遅咲きの初恋 失ってから大事なモンに気づく俺は愚かだ。
ああしていたら、こうだったらともしもの妄想の連続をいくら繰り返したってアイツは帰ってきやしない。あの瞬間に戻れたらとか不毛だから辞めた。
ちゃんとその時を生きてきた人間がしてきた選択をせめて無駄なモンにしないようにとするばかりなんだ。遺されたモンの責任だ。
…わかってはいんだけどよぉ。
なぁ付知。
何度も何度だって、俺は後悔しかない
※※※
「あ〜そうだそうだぁ、巌鉄斎。悪いけどそれ、預からせてもらうよ」
「…はぁ?」
「十禾殿?」
誰が仙薬を持ち帰り公儀御免状を手にするかの話し合いにより俺がその役目を有り難く頂くことになって、それ以外が各々の小舟に乗り別れを惜しみ達者でと見送ったあと。俺と佐切と酔っぱらい男の三人だけになり、先程まで賑やかだったものがなくなってさらに寂しさが募るのか懸命に泣くのを抑えようと佐切の鼻をすする音がデカい船で響く、そんなしんみりとした空気を台無しにブッ壊すかのような酔っぱらい男の言葉に俺は耳を疑った。
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