彼を知り己を知れば百戦殆うからず 食後のティーブレイク(コーヒーブレイク)に至るまで、ルシファーは少しだけアラスターという悪魔を知った。食の好みや利き手など細やかなものばかりだが、ルシファーの罪悪感を刺激するには十分だった。
剥き出して捻じ曲がっている基礎を一瞥し、小さな傷がそこかしこに付いているテーブルから目を逸らし、ルシファーは徐に口を開いた。
「あー……実はな、アラスター。申し訳ないんだが、君の部屋とか、このテラスとかが、その……こんな感じなのはな。わざとやったんだ」
──嫌がらせで。
言い訳もせず罪を告白する地獄の王。対して鹿の悪魔は、天気の話題を振られたかのように自然と『知ってますよ』と頷いた。
「え? 知ってた? 何を?」
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