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    00uhouho00

    @00uhouho00

    まとめは支部へ/🗿🦚/満足したら成仏します/SNSは苦手なのでトラブル防止用のみ/UID:831263605
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    🗿🦚/朝チュン/休日の朝

    #レイチュリ
    Ratiorine

    【SS】反論すら吞み込んで 朝のまどろむ時間が、たまらなく好きになったのはいつからだっただろうか。
     鳥の囀る声、木々が風で揺れる音、柔らかな陽の光、素肌に触れるシーツの感触。それから、僕に気を遣って控えめに動くレイシオの気配で目が覚める。ぼんやりした思考と視界、上から降ってくるのは随分柔らかい彼の声。起きたのか、と常より落とされたボリュームの言葉と共に優しく頭を撫でられる。返事をする代わりに声のした方へ視線を向けると少しだけ寝癖のついた髪でこちらを見下ろすレイシオの姿があった。
     目が覚めて、最初に目に入るのがこんなにも可愛らしい彼の姿だなんて、贅沢だなぁ、とまだ寝ぼけている頭で考えながらせがむように腕を伸ばす。それが何を意味するのか、察しの良い彼はすぐに理解したのか、眉を寄せつつも僕の身体を抱き起こしてくれた。普段だったら自分で起きろと突っぱねられるであろうが、こういう日は甘やかしてくれることを僕は知っている。彼自身もそれに気付いてるかもしれないが、僕が悪戯心に負けて指摘しなければ拒否される事もないであろう事も理解しているので、もはや暗黙の了解のようなものだ。
     首に手を回して、そのまま彼へと抱きつくように身体を起こす。柔らかいコットン素材と肌の触れ合う感触を少しばかり楽しんでから離れると、頬に手が添えられて軽い口付けが落とされた。ちゅ、と軽いリップ音と共に視界が開けて随分優しい表情の彼が目に入る。

    「おはよう、レイシオ」
    「あぁ、おはよう。……身体は」

     お決まりの短い質問に思わず口元が緩む。肌を重ねた次の日、いつも決まってされるこの問いかけは、他人を気にかける彼の性格がよく出ていると思う。そんな事を気にしなくても随分優しく抱いてくれていると思うし、最中だろうが彼はこちらのペースに合わせてくれるのだからこちらの心配などしなくても良いのに、とさえ思う。待ってくれと言えば、きちんと待ってくれるその堅牢な理性にはいつだって驚かされる。まぁ、さすがに限度はあるようで、歯止めが効かなくなることもあるがそういう事はあまりない。なんならそうなってしまった時は後始末の際に謝罪される事すらある。それはそれでむしろ可愛らしい一面だと思うので特に不満は無いし、こちらから文句をつけたこともない。だから、必ずされるこの問いに思わず笑みが漏れてしまうのは不可抗力だと、念の為ここで主張しておこう。

    「ん、ふふ、大丈夫だよ」
    「……何を笑っているんだ」

     思わず溢れた笑みに疑問を持った彼の素直な問いが乗せられる。正直に話すと機嫌を損ねそうなので適当に誤魔化してしまおう。そう決めたら脳は誤魔化しの為の言葉をいくつも引き出しから引っ張り出してくる。こういうのは僕の得意分野ということもあり、回答を組み上げるのに然程時間はかからなかった。とりあえず、あまりに露骨だと彼にはバレてしまうのでほんの少しだけ本当の事も混ぜておくとしよう。組み立てた言葉を吐き出す前にほんの少し間を置いて、疑問を浮かべている鮮やかな虹彩を見つめた。

    「昨日の教授は随分優しかったなぁって。ただの思い出し笑いさ」

     寝癖で跳ねてしまっている彼の髪を指先でいじりながら、あながち嘘でも無い回答を返すとレイシオは眉を寄せた。真偽を判定しているのだろうか。すぐに言葉が返ってくる事は無かったが、彼の口から深いため息が出てくるまで然程時間はかからなかった。どうやら真偽の確認については諦めたらしい。
     ぐ、と腰を引き寄せられて更に近くなった体温に一瞬心拍数が上がった。こちらを見ているその顔をじっと見つめ返すと腰に回されたままの手のひらが指先でそっと背骨のあたりをなぞっていく。誘うようなその手つきに漏れそうになった甘い声を喉奥でなんとか押し留めて、レイシオ、と咎めるように名前を呼ぶ。

    「足腰が使い物にならなくなって困るのは君の方だと思うが?」
    「ごめんって。はぁ……いつもベッドの中と同じくらい優しくしてくれたらいいんだけどね?」
    「……。……次腰を砕かれたく無ければその喧しい口を閉じた方が良い」
    「あはは! それもいいね。もしかして君、実は激しい方が好きだったりするのかな?」
    「……」

