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    SOUYA.(シメジ)

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    SOUYA.(シメジ)

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    📖華倖+鹿嬭
    何かこういう会話をしてて欲しい感が密かにあって…でもあまりに苦しいので台本にはしないでおく…。
    そんな毎回毎回喧嘩してる訳じゃないよ…っていう。いや、口喧嘩はしてるか…。

    ##語り部小噺

    バキッ、と音を立てて折れた木の板を一瞥してから焦燥しきった兄を見る。ガチガチと噛み合わない歯の間から漏れ出る息。こんな兄は久々だ。

    「…華ぎ」
    「呼ぶなァァッ!!」
    「……」

    響き渡る怒声に思わず産毛立った。
    腹立たしさと悔しさ、そして何より喪失感に苛まれて彼自身、よく分からなくなっているのだろう。

    「…僕は待つぞ」
    「……」

    兄が絶対に取らないであろう選択肢を口に出す。
    小さく舌打ちが聞こえた。

    「オメェはァ…いっ、つも…そうだァ…。
     分かったような目ェして、いっつもォ…簡単にオレをあしらっちまうッッ!!」
    「……」
    「なァにが、待つだァァ…。オメェだって探してェんだろ!? オレが!! その選択をすッからってオメェ如きが身ィ引いてんじゃねぇよ!!」

    獣のように吠えながらそう言う兄に思わずため息が出る。
    昔から何をしても揃わなかった。喋り方も、自らを守る術も、生きる道すらズレていた僕達をあの人が、揃えてくれた。スタートラインを敷いてくれた。

    兄は魔術を極め、僕は剣を極めた。
    誰の為、などと聞かずとも分かる。

    生まれて初めて、兄が何を考えているか分かった。
    多分向こうも同じだったろう。

    あの人があの時声を掛けてくれなければ、僕達はとうの昔に死んでいたろうに。あの人は大した事はしていないと笑うのだ。
    その借りをやっと、…やっとお返し出来ると、思っていたのに。

    あんなに存在感のあったあの人は、ものも言わずに泡のように消えてしまったのだ。まるで、初めから居なかったような感覚にすら襲われた。

    「…探して何になる。居なくなったのはあの人の意思だろ」
    「知らねェよ! 猫みてェに何も言わずに消えやがって!! そんなのでッ…そんなので、納得なんて、出来ねェよッッ! 勝手に、美談にしてんじゃねぇよ、クソジジイ!!」
    「……僕は探さない」
    「ッッ、だからッ!」
    「お前に遠慮しているんじゃない。選択を譲ったんでもない。…鹿華様の帰りを待つだけだ」

    また舌打ちが聞こえた。

    傍から聞けば、両者共に馬鹿を言っているのは分かっている。師匠はきっと…。

    しかしそんな確証もない絶望を塗り固められたくないのだ。まだ、あの人に夢を見ていたいのだ。
    だから、僕は待つのだ。探し続けた先で、希望を見出したくはないのだ。

    出来れば、……本当に夢が叶ってしまって欲しいのだ。あの人が、また僕たちの傍で笑っている未来があってしまって欲しいのだ。

    「…お前は勝手にすればいい。
     賛同も反対もしない」

    「………ッッ、くそっ」

    嗚呼、どうか。
    この現実がユメでありますように。
    貴方の消えた世界は、随分と息がしづらいのです。
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