beside整然と並ぶ文字を追いながら、視界の端で白い双葉が揺れるのをみとめた。
床にぺたりと座りこんでローテーブルに向かっているシャオの顔は見えないが、おそらく何度目かの睡魔と戦っている。
思わぬところへふらふらと線をひいては消し、少し書き進めてはまた船をこぐ。こちらにはばれていないと思っているのか、まどろむたびにぴりっと姿勢を正してはまた振り出しに戻っている。そのさまは微笑ましくもあるが、ロイエには和んでばかりもいられない理由があるのだ。
シャオは地上の生まれである。アークにおいて空気と同じように人間をとりまく資源、技術、秩序、思想。なにもかもがシャオには未知であった。また彼にとっての"当然"がロイエの想像を超えることもままあった。世界の間の溝を埋めるように正解を探り、ふたりの暮らしにはようやく慣れてきたものだが、学校生活___すなわち、"一般的なアークの人間"との交流や集団行動は、やはり身体・精神両面で大きな負荷になっているようだ。
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