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    kikhimeqmoq

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    桐智 2025/08/03
    同大で野球をしていて付き合っている桐智。雨の休養日。

    #桐智

    茶髪と黒髪駅前の商業施設は、五階が映画館、四階がレストランとフードコート、三階にスポーツ用品の店があり、二階に駅への連絡通路があった。フードコートの脇にはガチャガチャのゾーンがあり、子供だけでなく大人たちも各々好きなキャラクターを引き当てるべくガチャガチャとレバーを回し、一喜一憂していた。
    部活が休養日だったその日は、あいにく朝から大雨が降っていた。自主練もできず、暇を持て余した桐島は、映画が見たいと要を呼び出した。映画なんて見てどうするんですか、と文句を言いながら現れた要は、文句を言っていたわりには食い入るようにスクリーンを見つめ、場内の灯りがつく頃には満足げに笑みを浮かべていた。曰く「まあまあですね」とのこと。つまらない時は微に入り細に入り気に食わないところをあげつらうので、面白かったんだろう。
    勝ったな。
    満足げな要を前に、桐島は、雨で落ち込んでいた機嫌が急上昇した。
    フードコートで昼飯を食べ、部屋に帰った後は過去試合の分析でもするか、と歩き出した時である。フードコート隣のガチャガチャゾーンの前で要は立ち止まった。行き過ぎた桐島が振り返ると、そこには笑うでもなく泣くでもなく、無表情というには陰がある難しい表情をした要がいた。切なさのような、懐かしさのような、どちらでもないような曖昧な雰囲気だ。懐かしいが、出会いたくないものなのかもしれない。分からない。桐島の妄想かもしれない。
    そこにあったガチャガチャは何かのアニメのキャラクターが出てくるらしい。キャラは、女の子、アイドル要素もファンタジー要素も何も無さそうな半袖シャツの制服を着た普通の女子高生だ。特別美人でもない。どういうキャラなのか全く分からなかったが、要はずっとその機械に注目していた。要はあまりアニメや漫画の話をする方ではない。いや、ほとんど聞いたことはないか?
    「要くん、アニメなんか見るん?」
    興味というよりは、ただの疑問だった。大した意図はない。アニメを見るなら見るで、どういうものを見るのか知りたかっただけだ。
    「見ません」
    ピシャリ。心の扉が勢いよく閉じた音がした。
    桐島が質問をきっかけに弄り始めるとでも思ったのかもしれない。まあ、この件が触れてはいけない件だということは十分に伝わったので、もういいだろう。かといって、要はすぐにその場を離れるわけでもない。
    じゃあ、まあ、せっかくだし。たまには。
    「俺が買うたるから、お揃いにしよか」
    桐島はそういって、尻ポケから財布を取り出した。
    「なにがでるかなっと」
    ほら、茶髪の子が出たで。
    最初に出たカプセルをパカリと開けると、中から茶髪の女子高生が転がり出た。本当になんの変哲もない女の子だ。近くで見ても可愛くはない。でも、ずっと見てると、親しみが湧く笑顔をしている。微笑んでいる様が、なんか、楽しそうだ。愛嬌あるな。
    アクリル版を持つのとは反対の手で要の手を取り、閉じた指を開く。その時、先ほど閉まった心の扉が開くというか、溶けていくのを感じた。なんや、やっぱりこれが欲しかったんかい。
    「ちゃんと持っときや」
    アクスタの乗った要の手をポンポンと叩き、もう一度ガチャガチャに向かう。
    「俺は黒髪の子の方がええなあ」
    適当なことを言いながら、硬貨を投入し、レバーを回す。どうかな、どうかな、と歌うように呟きながらカプセルを開ければ、果たして中から出てきたのは、黒髪だった。
    「やった!黒髪きた!」
    喜ぶ桐島の様子に、ふふ、と小さく笑った要には、先ほどまでの陰は薄まったように感じた。
    「要くん、それ、ずっと持ってやんと、ちゃんと鞄につけや。せっかくやし」
    桐島の指示に素直に従い、要は鞄を抱えた。マメだらけの硬い指で器用にチェーンをつけながら、要はボソボソ呟いた。
    「この子たちも、お揃いを鞄につけてるんですよね」
    「なんや、やっぱ見てるんやん」
    「だから、見てません」
    「ええ?意味わからんやん」
    「いいんですよ、もう」
    要は鞄につけたアクキーを掴んで、少し困ったように微笑んだ。
    「それより桐島さん、黒髪の方が好みなんですか?俺、実は守備範囲外ですね?」
    それまでのことがなかったかのように、要は急に早口で話し始めた。ほんまになんやねん。
    でも、よく分からんけど、心の扉も、わだかまりも、溶けたようでよかったわ。要くんな、ちょっと不思議な拘りがあるところが、おもろいんやけどな。せやけど、楽しく過ごした方がええからな。
    「別に、黒髪が清楚っぽいから好き、とか無いって!」
    「茶髪はチャラいってことですか!」
    「そういうことちゃう!てか、黒髪の子のアクキーが良ければ交換すんで」
    「やめてください。茶髪はもう俺のです」
    「やかましい!もう帰るで!」
    どうでもいいことで笑い合いながら、お揃いのアクキーを揺らし、ふたりは桐島の部屋に向かった。午後は、ふたりで野球の話をするのだ。