     やられっぱなしなのも癪だったため、普段と同じように軽口をとばせばレイシオは眉を寄せてこちらを見る。違うのなら即座に否定の言葉がとんでくるのが常だが、無言だった為あながち間違いでもないのかもしれない。たまにはこちらから煽ってお膳立てするのも悪くないかも、となんとなしに思う。何より随分申し訳無さそうに僕を気遣ってくれるレイシオなんて、そういう時でしか見られないのだし。レイシオには悪いが、耳や尻尾があったならしゅんと項垂れているであろうその姿が可愛くて僕は結構好きなのだ。俗に言う、ギャップ萌え、というやつだろうか。毎度抱き潰されてはこちらの身体が保たないが、たまに、そう、たまになら良いかもしれない。こちらが(彼にしてみれば)良からぬことを考えていることに気付いたのか、おかしな真似はするんじゃないぞ、と釘を刺してくる。それに肯定も否定もせずに薄く笑って返せば、呆れを含ませたため息が返された。おそらく言っても無駄だと結論が出たのだろう。僕が少し注意されたくらいで諦める性格では無い事を彼はよく知っている。

    「レイシオ、次する時は期待してていいよ」

     からかいも含めて言葉を返し、反論が来る前にその形の良い唇に口を付けた。何度か角度を変えて柔らかい唇の感触を楽しんでいると、されるがままだった彼の手のひらが後頭部に回される。そのまま、ぐ、と押さえられて噛みつくようにキスを仕返されて、熱い息が隙間から漏れていく。随分情熱的な仕返しに少し悪戯が過ぎたかもしれない、とぼんやり思うがふわふわとした心地良さにどうでも良くなる。息が続かなくなってきたところで彼の胸板を軽く押して抗議すると、あっさり解放されて熱っぽい視線が絡み合った。

    「っは……、……なんだい、教授。朝から元気だね」
    「君が煽ったんだろう」
    「ベッドインには随分早い時間だけど、いいね! 僕は構わないよ」
    「……アホ、冗談だ。さっさと起きて顔を洗え」

     先程までの甘い雰囲気はどこへやら。完全に呆れを含ませた表情と言葉を吐いてレイシオは掛け布団を僕から勢いよく引き剥がすとそのままベッドから出て行ってしまう。

    「えぇ〜、せっかくの休みなのに! ほら、レイシオ、君の好きにしていいよ? 泣いても止めなくていいし、君の言う通り腰を砕いてくれたって構わない!」
    「はぁ……僕がそんな事するわけ無いだろう。君の安い誘いに乗る気は無い」

     分かったら早く起きろ、とだけ残して寝室から出て行くその背中に、待ってよ教授、と声をかけながら慌てて温かいベッドを脱出した。ベッドの隅に放り投げられているシャツと下着を手に取って急いで順番に身に付けていく。シャツに袖を通し雑にボタンを掛けていく途中で掛け違えている事に気付いたが、そもそも大きさからしてこのシャツがレイシオのものであることにも気付いて、全部どうでも良くなった。
     急いで寝室から出ると律儀に待ってくれていたレイシオの姿がすぐ目に入り、柔らかい感情が湧き上がってきて思わず表情が緩みそうになる。なんだか気恥ずかしくなって誤魔化すようにレイシオの手を引き、そのままリビングへの短い道を先導するように歩いていく。
     朝ごはんはどうしようか。この前買ったジャムがまだたくさんあったから今日はジャムトーストにしようか? あぁヨーグルトと合わせるのもいいね。サラダも食べたいなぁ。
     なんて一方的に話していると、待て、と呼び止められる。振り返ろうとしたがそれよりも早くレイシオが隣にやって来て、握るだけだった手のひらが握り直されると同時に指が絡め取られて心拍数が跳ね上がった。

    「なんだ、今日の君は随分可愛らしい反応をするんだな」
    「っ……はー……君は可愛くないね!」
    「可愛くなくて結構だ」

     いつも通り表情を取り繕えなかったのは寝起きだからということにしておこう。絡められた指を強めに握り返してささやかな反抗をすると、柔らかい笑みを返されてまた心臓が跳ねる。どうやら寝起きでボケているのは向こうも同じらしい。普段なら滅多にお目にかかれないレイシオの顔が見られたので、明日は嵐になりそうだ、となんの根拠も無いことを考えながらリビングへの道をゆっくりと歩いていった。
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