沢深ワンドロライ【嫉妬】「—―あ」
部室で『それ』を目にした時、馬鹿みたいに心臓が跳ねた。
青いボトルにオレンジ色のキャップ。誰かと交換したことが一目でわかるシーブリーズのボトルが、朝練を終えた沢北のロッカーの中にあった。
「深津さん? どうしたんすか?」
タオルで汗を拭った沢北が、中途半端にTシャツを脱ぎかけて止まった俺に不思議そうに声をかける。何とも言えずぼんやりしていると、数秒遅れて俺の視線に気づいた沢北が「アッ」と大きな声を上げた。
「あの、これは……、何でもないです!」
慌ててそれを引っ掴んで鞄に放り込むと、沢北はそのままの勢いで部室から飛び出して行った。もうすぐ始業のベルが鳴る。俺は目に焼き付いたブルーとオレンジの残像を思い浮かべながら、のろのろと自分のロッカーの扉を閉めた。
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