、と呆れ顔のエウリノームと
    ありえねぇ、とそっぽを向き続けるバールベリトへ交互に目線を移しながらベルゼブフは話を締め括った。

    部隊合流の日取りを決め、不満そうな顔を隠そうともせずに退室していくバールベリトは扉が閉まる直前にくるりと振り向く。
    「オマエの所なんか、すぐ出てってやるからな!バーカ!!」
    捨て台詞と全力のあっかんべーを置き土産にエウリノームを睨み、大股で奥の廊下へと消えて行った。

    「何なのだ?子供か、あいつは……?」
    唖然とするエウリノームの顔を見て妙に楽しげなベルゼブフは、スッと真面目な表情に戻ると再び話し始める。

    「改めてだが、バールベリトは自分から積極的に学んで行くだろう。
    特段オマエから何か指導をする必要はない。部隊の整備士達と同じように接してやってくれ。帰投後の話し相手が増えるだけでも良い気分転換になるはずだ」
    「必要ないと思うが。
    あの様子を見ると、余計な口論が増えるだけではないか」

    それはどうだろうか、とベルゼブフはまたしても微笑みを浮かべる。
    「もしもオマエが望むなら今後もバールベリトをそばに置いてもらっても構わない。
    そして、この艦で共に戦う意思があればフライナイツもオマエを歓迎する」
    「……そうなるとは思えんがな」

    頃合いを見てまたこちらから連絡させてもらう。良い旅路を、
    とベルゼブフに見送られたエウリノームは帰路につく。

    喧しそうなヤツではあるが本人も言っていた通りどうせ短い付き合いだろう。
    しばしの辛抱だ。
    そう考えながら歩みを進めるエウリノームはふと去り際のバールベリトの姿を思い出す。
    「……あの男、舌にまで装飾品を着けていたな」

    アレは痛くないのだろうか?と考えるエウリノームだったが、
    久方ぶりに戦場の喧騒をすっかり忘れて過ごしていることに本人は未だ気付いていないのだった。

    ▶︎To be continued
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