だから、この手を離さない 中編「お大事にどうぞー」
受付の女性から薬を受け取り、間延びした決まりの挨拶を背に、病院を後にした。一歩、外に出るとすぐに汗が額に滲む。今日の気温は35度を超えて猛暑日になるでしょうと、病院のテレビのアナウンサーが熱中症対策について呼びかけていた。高専から2時間離れたこの街は、街路樹も少なく陽射しを遮るものがなく、手に持っていたキャップを深く被り直した。
目的のものは手に入れたから、早く帰ろう。そう思っているのに、その足取りは重たかった。
電車とバスを乗り継ぎ、高専の最寄りのバス停に着くと、古いベンチに座り、トートバッグから、処方された薬とミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。
パチリと薬のパッケージを開け、白いタブレットのような錠剤を空にかざす。
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