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    朱華🌱

    @HANEZU_10

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    リハビリみたいな
    審神者♂と長義の話。重めかもしれない。

    #山姥切長義(刀剣乱舞)
    yamamuCutNagi
    #男審神者
    maleInquisitor

    落椿「なぜ、刀剣の貸し借りが行われないか。知っているか」

     その日の仕事は滞りなく遂行された。追加の出陣も、遠征もない。要するに暇だったのだ。執務室で手持ち無沙汰になった審神者は湯呑を両手で包み込んで独り言のように切り出した。

    「後進の育成には、そうすることが有効である、ということは一部の物好きたちによって実証はされているんだ。だが、政府は推奨していない。規制こそしていないものの、暗黙の了解としていると聞く。戦争において、後進の育成は重要だ。これからも戦争を続けていくつもりならな」

     元政府所属刀として、どう思う? 山姥切長義。突然水を向けられて、長義はたじろいだ。審神者が饒舌になることは初めてで、回答を求められるとは思っていなかったから。

    「……現時点で必要性がないから、とも取れるけれど」

    「戦争をしている自覚がないのか、時の政府は」

    「俺に言われてもね」

    「だから戦が長期化する。上の人間が呑気に構えているから、いつまで経っても戦が収束しない。戦力が拮抗している、というのはある意味で言えば幸福とも言える。が、このままではどうしたって終わらない。終わらせるにはどちらかが圧倒的な力を持たなくてはいけない。それは、当たり前のことだ。子どもでも分かることだ。それなのに、皆、自覚が無さすぎる。当事者の審神者ですらも」

     審神者は淡々と事実を述べながら、静かに怒っていた。審神者が感情を露わにするのは珍しいことで、長義には審神者が何故怒っているのか分からなかった。だだ、紡がれるそれらが、自分に向けられたものではなく、思考を整理するために行われているのだと理解していた。

    「……話が逸れた。刀の貸し借りが行われない理由だったか」

     一呼吸おいて、審神者は口を開く。

    「癖が付くからだ」

    「癖?」

    「あぁ。他人に貸すというのはそういうことだ。「それ」は他人に使われることによって変容する。慣れ親しんだものから、勝手の知らないものになる」

    「勝手の知らないものになる、というのは些か疑問が残るところだけれど。本質自体が変わる訳はないだろうに」

    「繊細な人間にとって、些細な変化は決して些細なものではない。他人から見て些細であっても本人にとっては重大な変化だ。受け入れがたいほどの」

    「受け入れがたい、ほど」

     政府では部署の移動が行われることが度々あった。そこで新たな部署に馴染めずにやめていくというのはよくあることだった。仕事に差異はあまりみられないように見えたが、確かに、変化は受け入れがたいものなのかもしれない。

    「勿論、すべてがそうではないだろうが。少なくとも、自分の所有物が自分のあずかり知らないところで他人によって変化するのが受け入れられない人間は多い。所有物でなければ、そんな感情を抱くこともないのに、おかしなことだ」

     所有物、という言葉が耳に残る。開けてはいけないと言われた箱を開ける直前のような、嫌な予感と好奇心がせめぎ合う。

    「貴方は、貸し出すのか、刀を」

    「まさか。政府に噛みついていいことなんてなにもないからな」
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