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    kikhimeqmoq

    DONE桐智 2025/09/08
    付き合っている大人の桐智。大人の桐智の大人の下ネタ。
    ほろよい、玩具、目を逸らす甘くもなく辛くもなくほどよい刺激の液体がスパイシーな香りを振り撒きながら喉を駆け抜けていく。三杯目としてはちょうどいい軽さだ。ほろ酔いの気まぐれでカウンターの上にある塔のオブジェを指先で弄った。このバーに要くんと来るのは五回目になるが、窓際ではなくバーテンダーのいる内側の席に座るのは初めてだ。間接照明しかない暗い店内で、隣の要くんだけがようやく分かる。黄色っぽいダウンライトに照らされ、いつもは白い要くんの頬も優しいクリーム色に染まっていた。なんか、美味しそうやな。パンケーキのみたいに柔らかく甘い気がする。本当は、硬く塩辛いことをよく知っているのに。
    カウンターのヘリには小さな塔のオブジェが並んでいる。東京タワー、エッフェル塔、スカイツリー、自由の女神、太陽の塔……。シャーペンより少し小ぶりで、丸みを帯びた形にデフォルメされ、お洒落というより可愛らしさを演出している。大人びた店内に優しいアクセントを添えていた。「かわええやん?」と要くんに言うともなく呟き、スカイツリーの先端をつついていた。
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    DOODLE桐智。
    大学生で同棲設定。ふんわり設定。
    大阪弁はふんわり。単語が下品です。
    キスの仕方なんて知らない「要クン。一年経ったし、そろそろ白状してもらうで」
     圭と秋斗が二人で暮らすアパートのダイニングキッチン。そのダイニングテーブルで圭と向かい合い、秋斗はにこやかに笑いかけた。
     テーブルには酒を注いだグラスが二つある。グラスを満たしているのは以前知り合いから譲り受けて飲んだところ、圭の反応がよかった桃の果実酒だ。今日のためにわざわざ通販で取り寄せたその酒は、圭が白状しやすいようにとの秋斗なりの気遣いと、尋問するのは多少心が痛むのでその詫びを兼ねたもの。
     とろりとしたクリーム色の酒をグラスに注いだときの圭の目は、少しばかり喜色を帯びていたが、秋斗の言葉で一気に真顔に戻った。口が引き攣らないように努力している様子さえある。圭と大学野球部で共に過ごすようになってから早三年。二人きりのときはこうして表情が表に出るようになった。圭の思考は表情に出ていなくても概ね分かるが、出ている方が秋斗の好みだ。秋斗以外は圭のこんな感情を知らないという軽い優越感が理由の一つ。あともう一つは、本人が秋斗の前だけ表情筋の動きが違うことを理解していないのがオモロ……ではなく、可愛いからだ。
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    すぬぴ

    MOURNINGキスの日なので拍手お礼に上げてた伏五のキス上げ直し
    #伏五
    珍しくR指定もないので逆に恥ずかしくてそのうち消すと思う
    「…ねぇ恵、…ディープキスのやり方知らないの?」



    「…ああ?」



    唇が触れ合ったのは二度目だった。

    一度目は、悟の方からほんの一瞬。

    悪戯にしたって性質が悪い。

    反射的に拳を振り上げたトコロで、悟の身体がふっと後ろに下がってそれを避けた。

    術式を使うまでもない、というトコロに余計腹が立つ。



    「…いただきました。」



    そう言ってクルリと背中を向けて去っていく後姿をどうして黙って見送る気になったのか、

    今でもわからない。


    そのまましばらく、普通に時間が過ぎて、

    そして、今またこうして、不意に唇が触れ合った。




    「舌、入れるようなキス、したことないの?」

    赤い舌をつい、と突き出して、悟が悪戯っぽく身体に触れてくる。



    「…くだらない…なんのつもりだよ…」



    悟の真意が全く読めずに恵は絡みついてくる悟の腕を無理やり引きはがした。


    「ただ舌入れたらいいって思ってるでしょ?」


    下から覗き込むように顔をのぞかせながら、からかう様に悟が言う。


    「この間から…アンタほんと何がしたいんだ?!」


    いい加減頭に来て、恵が声を荒げる。


    「何 1431