キューピッドは可愛いあの子今朝見た天気予報通りに、冬空に広がった雲から雨が降り出した日曜の夕方。
好きな歴史小説家の本を手に入れて家へと帰っていたときに、見慣れた桃色が目に入った。
「猗窩座…?」
一つ下の後輩であり、自分と勝負したがる、前世からの縁がある猗窩座が公園の隅の方で紺色の傘を持ったまま一人で佇んでいた。
よく見ると俯いていると思った彼は下の方の何かを見ているようだった。
そう思ったそのとき、猗窩座は持っていた傘を置くと濡れるのも構わずにその場から立ち去ろうとした。
「何してるんだ、あいつは!」
冬の今日、雨が降り寒さが増してくるというのに風邪をひきたいのかと急いで彼の元へと走る。
そして見えたのは段ボール箱。
(ああ、全く。君ってやつは)
2028