病鉢巻元祖本家で妖怪の勢力が2分し始めてから、何回目の合戦だろうか。50を超えたあたりから、正確に把握する必要性を感じなくなり、今では10の位しか把握していない。
そんな何回目かの合戦の夜。夜は基本的に停戦となっており、それぞれ体を休め次の日また戦が始まるという形になっている。屋敷に戻り、縁側で夜風にあたりながら、元祖の将として明日の戦略に思考を巡らす。
リンリンと鈴虫の鳴き声。満月の光を受けてゆらめく池。
こんな季節に合戦など、先は見えている。だのにあやつときたら、聞かないものだから……
などと思考していると、ドロン、と紫煙が上がり、一人だった縁側に副将のオロチが現れる。
ギ、と床板を踏み締める音。現れた男は片膝を立て、首を垂れる。
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