からかうことが出来る稲葉の話『彼と両想いになったの』
頬を染めてこっそり教えてくれたのは、彼女の同期。定例会議終了後、そわそわしていた同期に違和感を覚えながら当たり障りのない会話をしていた折に、そっと耳打ちをしてくれたのだ。背後に控えていた男士がそうなのだろう。彼女は同期の護衛付き男士と同期へ交互に視線を移す。
『おめでとう』
彼女もそっと耳打ちをすると、同期は照れたように『ありがとう』と笑った。
柔らかな空気が溢れる同期を思い出しながら、彼女は執務室で会議のレポートをまとめていた。半分ほど書いたその時に、彼女がなんともなしに呟く。
「恋人同士ってどんなことをするんでしょうかね」
隣にいた稲葉江が「は?」と顔をしかめた。
「想いを伝え合ったのだから、お互いの好きなところを言ったり……どう思いますか?」
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