樹の下で眠る 目を覚ました時に最初に見たものは、男の胸板だった。
ぬいぐるみを抱きしめるようにがっちりと腰に手を回されているせいで身動きが取れなかった。男の柔軟剤と汗の香りに混じって草と土の香りがすることから、ここが野外であることを理解する。
どうしてわたしはこの男と野外で眠っているのだろう。
不自然に皺の寄ったシャツが、それが短くない時間であることを示していた。不思議に思いながら無防備に眠る水月くんの頬に触れてみる。
頬から下顎、それから唇。
指先で撫でるようにして下へ落としていく。乾燥肌なのか少しざらついていて、ずっと触っていたくなるとは言えない。けれど、わたしのものとは違う骨格が面白くて、なんとなく手を離せないでいた。
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